ゲスト執筆者のリンゼイ・アーバインは、Salesforceの事業開発・戦略的業務提携を担うディレクターであり、同社が提供するSalesforce Wearの開発者プラットフォームを指揮している。

ウェアラブルを通じて、日々の暮らしはどこまで便利になるのだろうか? これまで数々の憶測や噂が飛び交い、注目を集めてきた。

運動や消費カロリー、睡眠から食事に至るまで、既に一定の存在感を示すウェアラブル。こうした「プライベート領域」の盛り上がりに比べると、「仕事領域」に関する話題は耳にする機会が少ない。果たしてウェアラブルは、我々の日々の仕事をどのように変える可能性を秘めているのだろうか?

2015年だけでも、スマートリングやスマートウォッチ、ヘッドバンドなど、多くの製品が登場した。こうしたウェアラブルに対して、ユーザーが新たな体験を期待して盛り上がる傍らで、実は多くの企業担当者が、新たなビジネスチャンスにつながるのではないかと熱い視線を送っているのである。

関連記事:働く現場でのウェアラブル-その可能性と問題点

International Data Corporation(IDC)の最新の発表によれば、2015年に販売されたウェアラブルは7210万個と推計されており、2014年の2640万個に比べ、約2.7倍へ急増した。

また、Salesforce Researchは2015年3月、「ウェアラブル技術を2年以内にビジネスへ活用したい」と答えた企業担当者を対象に調査を実施。500名以上の回答者のうち79%が「会社のビジネス戦略上、重要な役割を負うだろう」と考え、86%が「ウェアラブルへの投資を拡大しよう」と計画するなど、単なる「個々人の仕事のパフォーマンス向上」といった領域を超えて、ウェアラブルに期待していることがわかる。

こうした予測を見るに、「ウェアラブル技術にブレイクスルーが起こり、一気に広まる」ことも時間の問題と言えよう。その瞬間が訪れたとき、多くの産業分野において、技術革新の恩恵を受ける企業が出てくることは明らかである。

企業がウェアラブル活用を進めるために、必要なこと

ウェアラブルは会社の生産力や効率性、場合によっては安全性に至るまで、計り知れないメリットをもたらす存在である。これはつまり、ウェアラブルにうまく適応できるか否かによって将来、会社の明暗が大きく分かれてしまうことを意味する。

企業がウェアラブルをうまく活用する上で重要な点や、次の一手を進めるためにおさえるべきポイントを、以下に紹介したい。

①優秀なアプリ

これまでのウェアラブルは多くの場合、ハードウェア(デバイス)そのものに注意が向けられてきた。しかし、これらのデバイスに息を吹き込み、様々な動作を実現し、真の意味でイノベーションを実現するのは、優秀なアプリである。

複雑な業務プロセスを、“新しく”、“シンプルで”、“見やすく”、“アクション志向”な形に生き返らせ、日々の働き方を変えていく… そんなアプリが登場すれば、ウェアラブルは単なるガジェットから、ビジネスにとって有用なツールに様変わりするはずである。

実際にGartnerの見立てによれば、2017年までに、全世界のアプリを通じたインタラクションの50%が、ウェアラブルを介したものになるという。

勢いを増すウェアラブルの姿は、驚くほどかつてのスマートフォンの姿と重なる。洗練されたアプリの登場が、スマートフォンの急増と、様々な生活場面への普及を支えた結果、今や各産業の在り方自体がスマートフォンに合わせて変わる状況につながっている。Salesforceでは、企業向けアプリの市場を拡大することが、ウェアラブル技術の普及につながり、結果として日々の生活や仕事を変えていくと考えている。

②クラウドの有効活用

ウェアラブルが会社に浸透すると、従業員メンバーは今以上にデジタル世界への接続が強まり、結果として、現実世界でもより良い成果を生み出すことになるだろう。

例えば、会議や外出先でスマートフォンを確認したり、ノートパソコンを開いたりするのは、煩わしい上に、少しずつ時間を要する作業である。それに比べ、クラウドに接続されたスマートウォッチやスマートグラスを身に着けていれば、営業パーソンや、客先に出向くサービスエンジニアは、いつでも時間をかけることなく、ハンズフリーで重要な情報を知ることができる。

ここで注目したいのは、ウェアラブルと企業向けアプリさえ用意すれば、クラウド上のデータを正確かつリアルタイムに表示させることによって、正しい判断・行動を導けるという点だ。

こうした利用の他にも、CRMの一環として顧客の360度の視野データを見ることができれば、適切なサービス改善や、本音分析の他、効率や生産性を高める施策を提案することができるだろう。

クラウド活用により広がる可能性は無限大である。

③「ウェアラブル持参」という新しい概念

ひとたびテクノロジーが受け入れられると、人々はプライベート・仕事に関わらず使用したくなるものである。勘が鋭い経営者であれば、従業員に私有のテクノロジーが広がると、業務効率と生産性の向上につなげられることに気づくだろう。ソフトウェア開発者にとっては、ビジネス用アプリを通じて各従業員のデバイスに接触するという、新しいチャンスが生まれるのである。

既にチャレンジを始めた企業も存在する。例えばAlpine Metricsが提供するスマートウォッチ向けデータ分析アプリ「Intelligent Forecasting」を使えば、営業パーソンが最新の販売動向をいつでも見ることができる。他にも、コールセンターを提供するNewVoiceMediaが発信者IDを扱うスマートウォッチアプリを提供したり、CRM支援を行うVlocityが、営業パーソンやサービスエンジニア向けのコミュニケーションアプリを提供したりといった例が見られる。

こうした先駆者たちは最新技術を先んじて採用することにより、徐々に成功を収めている。今後もウェアラブル技術は、よりスマートに、より速く、より機能性を増して、日々の仕事現場に関わってくることになるだろう。

「仕事」と結びついたウェアラブルは、今後どんな進化を遂げていくのか。目が離せないテーマである。

画像提供: Intel Free Press

Pocket