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ゲスト執筆者のアビ・マンデルバウムはYouVisitの共同創設者でありCEOだ。YouVisitはあらゆるデバイスで仮想現実やその他の没入型エクスペリエンスを開発、流通、収益化する統合プラットフォームである。

新しいテクノロジーを採用する際には、それをどのように実装し、使用するのが最良なのか議論されるのが常だ。どんな理由であれ、人はどちらかの側につくものである。仮想現実の世界も例外ではなく、Oculus vs Vive、ゲームvs現実世界の体験、アイ・トラッキングvs手動操作、といったテーマについて白熱した議論が既に行われている。しかし、モバイル・エコシステムにおいて、開発者の間で何年も行われていた議論がVR空間にも見られるようになった。ネイティブ・アプリとウェブ・アプリとの論争だ。

当初はウェブ・アプリとして開発されたものの、普及が広まるにつれ、仮想現実はネイティブ・アプリに近づいてきた。しかし、VRという分野が成熟して限界に挑むようになり、ウェブ・アプリの需要がはっきりすれば、ネイティブ・アプリが市場を支配する時代は過ぎ去ってしまうだろう。論争が起きているのはこういった理由からだ。

ウェブ・アプリとネイティブ・アプリの違い

まずはライバルを破ることから始めよう。ネイティブ・アプリはGoogle PlayやアップルのApp Storeなど、その端末のアプリストアから入手できるもので、1台の端末で使用することを前提に開発されている。その端末固有のハードウェア(加速度計、カメラなど)を利用でき、オフラインでも動作するため、ユーザーは一般にこのようなアプリを日常的に使っている。

対照的に、ユーザーは端末で利用可能な任意のウェブ・ブラウザからウェブ・アプリにアクセス可能だ。通常、ウェブ・アプリはオンラインになっている時にしか動作しない。ただし、アプリのキャッシュや端末のローカル・ストレージを利用すればこの問題を回避できる。ウェブ・アプリは多くの場合、HTML5を使用したネイティブ・アプリに似た設計となっており、ユーザーがどのモバイル端末を利用していてもアクセスすることが可能だ。

一般的に、VRアプリを開発する際にはネイティブ・アプリが選ばれることが多い。携帯電話にフィットしているため、ユーザーが最適なエクスペリエンスを得られる、というのがその理由の一端だ。モバイル端末のユーザーや開発者はネイティブ・アプリに転向することが多い。なぜなら、ウェブ・アプリはごくありふれたエクスペリエンスを提供するものだからだ。だがVRの場合、ウェブ・アプリが提案してくれる機能は多い。このため、ユーザーと開発者、どちらにとってもウェブ・アプリが最善の選択となるだろう。

ウェブ・アプリのメリット

ネイティブ・アプリと違って、ウェブ・アプリはクロス・プラットフォームで利用でき、ほとんど全ての端末で動作する。これにより、開発者はどのプラットフォームでもVRコンテンツの一貫したパフォーマンスを保証することが可能となる。

ネイティブ・アプリは、特定の端末を基にカスタマイズ可能だが、高品質なグラフィックス・カードを搭載した、処理の速い端末を使用するユーザーが有利となるのは不公平でもある。ウェブ・アプリでは、ユーザーの使用する端末に関係なく、企業がVRコンテンツの品質を管理できるのだ。

一般的なイメージと違い、実はウェブ・アプリも処理は高速である。JavaScriptで開発されており、インタラクティブなグラフィックスを描画するのにWebGLを利用しているからだ。 WebGLが演算を実行するのに使用しているのはCPUではなく、グラフィックス・カードであるため、その世界に浸りきってしまえるような仮想現実体験を構築するのに要する処理能力は、ウェブ・アプリの方がより大きいのである。

幅広いユーザー層に向けたVRコンテンツの開発を続ける企業にとって、ウェブ・アプリは、特にどのコンテンツを表示するかを開発者が管理できるという利点もある。ネイティブ・アプリの場合、ダウンロードしたアプリをユーザーが更新しないということも考えられるためだ。

アプリをアップデートしてもらえなければ、企業はますますユーザーとのつながりが希薄になってしまうリスクがある。だが、ウェブ・ベースのインターフェースによってVRアプリを管理すれば、企業はコンテンツを速やかに更新し、ユーザーに見てもらうものを操作することが可能だ。

ソフトウェアが普及しているというのもメーカーにとって重要な利点だ。HTMLやJavaScriptは各種ウェブ開発の標準ツールなので、新しく出てくる端末のOSに合わせて、言語選択が常に必要なわけではない。

ウェブ・アプリの限界

もちろん、ウェブ・アプリにも欠点がないわけではない。オンライン接続の必要性が懸念事項なのは明らかであり、VRアプリを利用できる時と場所が制限されてしまうことも多い。アクセシビリティが重視される時代、この点はユーザーにとって大きな懸案事項だ。だが、HTML5を使用すれば、オフライン・モードでモバイル・ウェブ・アプリのコンテンツが利用できるようになり、この制限に対処できる。全米でWi-Fi接続が当たり前になったように、モバイル端末の普及が引き続き進んでいけば、この制限も些末な問題となるだろう。

端末のハードウェアにアクセスするというのも今後の課題だ。例えば、仮想現実アプリには、頭の動きや位置情報を追跡する方位データを集めるため、モバイル端末の加速度計にアクセスしなければならない。しかし、モバイル・ブラウザの中には、まだこのデータを報告できないものもあり、ブラウザが端末から加速度計のデータを受け取るのを認めた規格はまだ存在しない。端末のトラッキングは、ある携帯電話でうまくいくかもしれないが、別の携帯電話では問題がある、というのが最終的な結論だ。

仮想現実が完全に当たり前のテクノロジーとなるには、仮想現実と統合される予定のエコシステムを検討しなければならない。いつでもどこでもつながるWi-Fiのようなものをユーザーが持てるようになり、ブラウザの可能性が向上すれば、ウェブ・アプリの応用範囲がもっと広がるだけでなく、開発者がイノベーションを行い、テクノロジーを進化させるような、オープンな環境が生まれることになるだろう。

勝つのはどちら?

課題はさておき、最終的にウェブ・アプリがこの論争に勝つことは、ある重要な事実が指摘している。すなわち、企業は自社のブラウザにより多くのリソースを注ぎ、関心を寄せているということだ。FlashやSilverlightのようなシステムが衰退するにつれ、開発者はシンプルなブラウザとHTMLを用いてアプリを開発する、新しい方法を模索することだろう。

モバイル端末が多様化しつづければ、それぞれの端末に向けた固有のアプリを開発することはすぐに不可能となってしまうだろう。ここでウェブ・ベースのアプリが頭角を現すことになる。ブラウザの可能性がネイティブ・アプリの機能に追いつけば、なおさらである。その大きな一例は既にゲーム・エンジンのUnity 5に見られる。Unity 5のコードはHTML5に変換可能だ。将来的に、VRコンテンツをブラウザ内に作成することができるという、強力な指標である。

仮想現実体験や他製品がどこに向かうべきかという問題に関して、この論争はまだ続いている。だが、新たな大容量コンテンツの出現とともに、端末の多様化によって、ウェブ・アプリは主要なプラットフォームとして市場に認識されることとなるだろう。ユーザー、設計者、企業と、誰にとっても利点があれば、ネイティブ・アプリという選択は見劣りする。ブラウザが未来のOSとなる道を歩むのならば、その市場に合ったVR体験を設計するのが理にかなうと言えるだろう。

トップ画像提供:Shutterstock

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