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ええ、分かっていますとも。本当なら今はApple Payの奇跡を褒め讃えているはずなんです。だから本当に残念だ。

アップルの新しい決済サービスを実際に試してみたが、決済方法の再発明において見られる数々の失敗がApple Payにも存在する、という結論に辿り着いた。つまり消費者の抱える本当の問題の解決にはなっていないということなのだ。

問題その1: 初期設定

Apple Payを使うためには、まずiOS 8.1にアップグレードされたiPhone 6か6 Plusが必要だ。8.1への更新を避けたい理由はたくさんあるかも知れないが、Apple Payを使いたいなら選択の余地はない。

iPhone 6シリーズは、非接触決済に必要なNFC無線チップを内蔵している。旧世代のiPhoneは、来年発売のApple Watchと組み合わせる事で決済が可能になる。現時点では、「6」か「使えない」か、だ。

6があるならば、Apple Payの設定プロセスとクレジットカードをPassbookアプリ経由で登録する事自体は比較的簡単だ。私の持っているカードのうち一枚はすでにiTunesに登録されている。もう一枚もiPhoneのカメラを使って登録できた。しかし、ビジネス用のクレジットカードを登録しようとした時には上手くいかなかった。どうやらある種のカードは、Apple PayをサポートしているとEメール攻撃やTwitter広告で高らかに喧伝している銀行のものだったとしても、まだこのサービスに対応しきれていないようだ。

どちらのケースにおいても、Apple Payが表示したPassbook内のカード画像は間違っていた。最初に私のカードをスキャンして登録したはずなのに、全くおかしな話だ。これは恐らく銀行側の不手際だろう。一目でどのカードを使っているか分かるようにするための画像なのだから、これでは紛らわしいとしか言い様がない。

問題その2: 店舗の検索

では、Apple Payを使うにはどこに行けば良いのか?良い質問だ。アップルは、マクドナルドやウォルグリーンといった親しみある名前を含む20万以上の店舗で使用可能だと言っていた。だが、アップルの提携社リストを暗記する事以外に、どうやったらApple Payを受けつける店を見つける事ができるのだろうか?

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アップルは非接触決済のロゴかApple Payのロゴを探すように推奨している。電波をモチーフにしたロゴはいくつかの場所で見た覚えはあるが、少なくともサンフランシスコで我々が見て回った店舗では、Apple Payのロゴは確認できなかった。決済処理装置を利用している店舗がその装置と看板を新しくするには、かなり時間がかかりそうだ。

それまでは、どうやら勘に頼ることになる。Boy Genius Reportは賢いやり方を発見したようだ。MasterCard Nearbyアプリにある非接触決済のディレクトリを使って店舗を探すのだ(こういった場所は一般的にVisaやAmerican Expressも受けつけてくれる)。

一方、PayPalはモバイル決済を受けつける近隣店舗のディレクトリを表示してくれる(Squareも、かつて今は無きWalletアプリでそうする事ができた)。

アップルがその類いのアプリを持たないのは馬鹿げている。なぜApple Pay使用可能店舗の検索機能をApple Mapsのオプションや、Spotlight検索に組み込まないのか?

問題その3: 店舗の対応

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私の経験からすると、研修は店毎に大きく違うものになる。Apple Pay開始前に、私は地元のウォルグリーンのレジ係にそれについて聞いた事があるか尋ねてみた。彼女は知らなかった。月曜、開始の日に、また別のレジ係にApple Payを使えるか尋ねてみたところ、にべもなく「無理です」と答えた。彼の同僚が訂正したが。

マクドナルドではレジ係はApple Payを認知していたが、特に興味を示すわけでもなかった。

パネラ・ブレッドでの体験は全く異なるものだった。レジ係はApple Payを知っていて滔々とそれについて語り、今朝着いたばかりというターミナルを見せてくれた。彼はプロセスを一通り私に案内してくれて、指をTouch IDボタンにおいたまま装置に触れなければならないと説明してくれた。

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近所のスターバックスでも、バリスタにApple Payについて質問してみた。彼は聞いた事が無く、スターバックスでは取り扱えないとはっきり答えた。彼は正しい。アップルCEOのティム・クックが先週のイベントでスターバックスのロゴをスクリーンにチラリと見せたにも関わらず、スターバックス店舗での決済にApple Payは使えない。オンラインでの取引のみ使用可能予定なのだ。そして、それさえもまだ実現されてはいない。

問題その4: 従来のカード決済と変わらない

Apple Payの現実とはこれだ。電話を持って出る。指を押し当てる。タップする。電話の通知を待つ。紙のレシートをもらう。

結局、カードを取り出し、機械に通して、紙のレシートをもらうという、以前までのやり方より手軽とは言えないのだ。

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署名について触れなかった事にお気づきだろう。$50以下のほとんどの取引において、VisaMasterCardも署名を必要としないプログラムがあるのだ。会計待ちの行列をスピードアップさせるし、リスクも低いので銀行も店側も不正の心配をしないのだ。Apple Payに登録している大規模小売業社のほとんど、特に食品サービスにおいては、既にそのプログラムが使用されている。

私はこの現実がレジ待ちの列に反映されているのをウォルグリーンとマクドナルド、それにパネラで目の当たりにした。Apple Payを使っているのは私ただ一人だった。私がiPhoneで何をしているか、特に興味を持った人もいなかった。結局のところ、私は買い物をしていただけなのだ。

そして、それこそがApple Payの大問題なのだ。クレジットカードを機械に通すよりも格段に速い、というわけではないのだ。報酬や節約が付いてくるわけでもない。同じカードを使っているはずなのだが。

ひどいことに、ごく単純な事すらも期待に答えてくれない。ウォルグリーンとパネラで、各社のポイントサービスのために電話番号を教えなければいけなかったのだ。私はウォルグリーンのBalance Rewardsサービス用にPassbookカードを持っている。だがそれはApple Payと連動されていない。そして、レジ係に私の電話をスキャンしてもらうよりも、ターミナルに自分の電話番号を打ち込む方がはるかに速かったのだ(ウォルグリーンのスキャナーは、反射するiPhone画面からバーコードを読み取るのが難しいようだった)。

私のカードが安全だという安心感が得られたのは確かだ。クレジットカードの情報漏洩のニュースが毎月のように一面を飾っている中、ターゲットやホーム・ディポ(あるいはステイプルズも)のような、対策が脆弱と思われる店舗では、その理由だけでもApple Payを使おうと思える。だが「恐れ」が動機、というのはなんとも情けない事だ。

1年後にはApple Payを使うべき大きな理由が発生するだろう。ライアビリティーシフト(債務責任の移行)だ。2015年10月から、銀行は店側に、不正取引のリスクを負いたくなければ、スワイプ式のクレジットカードの受付を止めるように義務づける予定だ。代わりに、われわれはチップの入った新しく支給されるカードか、Apple Payのような新しいシステムを使わなければならない。

チップ入りのカードの問題は、その処理の遅さだ。スワイプ式より明らかに遅いのだ。だがほとんどの小売店でスワイプ式は使えなくなる。人々が新しいシステムに慣れるまで、レジでは混沌が繰り広げられるだろう。だからこそ来年は人々がApple Payを試してみるにはとても良い時期と言える。

Apple Payはアプリ内で購入を行うための別のサービスを備えている。デベロッパがアプリを書き直す必要があるので、普及に時間がかかるにしても、かなり興味深い。

これからの12ヶ月、アップルは欠陥を修正し、より広告を徹底し、店舗検索のツールを作り、店側にスタッフの研修をさせ、クーポンや割引、ポイントサービス等を付加する時間がある。

だが今現在、Apple Payをわざわざ使う理由は無いと言えるだろう。

画像提供:
Owen Thomas画像: Adriana Lee
Apple Pay画像:McDonald’s

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