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家電メーカーがなんと言おうとテレビはスマートフォンではない。確かに、テレビとスマートフォンの区別をつけるのは難しいかもしれない。いずれも大画面を搭載し、非常に効率的に時間を浪費できる。それに最近ではインターネットに繋がるテレビが急増し、スマートフォン同様の機能やアプリまで登場し始めているのだ。

この類似点こそが問題だ。iPhoneやAndroidの端末とは違い、テレビは数年に一度しか買い換えない、消費者にとっては大きな買い物である。消費者は、アプリの利用価値がなくなってしまったり、ユーザーサポートが受けられない状態となって、購入したスマートTVが過去の遺物となってしまわないかを気にするのだ。

もはやテレビは単純ではない

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テレビがお茶の間を占拠する時代は終わった。成熟した消費者がストリーミング配信に関心を寄せるようになったためか、あるいは居間に散らばる無数のセットトップボックスを集約したいと考えたせいかは分からないが、スマートTVはこの数年で進化し、ようやく勢いが出てきた。

NPDグループによれば、インターネット接続機能を持つテレビはこれまで以上に生産、購入(特にインターネット経由で)されている。同社は、スマートTVが2015年までに2300万台設置されると予測している。

特にこれまで利益率の低下に苦しんできた家電メーカーにとって、スマートTVの持つ潜在能力は魅力的だ。実際スマートTVを作るメーカーは皆、我こそがテレビ界における次のAndroidやiOSになろうと躍起になっている。

その結果、スマートTV専用のアプリ・プラットフォームは無数に存在するが、プラットフォーム間の互換性が殆どないという状況が生まれている。このことから、各プラットフォームは外部の開発者を囲い込む事に相当苦労していることが想像できる。少なくとも、いくつかのプラットフォームが統合でもしない限り解決策はなさそうだ。

スマート・テレビのプラットフォーム、どれが一番優れているのか?

テレビのプラットフォーム化が進む中、可能性を秘めたOS予備軍がいくつか存在する。

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ストリーミング型セットトップボックスとして知名度の高いRokuが最近、中国のテレビメーカーであるTCL、Hisense Internationalと提携し、自社のソフトウェアやアプリを搭載したテレビを発売すると発表した。

Mozillaは既にパソコンのブラウザからスマートフォンOSにFirefoxをシフトしており、今度はテレビに搭載したい考えを明らかにしている。この非営利目的のFirefox OSは、今年の終わりにはPanasonic製品に搭載される予定で、成功すれば他のメーカーも続いて導入することが予想される。(無償であることに何か別の理由がないなら、の話だが。)

Operaもまた、テレビ市場を視野に入れている。実際、ソニーやサムスン、東芝のようなメーカーのテレビにOperaのソフトが搭載されている。

LGは、脚光を浴びたもののスマートフォンのプラットフォームにはなれなかったWebOSを、依然としてテレビ向けに改良している。いうまでもなく過去にPalm PreやPixi等で見られたバージョンと同じものではないが、アプリを「カード形式」で表示し、関連性や使用頻度に応じて並び替える機能は健在だ。HPから譲り受けたWebOSは、今年発売のLG製テレビの2/3に搭載される予定だ。

その他、Vizioやシャープ等も自社ソフトで勝負に挑んでいる

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複数のアプローチを模索しているメーカーもある。LGは今もなおGoogleTV(昨年の秋に待望のアップデートが実施されたばかりだ)を搭載した商品を販売しており、PhillipsはAndroidを試している。一方Appleはいまだに口を閉ざしているものの、同社のスマートTV参入説は消えていない。

複雑で入り組んだ状態のスマートTV市場だが、実際にはテレビに搭載されているソフトウェアに関係なく、使い勝手はどれも似たり寄ったりだ。番組表を開いて見たい番組を予約し、Netflix, Hulu, YouTube等から映像をストリーミングし、たまにソーシャルネットワークを開く。これらの作業は、どのテレビで行ってもさほど変わらないのが実情である。

しかし機能やアプリの構築方法は機種によってバラバラであり、これがアプリ開発者にとっては大きな問題となっている。

フラグメンテーションの問題

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外部の開発者からすれば、複数のデバイスとソフトウェアに対応するのは頭の痛い話だ。あらゆる製品で実行可能なユニバーサルアプリを作るならともかく、開発したアプリをハードとOSの組み合わせの数だけカスタマイズしなければならないのだ。カスタマイズといっても、アプリの修正程度で済む場合から、画面の解像度や各プラットフォームに合わせたスクラッチ開発が必要なケースまで、その差は幅広い。

「フラグメンテーション(fragmentation:分裂)」と呼ばれるこの状況は、アプリ開発者にとって大きな問題だ。モバイルアプリの開発者は長年これに付き合ってきたが、テレビ用アプリの開発者にとってはより深刻な問題のようだ。App Developer magazineは、モバイル業界と違い大手プラットフォームの存在しないスマートTV業界の「フラグメンテーション」は、とりわけ障壁が高いと指摘する。

調査会社Decipherのマネージング・ディレクターであるナイジェル・ワリーは、イギリスのMediaTel’s Newslineに対して、同様の意見を漏らしている。イギリスのITVとChannel4は重要なスマートTV用アプリ開発会社だが、スマートTV業界には確固たるプラットフォームが存在しないため、開発環境に苦労しているというのだ。

「LG向けにいくつかのアプリがあったのですが、今年になってOSが全く刷新されてしまったので、全部作り直しです」とワリーは話す。「めちゃくちゃですよ」

モバイル業界を参考にするというより、むしろモバイル業界のリーダーをそのまま追う。これがワリーの答えだ。「完全に分裂したマーケットで、誰もスマートTVの未来が孤立した専用OSにあるとは思っていません」と彼は話す。「おそらくOSはAndroid、WindowsまたはiOSになるでしょう」

幸いにもスマートTVに参入する一部の大手メーカーは、HTML5を後押しし始めている。もしHTML5がスタンダードになれば、開発者はテレビ用に最適化されたウェブ・アプリを提供できるようになるだろう。モバイルでも活躍するこの言語を使えば、より簡単にスマートTVに対応することが可能になるのだ。

ただし、スマートTVに参入している全てのメーカーが、専用アプリを手放そうと考えているわけではないようだ。仮に専用アプリがなくなったとしても、新たに浮上する問題もある。例えばアプリ・ストアの受け入れ基準やストア内での管理、アップデートの実施方法等だ。ここでもやはり標準規格の存在が、開発者や消費者にとって一番シンプルで使い勝手の良いアプリ開発の環境を作るに違いない。このためSmart TV Alliance等の団体は、モバイル・デバイスの時と同じようにHTML5の包括的な導入を推奨しているのである。

スマートTVはスマートフォンではない。しかしひょっとすると、スマートフォンをそっくり真似たほうがいいのかもしれない。

画像提供:
Indiana JonesとThe Last Crusade画像:maxulic(YouTubeより)
Broken TV画像:velkr0(Flickrより)

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