未来の車は「走るリビングルーム」になる

主要な国際モーターショーにおいて一番の呼び物となるのは、実際に製品化されることは決してないと思われる斬新な未来型コンセプトカーだ。こういったとんでもないハイテクカーは予想を超えた方法で空を飛び、泳ぎ、考え、私たちを物理的にも精神的にも先へと運んでくれる。そして、未来の移動のあり方に対する私たちの想像を掻き立ててくれるのだ。

風変わりな車を作ることで知られるスイスのチューナーショップ、リンスピードが発表した最新のコンセプトカーは、現在の自動車技術が未来に急速に追いつきつつあることを明らかにしている。

「XchangE」と呼ばれるそのコンセプトカーは、完全な自動走行が可能となった未来(10年後くらいだろう)の車の内装に焦点をあてたものである。この車はドライバーを受け身の立場に追いやり、車内を走るリビングルーム、あるいはオフィス空間に変えてしまう。

リンスピードは XchangE を、2014年3月6日から16日にかけて開催されるジュネーブモーターショー2014に出展する予定だ。

現代に戻る

リンスピードがこれまでに発表してきた型破りなコンセプトカーも素晴らしかった。未来の移動手段に対するビジョンと、創造性豊かなネーミングセンスの両方においてだ。2008年には潜水艦にもなるロータスエリーゼ、sQuba が発表された。2009年には車体が変形する iChange が出てきた。iPhoneをスワイプするだけで一人乗り、二人乗り、三人乗りへとシート構成を変形できるコンセプトスポーツカーだ。

そして2010年には、リンスピードは UC という小さな電気自動車を発表した。ハンドルの代わりにジョイスティックで操縦し、長距離移動の際には鉄道の貨車に積載することもできる。

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一方、XchangE のプラットフォームには Telsa Model S が使われている。つい最近まで SF 映画の領域だと思われていたデザインや技術は、近所の馴染みの自動車ディーラーでも見かけるようなものになりつつあるのだ。

リンスピードの記者発表によれば、XchangE は他の車や道路、クラウドベースのサービスと LTE ネットワーク経由で通信できるということだ。道路状況に関する警告メッセージ、効率的なおすすめルートなど、交通に特化したサービスがリアルタイムで手に入る。

だが、ダッシュボード・ディスプレイやモバイルアプリには、もう既に似たような機能が存在する。DSRC を使った車両間システムや LTE のテストはあちこちで行われているのだ。とはいえ今の段階では、送られてくるデータを解釈して運転の判断をするのは人間の仕事である。

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次の段階は、取り込んだデータを使って運転操作の核であるアクセルやブレーキなどを制御できるようにすることだ。今も既に多くの車が似たようなドライビング・アシストシステムを搭載している。しかし、それらの大半はレーダーやレーザー、センサーといった車載のソースからデータを取り込んでいる。リンスピードによると、この技術が進歩すればドライバーは運転から解放され、本を読み、音楽を聞き、ネットサーフィンをし、ゲームをプレイし、オンデマンドの映画を見、ビデオ会議を開催するなど、自由に過ごすことができるようになるということだ。

繰り返しになるが、私たちはすでに未来の運転環境に追いついてしまったようだ。ほんの数年前まで、ナビゲーション、エンターテインメント、ドライバーアシスタントを表示するスクリーンが並んだモーターショーのコンセプトカーは、子どもや孫の世代が将来楽しむもの、という存在だった。

XchangE のコンセプトカーでは、これらは依然として野心的な機能という位置づけだ。しかしこうした機能はすでに Tesla の大きなダッシュボード・ディスプレイ上に存在するし、さらに言えば、ドライバーがスマートフォンやタブレット端末を持ち込めば、どんなオンボロ車にだってあるものだと言える。

ジョイスティックで旅に喜びを

リンスピードのビジョンと現実との大きな違いは、現実の車では搭乗者のうちの一人、つまりドライバーは集中して運転しなければならないということだ。そして、これにはハンドルが必要だ。

rinspeed xchange xc_69_dwn_69_2014_hres resizedXchangE のハンドルにはハンド認識と分かりやすい多機能キーが使われており、ダッシュボードの真ん中に移動させることができる。ハンドルは「ステア・バイ・ワイヤ」制御コンソールとなっており、本質的にはゲームのコントローラーと似ている。あるいは、リンスピードによれば、最近のジェット機で使われているものに近いということだ(見た目は格好良いが、信頼性と安全性については疑問が残る)。

車を操縦するという責任から本当にドライバーを解放することができたら、シート構成を設計し直すにはまたとないチャンスになる。それにはソフトウェアデザインというよりは、工業デザインが関わってくるだろう。

XchangE のコンセプトカーでは、リンスピードは医療用人工装具の製造メーカーであるオットーボックのモビリティソリューションとコラボして、ドライバーや同乗者が背もたれを倒せるだけでなく、完全に傾けたり回転したりできるようにして、20通りものシートアレンジを可能にしている。これによって、ワークステーションの生産性やメディアの利用に理想的な設備が作り出されるのだ。

安全の問題はさておき、現在でもすでに携帯電話を片手に、そして車内のインフォテインメント・システムを目の前にして運転していることを考えれば、完全にシートを倒すことはまだできないにしろ、自動運転による移動のビジョンはますます世に浸透しつつあるようだ。

未来がまだ未来的だった1950年代のSF映画のような空間の中、自動運転のTesla で走行するタートルネックのカップルが写し出された、大胆で少々気味の悪いリンクスピードの画像。未来の車がこの画像のようになる可能性は、全くゼロというわけでもなさそうだ。

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