アップルの新型iPod Touchが前のモデルと比べてずっと優れたものなのは驚くことではない。技術の進歩は早いものであり、同社がこのデバイスに力を注いでから3年の月日が経っている。

新モデルではより高い処理能力と改良されたカメラが装備されているが、その事でバッテリー寿命が短くなったりボディーが大きくなったりはしていない。あなたの用途にもよるが、今回のアップデートは利点とも問題の種ともなりえる。

iPod TouchはiOSをきちんと動作させることが出来るアップル・ガジェットの中では199ドルから販売されている最も安いものであり、そういう意味では開発およびテスト用途に向いている。最新モデルはとても良いものに思えるが、同時に犠牲にしているものもいくつかある。

以下はiOSデベロッパーがiPodを購入する前に知っておくべきいくつかの事だ。

2015年を迎えたiPod Touch

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これまでiPod Touchはアップルの大黒柱であるiPhoneの下位に甘んじてきた。これにはプラスとマイナスの面がある。

今回のアップデートはiPhone 6の成功に続こうとするものだが、アプリ開発者が大事だと考えるいくつかの欠点はまだ解消されていない。

まず今回良くなった点だが….

A8プロセッサ

アップルはiPhoneに搭載されている64-bitチップをiPod Touchにも搭載した。アップルの設計によるA8チップはこれまでのA5チップと比べるとメジャーなアップデートになる。しかしハードは同じであるとはいえ、アップルはアンダークロックを施しているようで、iPhone 6では1.39GHzで動作しているものが、iPod Touchの場合は1.1GHzになっている(おそらくバッテリーの寿命を優先しての事だろうが)。

だがそれでもアップルは「グラフィックパフォーマンスは10倍になっている」と宣言している。Metalに最適化されたゲームの多くを滑らかに動かすに足る性能だ。

増量されたメモリ

性能を更に伸ばすため、メモリも大幅に増やされた。第5世代のiPod Touchは512MBのRAMを積んでいたが、次のモデルでは1GBに増やされた。これは2GBのメモリを搭載してたiPad Air2を除く他のiOSデバイスと同じ量だ。

良くなったカメラ

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アップグレードされたデバイスには、8メガピクセルのリアカメラも含まれる(旧モデルは5メガピクセル)。写真、ビデオ、あるいはカメラを使うVRやスマートホームアプリに携わるのであればこれは重要だ。

新しい画像処理チップのおかげで、バースト撮影(毎秒10枚撮影するモード)やスローモーション録画(120fps)、手振れ防止などのiPhoneにもあるいくつかの機能が搭載された。

機能強化されたモーショントラッキング

三軸ジャイロや加速度計に加え、M8モーションコプロセッサが搭載された。

これはアップルが力を注いでいるヘルス&フィットネストラッキングに必要なものだ。旧モデルのiPod Touchでもヘルスアプリは動かせるが、単体でのモーショントラッキングは行えず、HealthKitソフトウェアが動作する外部のトラッカーが必要だった。これまではモーションコプロセッサに関わる機能を試したいのであれば、iPhone 5S/6が必要だったのだ。

改良された無線接続

あらゆるデバイスがネットワーク接続されるようになり、モバイルワイヤレス技術はより重要なものになっている。しかしこれまでiPod TouchにはLTEどころか3G接続のサポートすらなかった(これがサポートされたとしたら、それはそのままiPhoneではないか)。逆にいえば、iPod TouchにとってWi-FiおよびBluetooth機能は絶対に必要なものだということだ。

残念なことに旧モデルのコネクティビティの問題で悩む開発者は存在する。今になってAppleは802.11acをサポートした。この規格はまだ普及したとはいえないが、いずれは802.11b/g/nといった規格のみをサポートする古いルーターは後進に道を譲ることだろう。Appleによれば、このアップデートでiPodのWi-Fi接続は3倍速くなるという。

Bluetooth バージョン4.1もサポートされる これにより電力効率は上がり、ペアリングの信頼性も向上するという。

新型のiPod TouchはAppleが初めてver4.1のBluetoothをサポートするガジェットでもある。(iPhone6でも4.0どまりだ)もしHomeKit frameworkやiBeacon、CarPlayやApple WatchなどのBluetoothに絡んだアプリ作りに携わっているのであればエキサイティングと思えるだろう。

選択肢に128GBモデルが加わった

iPod Touchの物理的なサイズは大きくなっていないが、内部的には大きくなっており、17GB(199ドル)、32GB(249ドル)、64GB(299ドル)に加えて128GB(399ドル)モデルが選択肢に加わった。多くのデータを保持する様なアプリにとってはありがたい話だ。

iPodで未だに変わっていない点

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これらの変更はiPod Touchを大きく改善するものだ。しかし全てが完璧というわけではない。最新モデルでもいくつかの重要な機能が欠けており、それらのいくつかは開発者にとってますます大きな問題になるものだ。

スクリーンに変更無し

新しいiPod Touchでも画面は先代と同じ4インチ Retinaディスプレイで、解像度は1136×640だ。これはiPhone5/5Sと同じ解像度に当たる。

アップルのモバイルデバイスは現在5種類のディスプレイサイズで提供されている。iPod Touchの4インチ、iPhoneの4.7および5.5インチ、iPadの9.7インチだ。iPad Proの噂が本当なら、秋には更にもう一種類加わることになる。

開発者達がこれらのディスプレイサイズに対応するためにアップルも対策を講じている。オートレイアウトとインターフェイスビルダーはパワフルなツールだ。しかしこれらは万能の解決策ではない。古いiOSをサポートする必要があったり、インターフェイスの要素を大きくしなければいけないときなどはなおさらだ。

小さいスクリーンは場合によって利点にも欠点にもなりえる。古いiPhoneをサポートするためのシミュレータともなりえるが、それ単体ではテスト用のデバイスに過ぎなくなる線もありえる。

Apple Payは使えない

iPadですら指紋センサーがついているが、iPod Touchには装備されていない。またNFCについても同様だ。つまりApple Payは使えないということだ。

NFCはインターネット接続を必要としないことから、理屈で言えばiPod Touchでもモバイルペイメントは使えるはずだ。しかしiPhone 6その他のApple Payに対応しているデバイスが装備しているセキュリティのためのハードが欠落している。iPod Touchはeコマースアプリのテストに最適なデバイスだというのに非常に残念なことだ。

GPSも使えない

iPod Touchでは、アプリがロケーションのデータを取得するためにはWi-FiもしくはBluetoothに頼らざるを得ない。これら両者に改良が加えられているのはいいことだが、未だにセルラーベースのGPSの代わりになるものはない。

全ての開発者にとってこのことが課題とはならないだろう。アップルのロケーションサービスは、アプリが普通に場所を特定するには十分良くできている。しかしより正確な場所を必要とする場合は困ることになるだろう。

バイブ機能もない

次のiPhoneがForce Touchをサポートするのではないかと噂されている。Apple Watchで導入されたバイブレーションによるレスポンスを返す機能だ。Apple Watchからすぐ後に、MacBooksでもサポートされた。

iPod Touchはこの対象からは外れてしまったようだ。iFixitの分解調査によれば、振動のためのハードウェアが含まれていないという。

Force TouchがiPhoneに何をもたらすのかは明らかではなく、この機能のテストが行えないことはまだ大きな問題ではない。しかしこの機能を使ったゲームやその他のアプリを作ることを考えているのであればまだ先のモデルを待たなければならない。

総括

今回のiPod Touchのアップデートはまさしく待ち望まれていたものに思える。スマートホームの開発を行っている人にとっては殊更で、Bluetoothサポートの改善はiPod Touchをよりよいテストデバイスにしている。しかし開発者が分かっておくべき最も大切な点は、このデバイスをどう感じるかについては、自分たちが手がけている事に大きく依存するということだ。

価格および性能面において、iPod Touchはある人にとって理想的なデバイスだ。しかしそうでない人たちにとって、iOSアプリのテストは引き続き機能面で完全なiPhoneで行われることになるだろう。

画像提供:Apple

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