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コールドチェーン(低温流通体系)は、現代の隠れたライフラインだ。冷蔵倉庫と冷蔵輸送をつなぐことで製品の鮮度を保ち、ワクチンの活性を保ち、家庭に食料を届けてくれる。

この実現のためには、たいていの場合が細やかな管理を必要とする。ワクチンのような繊細な製品の場合、コールドチチェーンは温度を2~8℃に保つよう構成される。許容される温度帯がタイトなため、厳密なプロセスと緊密なインフラが必要とされるのだ。

インフラやプロセスが適切でなかったとき、その結果は悲惨なものだ。たとえば、インドではコールドチェーンインフラが粗末なものであったため、製品の40%が無駄になった例もある。途上国では冷蔵トラックを利用できないことも多く、ワクチンを必要としている人たちの元へ届ける「最後の数マイル」が深刻な課題となってくる。

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新鮮な食品をはるばる食卓にまで運ぶためには、冷蔵だけでは足りない。多くの製品の場合、到着した先で顧客に買ってもらい食べてもらえるものを届けるのであれば、一定レベルのCO2、酸素、湿度が必要である。それぞれが個別に測定管理され、記録、検証されなければならない。

概念的であいまいだったIoTが現実のものになってきているが、そのIoTが提供できるイノベーションとはどのようなものなのだろうか?

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Michael Vedomske, PhD, Principal Data Scientist at Ingenu

もっともインパクトが大きいものといえば、低電力広域(LPWA)テクノロジーと呼ばれるワイヤレス技術だ。それらが謳っていることは、広域をカバーする無線のコネクティビティ(セルラー網などのように“どこでもカバーしている”もの)を提供し、電力消費が少ないためバッテリーが長持ちするということだ。RPMA(Random Phase Multiple Access)は、LPWAテクノロジーで使えるものの1つだが、世界中で使えるかという点とセルラー網の世代交代の両方の問題を解決したことから特別な立ち位置にある。

第一の問題は、世界中どこでも使える2.4GHz帯を用いることで解決した。世界中どこでも同じ帯域を使えることにより、国によって利用する帯域の調整をおこなったり、まったく新しいモジュールを導入する必要がなくなったわけだ。

第二の問題は、使っている技術が時代遅れになりもう使い物にならなくなった際に起こる問題である。たとえば、2GはAT&Tが今年いっぱいでサポートを終えるとしており、Verizonも2019年までのサポートとなる。他のキャリアについても、世界的に同じような傾向がある。コールドチェーンにおける問題とは、こういった「世代交代が起こるたびに流通の端から端まで入れ替えコストが発生する」ということだ。

そういった問題は、RPMAが後方互換性を維持することから解決された。IoTのマシンやセンサーにとって、通信こそが唯一の存在理由である以上、他のネットワークとの競合の犠牲になるべきではない。RPMAにより、ネットワークの世代交代の影響を受けず運営管理をすることができるのだ。

出費は必要な出張サービスのみに

出張サービスはロジスティクスの重要な部分ではあるが、不必要な出費でもある。それら不要な出費は、設備不良が発生した時や点検時に発生する。これらのコストにはセンサーからの情報が送られ続けることの保証や、そのためのバッテリー代も含まれている。

多くのコールドチェーンベンダーは、ハードのコストは全体のごく一部に過ぎないことを理解している。だが、ハードやバッテリーの交換、修理のたびにメンテナンス作業は発生し、その度に作業員に払う出張サービス代はハードの値段を容易に上回る。ハードやバッテリーの交換は、いつまでも垂れ流され増え続けるコストの要因だ。

さて、LPWAコネクティビティは、速度と引き換えにバッテリーの長寿命を実現する。場合によっては、12年もつこともある。つまり、人の派遣を減らせることからロジスティックス、特にコールドチェーンにとって都合がいいのだ。物流の流れの端から端までのあいだに発生する「交換の手間」を減らせることは、全体として非常に大きな節約につながるほか、一足飛びの効率改善につながるだろう。

面倒をかけず最小のインプットから最大の結果を

現在、多くのベンダーは、コスト削減のためにパッシブなデータロガーを利用している。だが、LPWAによる「バッテリーの長期化」と「モジュールの低価格化」により節約できた資金は、よりアクティブなロガーを導入するなどこれまでとは異なる投資を促すだろう。得られる効能はそれだけではない。「管理された広域ネットワーク」を得ることで、どこからでもデータを入手できるようになるだろう。あなたのオフィスがミネアポリスやマカオにあろうが関係なく、出荷場からのアップデート情報をリアルタイムで受け取ることができる。

広域ソリューションがもたらす、もっとも大きな効能の1つが「プロフェッショナルな管理がなされたネットワーク」なのだ。ワイヤレスシステムを管理する企業の存在により、その信頼性はたしかなものになる。企業は夜中にインフラの修理に駆けずり回ることがなくなり、本来のゴールに集中することができるだろう。

サポートチームの成長なくして、無線インフラの運用やメンテナンスは成り立たない。それよりは、“低価格で稼働の確保が容易なもの”の方がマシではないだろうか。それこそがLPWAのいいところなのだから。

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