Mac誕生から30年:iOSとOS Xのハイブリット端末「iPad Pro」は誕生するか
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1月24日にMacは誕生から30周年を迎えた。このパーソナルコンピューターはこれまでアップルにとって極めて重要な製品であった。果たして今後はどのような役割を担うことになるのだろうか?

おそらく主役は14年間Macを支えてきた今も現役のオペレーティングシステム、MacOS Xだろう。

2007年にiPhoneを披露した際、アップルはOS Xの機能を小さなタッチスクリーンに詰め込むという快挙を成し遂げた。アップルのこの偉業はライバル企業であるResearch In Motion(現在のBlackberry)やGoogleを焦らせ、彼らはこぞってその秘密を探ろうとした。この機能制限版OS XはやがてiOSに進化し、iPhoneやiPad専用のオペレーティングシステムとなった。

OS XとiOSは技術的なルーツは同じだが、アップルはこれらをほぼ別物として開発を行ってきた。iPhone用アプリはMacでは動かないし、MacのソフトウェアはiPhoneやiPadでは実行できない。

だが、この現状が変わるとしたらどうだろうか?

ReadWriteがこの件について開発者や専門家に意見を聞いてみたところ、彼らは皆、アップルのデスクトップとモバイルを融合させたハイブリッド端末という考え方に興味を引かれているようだった。もしもそんな端末があるとしたら、それはキーボード付きカバーが付属した大きめのiPadのような外観で、プロフェッショナルユーザー向けに「iPad Pro」として売り出されるだろうというのが大方の見方だ。この端末はiOSとOS X両方のアプリケーションを実行でき、タッチ入力もキーボード入力も受け付けることになるだろう。

アップルはなぜ今、自社のOSを統合すべきなのか

Ipad_macbook「iPad Pro」はアップルにとって、同社のオペレーティングシステムを統合する長期戦略の第一歩となるだろう。アップルがこの戦略を採用すべき理由は、技術的、組織的、そして経済的な面からも色々と挙げられる。

・2012年にアップルCEOのティム・クックは、それまでiOSソフトウェア開発の実権を握っていたスコット・フォーストールを排除した。現在ではクレイグ・フェデリギが、iOSとOSXの両システムの総責任者となっている。

・アップルの最新モバイル端末iPhone 5SとiPad Airは共に、デスクトップコンピューターに匹敵する64bit型プロセッサを搭載している。

・Macの販売台数は長年の間iPhoneやiPadと共に成長を続けてきたが、2013年になって減少に転じた。クックは以前から、他社にシェアを奪われるよりはiPadに奪われたほうがましだと話していたが、これが実際に起こっているようだ。

Canonicalの創業者マーク・シャトルズワースは、アップルOSの統合は不可避であると主張する。

「モバイル・プロセッサはデスクトップに追いつこうとしています」と、シャトルズワースはPCProに話している。「アップルはiPhone 5Sを披露した際、そのプロセッサを『デスクトップ・クラス』だと表現しました。これは意味深な発言だと私は思います。いずれiPhoneとMacBook Airが一体化することへの暗示ではないでしょうか。」

しかし、モバイルアプリケーション側では(アップルのアプリでさえも)まだデスクトップ対応が行われていない。iOSとOS Xの融合は、デスクトップ端末のコア・ユーザーを遠ざけてしまうかもしれないという危険性もある。だが、スティーブ・ジョブズが引用したアイスホッケー選手のウェイン・グレツキーの台詞にもあるように、「パックがあった場所ではなく、パックがこれから向かう場所に滑っていく」のがアップルのやり方なのだ。

iOSとOS Xの融合製品はどのように動作する?

アップルは決して物事を単独で考えない。全ては統合的にデザインされており、とりわけハードウェアとソフトウェアには気を使っている。iOSとOS Xを融合させる際には、新しいタイプの端末に対する需要を開拓することになるだろう。

アップルが「ハイブリッドOS」を作るには二つの方法が考えられる。

1. 文字通り二つのOSを一つに統合する方法。この場合、アップルのエンジニアもiOSやMacの開発者も、自分たちのソフトウェアをマルチタッチ対応のOS X向けに書き直す必要がある。

2. iOSとOS Xを動的に切り替える製品を開発する方法。OSの切り替えはタップ操作等で行う。

現時点では、二番目のOSを切り替える方法が現実的な戦略かもしれない。いずれはiOSとOS Xが似たり寄ったりの内容になり、OS XがiOSに吸収される日が来るのかもしれないが、これには時間がかかるだろう。

「iPad Pro」をプロフェッショナル向きの端末として開発するのであれば、iOSとOS Xの両方を提供するというのも理にかなっている。

現在アップルはiPadにノートパソコンの代役を担わせようとしているようだが、iPadにはパソコンとしての重要な機能が欠けている。例えば拡張用ポート(USB等)、物理的なキーボード、データを手動で管理出来るファイルマネージメント・システム等だ。もちろん物理キーボードをiPadに接続することはできるが、iOSはタッチ操作が前提となっているため、キー操作がもたついたり思うように動作しないことも多々あるのだ。

そこでiPadとMacBookを組み合わせれば、「タブレット・モード」ではiOSを使い、「ノートパソコン・モード」ではOSXを使うことで、仕事とプライベートの両方に使えるバランスの取れた端末になるのではないだろうか。

ただしアップルは、仕事でMacBookを使っているIT労働者に向けて新たな製品を作るだけでは十分とは言えない。

この製品を成功に導くためには、同社は別の人々の注意も喚起する必要がある。そう、デベロッパーである。

iOSゲームの人気タイトル「Beard Wars」や「Puppy Wars」を開発した企業、Cleversoftの創業者リッチ・シーゲルに話を聞いた。デベロッパーとしての彼がハイブリッド端末に望むのは、既存のiOSやOS X用アプリの全てが動作する「完全な上位互換性」だという。これが実現できれば「消費者にとってもデベロッパーにとっても最高」だということだ。

「(ハイブリッド型のOSが出れば)デベロッパーにとっては、最初は少し大変かもしれません。すべてのアプリにタッチモードとデスクトップモードを用意しなければならなくなりますから。でも少しずつその方向に向かっていくことになると思います」と、シーゲルは述べている。「MacPro並のパワーを持つ端末をポケットに入れて持ち歩き、いたるところに設けられたステーションと接続してデスクトップとしても使える未来を想像してみてください」

シーゲルは、一つのプラットフォームで二つのオペレーティング・システムを提供するモデルのほうが、最終的にデベロッパーにとっては経済的にプラスになると言っている。デスクトップ用アプリケーションの販売単価はモバイルより高く、iOSとOSXの両方を対象としたハイブリッドアプリであれば、確実99セント以上の値がつけられるからである。

「もし本当にハイブリッド端末が登場すれば、デベロッパーにとっては初めてiOSが登場した時やiPadの発売が開始された時のようなゴールドラッシュの再現となるでしょう」と彼は言っている。「そのうち『ユニバーサル・アプリ』という言葉の定義も今のような『iPhone/iPad用』ではなく『デスクトップ/iPhone/iPad/iTV/iWatch用』という意味になりそうです。消費者は当然それを求めますし、この需要に答えられるデベロッパーだけが成功を収めるでしょう」

アップルは既に土台作りを始めているようだ。iOSのデベロッパーは現在Cocoa Touchというフレームワークを使用している。アップルによるとCocoa Touchは、OS X用の開発フレームワークであるCocoaと「多くの共通パターン」を持つのだという。こうした基礎の面において既に共通点ができているのであれば、アップルはこれらの両フレームワークを同時にサポートしていけばハイブリッド型のアプリ開発も視野に入れる事ができるだろう。

消費者はなぜハイブリッド端末を望むのか

ipad-keyboard-logitech私はここ一年ほどの間、第三世代のiPadをメインのモバイル・コンピューターとして使ってみた。確かにiPadでもパソコンと同等の仕事をこなすことは可能だったが、どうしても物足りないと感じることも多かった。まず、インターネットからダウンロードして展開できるファイル形式を増やしてほしい。iPadでは通常PDFや画像関連のファイルしか閲覧することができないのだ。お気に入りのAdobe関連のアプリケーションが使えないのも不便だ。それと、iPadがブラウザの拡張機能を使わせてくれないことも仕事効率の低下につながると感じた。

ある時、私のiPad純正のノートアプリがiCloudへのデータ保存に失敗したことがあった。パソコンであれば壊れたファイルか何かが残っており、それを何とか復元できる可能性も残されているのだが、iPadではファイルが完全に消滅してしまったのでその間の仕事を取り戻すことはできなかった。またある時にはiPadのスクリーンが故障してしまい、端末全体を取り替えざるを得なくなった。ほとんどのアプリはiTunesにバックアップできたが、一部は保存できなかった。そして結局、イラストレーションアプリで作成した全データを失うはめになってしまったのだ。

「iPad Pro」は、仕事ではパソコンを必要とするが、趣味ではiPadを使いたいという消費者にぴったりの製品になるだろう。マイクロソフトはSurfaceによって、このタブレットとノートパソコンのハイブリッド製品の需要を技術的には真っ先に抑えた。しかしアップルは、既存の製品を独自に改善してまるで新発明であるかのように世に送り出すのが大の得意なのだ。使い勝手の良いiPadとMacBookのハイブリッド端末は、クリエイティブなプロフェッショナル達から絶大な支持を得ることだろう。使い慣れたコンピューターと機能的なタブレットが組合わさった製品は必ず彼らの好評を博するはずだ。

iOSとOS Xを一つの製品に統合することは決して簡単ではないだろう。アップルによれば、iOSとOS Xの開発チームはこれまで以上に協力しあっているようだが、両OSの設計を最適化するのは大変な作業であり、たとえ実現できたとしても多くの代償を払うことになるかもしれないという。特にバッテリーの寿命が犠牲になるようだ。

とはいえ、「iPad Pro」はアップルにとってプラスでしかないはずだ。元々iPadといいMacBookといい、アップル製品というのは利益率が高いものだし、「iPad Pro」ともなればそれなりの価格で販売されるだろう。一番高いiPadと一番安いMacBookのちょうど中間である700〜900ドルあたりに設定されるのではないだろうか。

家電や車に例えると?

アップルのCEOティム・クックはかつてOSの統合に関して批判的であり、このアイデアを「トースターと冷蔵庫を組み合わせるようなもの」と冷笑していた。しかし同社は過去にも読みを誤ったことがある。アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズは2010年に「パソコン=トラック論」を展開し、パソコンはやがて乗用車に取って代わられたトラックと同じ運命を辿るだろうと言っていたのだ。

確かに一般の人々はトラックではなく乗用車に乗っている。この点ではジョブズは正しかったと言えるだろう。しかしメルセデス好きで有名だった彼は、現在の自動車業界の多様性を理解できていなかったのかもしれない。今はもう単純に「トラック」と「乗用車」に分けられる時代ではない。どちらのカテゴリーにも属するようなタイプの車両に人気が集まっているのだ。この車両とはもちろん、乗用車の土台にトラックのスタイルを組み合わせたSUV車を指している。

ちょうど、モバイルとデスクトップのバイブリッド端末のようではないか。

SUV車の例は、今後アップルがどの道を走行していくべきなのかを明確に示唆しているように思える。

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トップ画像と記事中一枚目の画像:Madeleine Weiss
記事中二枚目の画像:Dave Smith

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