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IIoTの略歴

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IoTが次の産業革命だと言われることは多く、近年ますます主流になってきている。著名なアナリストたちは、向こう数十年にわたる継続的なIoT開発により、世界的な利益は2-3兆ドルに達すると予測している。業界の専門家たちも工業セクターがこの技術革命でもっとも恩恵を受けるという点に同意しており、工業IoT(IIoT)はIoT全体が叩きだす利益の主力になるだろうと考えている。

IIoTが今日に至るまでには長い道のりがあった。コンシューマ分野のイノベーションが果たした役割も大きいが、多くは工業分野のイノベーションによるものだ。技術の進化がこれまでにないペースでなされるなか、IIoTの未来は投資者や技術のエンドユーザのマインドにかかっている。しかし、我々のこれまでの歩みを知らずに、この先どこへ行こうとしているのかを知ることはできないだろう。それを知るためには、まず1968年まで遡らなければならない。

ささやかな始まり

大晦日明けの二日酔いをよそに、エンジニアのリチャード(ディック)・モーレーは1968/1/1にプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)の発明についてのメモを残した。彼が製作した『Modicon』はGMの生産能力向上に大きく寄与し、後々自動化された工業に大きな影響を及ぼした。

1968年に忙しくしていたのはディックだけではない。「デジタル情報の生成・発信装置」を作ろうと、米国の発明家にして実業家のセオドア・G・パラスケヴァコスは、世界初のマシンツーマシン(M2M)デバイスに取り組んでいた。モーレーのPLCとパラスケヴァコスのM2Mは、今日のIIoTに至る最初の小さな一歩だった。

コネクティビティの下地

時は飛んで1980年代、IIoTにおける2つの重要なマイルストーンがあった。1983年のイーサネットの標準化は異なるメーカーのマシンの物理的接続の下地を用意した。それから6年後、CERNに努めるコンピュータ科学者のティム・バーナーズ・リーは、World Wide Webの発明により複数のネットワーク管理をより強力なものにした。リーがWebを開発したのは、学術機関の科学者たちの情報共有の自動化を思い立ったことによる。

当時、Webはまだ黎明期にあったが、工業分野はその相互運用可能なコネクティビティに目を向けていた。また、デバイスドライバ問題として知られる課題に取り組むため、Fisher-Rosemount, Intellution, や Rockwell Software、その他6社のベンダーによるグループが組織された。今日では「OPC Foundation(リンク先は日本版サイト)」として知られている。

コネクティビティ、コラボレーション、提携

彼らのソリューションベンダーが集まってから、ヒューマンマシンインターフェイス(HMI)や監視管理ソリューションなどは、プロプライエタリな通信プロトコルやドライバーライブラリで開発された。最善のソリューションが登場し、エンドユーザが複数のベンダーから成るアーキテクチャを構築するようになると、これまで互換性がなかったマシン間の通信の必要性が明らかになってくる。ベンダーはアプリケーションレベルの機能開発のために投資をするか、競合他社との互換性も含むより包括的なソリューション間の接続性を作り上げる必要に迫られた。

あるベンダーは、自前のAPIやドライバーツールキットを作ることを選んだ。これにより自社製品のコネクティビティの問題は解消されたが、エンドユーザが他のソリューションと統合するうえでは制限があった。幸いにも市場の要求でベンダーは互いに協力する道を選び、ユーザにとっていい結果に落ち着いた。

OPC Foundationは、プロプライエタリなプロトコルに起因するコネクティビティの問題解決のため、競合する多くの企業に手を携えることを求めた。Microsoft Windowsが主流になったことから、1995年にはより相互運用可能なソリューションのニーズが顕著なものとなる。Windows95は小売店で買える初めてのプラグアンドプレイをサポートしたOSで、ハードウェアとの容易な統合が可能であった。

また、すでに工場で使われていたHMIのようなグラフィカルな操作も提供された。そして、Windows 95/NT4.0は開発者にとって扱いやすく、他の工業自動化システムよりも安価であった。Windowsが採用されるOSとして普遍的なものになると、あらゆる工業ソフト開発はWindowsを開発プラットフォームに選ぶようになる。

1990年代後半にはM2Mテクノロジーにも大きな進歩が見られた。25年の歴史を持つEthernetが工業設備の接続性の標準となったのだ。インターフェイスの標準は、業種によって違いを見せはじめる。DNPやIEC61850は発電業界を、BACnetは建設のオートメーションを牛耳り、他にもProfibusやCC-Link, HARTなどさまざまな規格が現れた。これらの規格でそれぞれ組合が発足しだし、工業セクターは急速に“我々が今日知るIIoT”に向けて進化を始める。

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IIoTの大衆化

普遍的なOSとEthernetによるバックボーンの存在で、より多くの工業デバイスがコネクティビティを得るようになった。 1999年には英国の技術的パイオニアであるケヴィン・アシュトンがこの流れを継承し、インターネットと物理世界がセンサーを通じて繋がるシステムを表す“モノのインターネット”という単語が飛び出す。レガシーなデバイスもコネクティビティを得ることとなり、設備が高価なため長期的投資になる工業においてこの流れは主要なものとなる。

2000年代初頭でもっとも影響があったIIoTのマイルストーンといえば、おそらくクラウドテクノロジの幅広い普及だろう。2002年に登場したAWSにより大衆がクラウドを使えるようになり、企業や工業のアーキテクチャの構築・利用は完全に変わることとなった。その14年後もクラウドと仮想マシンはIIoTに未だ新しい機会を提供しつづけている。

2000年代中期では、消費者がスマートフォンを使うようになり、工業セクターでもより小さく賢いPLCや分散コントロールシステムが使われるようになる。ハイブリッドコントローラやプログラマブルオートメーションコントローラ(PACs)が登場し、バッテリーや太陽電池の信頼性が上がり価格が下がったことから、レガシーハードは進化した。製造業者はセンサーをパイプラインのように網羅させ、組織の隅々まで巡らせることができるようになった。幅広く分散させる動力源とスマートデバイスのコネクティビティの組み合わせにより、工業データに重要なコンテキストが生まれた。

データを情報に変える

コンテキストによってデータは情報に変化し、業界はOPC Foundationに再びこのコンテキストを得たデータをどうするかという課題の助けを求めることになる。2006年、OPC FoundationはOPC UAプロトコルという回答を出した。これは現在でも利用されている。このOPC UAプロトコルは既存の規格の上に成り立っているものだが、新しい技術やその進化を念頭に作られたものである。

OPC UAは有線からAPIを切り離し、屋外装置やコントロール層アプリケーション、生産実行システム(MES)、統合業務(ERP)アプリケーションなどに適合するよう設計された。その汎用情報モデルは整数や浮動小数点、文字列などの基本的なデータ型から、タイマーやカウンター、PIDなどのバイナリ構造、XMLなどをサポートする。今日に至るまで、OPC UAはさまざまな幅広い層の間で相互運用性を提供する標準となっている。

2010年にはマシンや運用のデータが本物の価値を生み出すようになっていき、より多くの組織がデータの貯蓄、分析を試みるようになってきた。その結果、データ分析家の市場が飛躍し、センサー技術の価格は大きく下がった。廉価で柔軟性に富んだインテリジェンスとコネクティビティにより、すでに利用されなくなっていたレガシーデバイスやインフラがIIoT時代で日の目を見ることになるだろう。

また、PCやエッジデバイスの進歩により、企業はいつでもどこでも柔軟にデータアクセス・分析がおこなうことが可能となった。CitrixやIntelなどのIT業界のリーダーは、私物デバイス持ち込み(BYOD : Bring your own device)のベストプラクティスについてオープンに話すようになってきている。

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IIoTの今日、明日、そしてその先

過去6年ですべてのピースがはまり、IIoTの未来についてビジョンが定まった。大規模な工業コネクティビティ、高度なアナリティクス、状況ベースのモニタリング、予測的メンテナンス、機械学習、AR。これらは、今日実現されている技術に裏打ちされた「未来のIIoTのコンセプトを形成するもの」だ。GEやIBM、PTCその他多くのリーダーたちはIIoTの未来に大きく賭けている。

過去2年での大規模なイノベーションへの投資や買収により、IIoTプラットフォームはさらに磨きがかかっている。

リチャード・モーレーがPLCを着想してから長い道のりであったが、IIoTの進歩により多くの注目とリソースが集まるなか、より幅広い市場でさらに大きなことが起こると予測される。最近発表されたビジネスインテリジェンスについてのレポートでは、5年間でIoTソリューションに6兆ドル近くが費やされ、企業はその内訳のもっとも多くを占めることになるという。

こういった状況下、工業において大きな変遷が起こることは疑いようがない。ルールが変わり、技術が進歩し、ビジネス構造はそれに適合するよう変化するだろう。たとえば、かつては共通点がなかった工業技術とITがコラボレーションを始め、やがては1つになる・・・などだ。

こういった役割のシフトについてクライアントから聞くこともあり、また工業セクターでのMQTTやWAMP,XMPPといった従来のIT標準の利用の増加もこういった変化が起きていることの証左だろう。“どこからでもアクセスできる統合化されたデータ”は標準的なものとなり、それを解釈できるデータサイエンティストはやがて意思決定をおこなう役割を担うようになる。

IIoTがどのような進化を遂げるのかを厳密に予測することは難しいが、わかっていることはただ一つ、この新しい産業革命の触りの部分に我々はついに辿り着いたということだ。デバイスがよりコネクテッドになり、高度なアナリティクスやAIに投入されるデータが生成されるようになれば、IIoTを取り巻く進歩はほぼ際限のないものになるだろう。

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