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2012年後半にアップルは、2001年以来すべてのiPodやiPhoneに同封してきたお馴染みの白い小型イヤホンを、ついに新たなデザインの「EarPods」として一新した。このEarPodsはワンサイズでどんな形状の耳にもフィットする設計で、開発に3年もかかったという。

このユビキタス・アクセサリーEarPodsこそ、ウェアラブル市場を驚かせる可能性を秘めており、アップルのiWatchに期待される機能を補助することになるかもしれない。

イヤホンはウェアラブルのダークホースとなるか

我々はカナル型イヤホンをウェアラブル端末だとは思っていない。リストバンドのように、我々の皮膚と接点を持ち、主に運動中や移動中に音楽を聴くために着用するフィットネス・デバイスだ。

街中で多くの人々が耳に着けているのを見かけることから、このEarPodsが人気なのは言うまでもない。私はこれを発売当初にレビューしているが、EarPodsは以前のモデルよりもすべてにおいて優れている。

だからこそ、先週「Secret」アプリに匿名で投稿されたこの噂は非常に興味深い。

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「アップルの新しいEarPodsにはセンサーが搭載され、脈と血圧が測れ、紛失防止用にiBeaconにも対応する。接続にはライトニング・ポートが必要で、そのためイヤホン・ジャックが下に移動している」

アップルの動向を追う専門家達の多くが、同社のiPhoneとiPad向けの次期モバイルOS、「iOS 8」には新たな健康管理の機能が搭載されるだろうと予想している。長く噂されているアップルのiWatchが、ユーザーの体からデータを取得してこの新たなOSに供給するための主要な接点になるだろうと考える人もいる。だがアップルは、恐らく高額になるだろうiWatchを使わず、ユーザーから健康状態に関する情報を得るための別の手段を提供するつもりかもしれない。

(経済的にも)健康的な解決策

ここでEarPodsの出番となる。

「一般的には認知されていませんが、アップルは世界中で最も大きなスピーカーの供給企業の1つです」と、アップルでiOSとiPodのマーケティングを担当する副社長グレッグ・ジョズウィアックは2012年のインタビューで語っている。「考えてみてください。音は我々の製品にとって非常に重要です。我々のほぼ全ての製品には音とスピーカーが組み込まれています」

アップルは通常のEarPodsをたった30ドルで販売している。一方Beatsが出している競合商品は100ドルだ。つまりアップルには今後、競合商品よりもさらに多くの機能を盛り込んだプレミアム・ヘッドフォンを発売する余地がまだ残されていることになる。

しかしユーザーは音質以上の何をヘッドフォンに望むのだろうか。アップルの特許戦略に、そのヒントが隠されている。

2007年3月の特許出願時の図を見てほしい。請求の内容は「一つ以上の生理学的センサー」を持つヘッドセットであり、ユーザーの運動性能を測定し管理するためのものだ。図にある通り、クリップ式センサーを耳たぶに取り付けることで脈や酸素濃度を測ることが可能となっている。

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2008年8月に出願された別の特許では、同様の「運動やスポーツ時のユーザーの行動を認識するモニタリング・システム」についての記述がある。これには「モニタリング・システムの取り付け位置によって、体温、汗量、脈拍などのユーザー特性(生物測定データ)が採取可能」となっている。

アップルがこういったスマートなEarPodsを作ることは理にかなっている。過去に医師達は、心臓血管の異常を医者に通知することで予防処置が可能となる同様のカナル・イヤホン型モニタリング・システムの開発を試みている。科学はこの分野に注目しているのだ。研究者によれば、耳こそ人体の生命兆候を把握するために生理学的にも機械的にも「理想的な場所」だとされている。

残念ながら、健康指向のカナル・イヤホン型のソリューションは、特に大衆向けのものは成功した例がない。理由の1つは、フィットネス・デバイスは一種のファッション・アイテムであり、自分はエクササイズによって自己管理を行っているというメッセージを周囲に伝えるためのツールだという点だ。医療デバイス・メーカーはこのファッション・センスが理解できず、彼らの作る健康指向のデバイスはどうしても、健康上どこかに問題があるという逆のメッセージを伝えるものになってしまうのだ。

アップルのデザイン・センスとマーケティング・スキルをもってすれば、この問題をうまく克服できるはずだ。

EarPodsとiOS8との組み合わせであれば、装着者が病気に悩んでいるという印象を周囲に与えることなく、ユーザーの健康をサポートすることが可能だろう。この情報をどのようなインターフェースで表示させるかが重要となるが、例えば運動中、脈拍などのバイタル・サインはわざわざ端末を操作せずに一目で見られたほうが便利だ。アップルであれば、ユーザーの脈拍や酸素レベルは出来る限りシンプルにiOSの通知として表示させることもできるし、Siriが読み上げてくれるようなことも可能だ。

こうした機能をヘッドフォンで提供するときに問題となるのは、1日に何度も抜き差ししたりポケットに押し込んだりする、使用によるダメージだ。私はすでに2つのEarPodsをダメにしている。ワイヤーはまだ動きに弱くすぐに絡まってしまい、ボリュームや曲操作のボタンもすぐに反応しなくなってしまう。アップルは、EarPodsを健康サポートためのウェアラブル・デバイスとして利用するのであれば、新しい機能だけでなくこういった基本的な部分も考える必要がある。

もしアップルが「健康管理」を普及させたいなら、スタイリッシュで着け心地がよく、また音楽が聴けて通話もでき、さらに付随的な効果として人体からのデータも採取できる、そして何より耐久性のある商品を提供する必要があるだろう。アップルがこれらの基本を押さえることができれば(私は現在の商品ではまだ実現できていないと思う)、次のバージョンのEarPodsではユーザーからの支持を得られるはずだ。

それにこれは、デバイスの完成度を上げていくうちに新たなジャンルの商品を生み出す、というアップルのパターンにマッチしている。ライバル達が皆スマート・ウォッチばかりに夢中になっている中、何の変哲もないEarPodを究極のウェアラブル端末へと進化させ、アップルが彼らを出し抜いて我々の耳を支配することになるのではないだろうか。

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トップ画像:Faruk Ateş (Flicrより)
特許画像:アメリカ合衆国特許商標庁

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