江南スタイルや、ブリトーを食べる動物の人気動画だけがYouTubeの全てではないように、オンライン動画コンベンション、6月26日からカリフォルニア州アナハイムで開催された「VidCon」はYouTube関連コンテンツの一大イベントという枠だけでは捉えきれない。それは2つの性格を持つ。

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まず、VidConは熱烈なYoutubeファンの集まりであると言える。彼らはYoutubeのミュージシャンやコメディアン、ゲーム解説者に美のカリスマといった人々の熱心な信者なのだ。彼らは皆、自由なメディアというYouTubeの理念を信奉し、お気に入りのユーチューバ―を祀る祭壇まで作って「私と気が合う!」なんて思ったりするのだ。

もう一方で、VidConはクリエイター、広告主、YouTubeの重役たちの商談会場でもある。

彼らが共存の為に四苦八苦しているのは想像に難くない。筆者はVidConで数日間の取材を行った。拡大の一途を辿るオンライン動画の世界における、ビジネス、アート、ファンの関わりについて、最新のレポートをお届けしたい。

動画を作り、広告を届ける

VidCon2014のメインテーマは、驚くなかれ!広告戦略である。そこでは例えば、「視聴者から利益を得る方法」「2014年のブランドコンテンツ」「メインストリームへの移行」等と題された公開討論会が設けられている。

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YouTube上でのビジネス行為というのは目新しい発想ではない。YouTubeの黎明期に始まったパートナープログラムは、人気クリエイターが視聴数をもとに利益を得る仕組みを提供していた。

やがて、YouTubeは本腰を据えてネット・セレブの発掘に乗り出した。美容、食べ物、音楽といった特定のカテゴリを作り出し、各カテゴリには大金を稼ぎ出すスターが登場した。YouTubeの人気クリエイターは、彼ら自身のメディア会社、あるいはマルチチャンネル・ネットワークによるマネジメントを介して、企業や広告主との関係を深めていった。

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こういった状況を踏まえると、グーグルの16番目の従業員で広告宣伝部門の副代表だったスーザン・ウォイッキが、今年2月にYouTubeの指揮を執ることになったのは自然な流れだった。もう既に彼女のらつ腕は振るわれているようで、YouTubeのスター達を主要メディアに送り込む大規模キャンペーンが行われている。

クリエイターの動画は、ヴァージン・アメリカの機内で鑑賞できるようになり、大手化粧品会社と提携し、更には関連のアパレル商品まで登場している。筆者は最近仕事場近くにある、クリエイターをクローズアップしたYouTubeの看板広告について記事を書いたが、それはYouTubeの大規模オフライン広告戦略の氷山の一角にすぎない。

こういったキャンペーンは直接的かつ野心的で、非常に分かりやすい戦略だと言える。要するに、ハリウッドの黎明期に映画制作会社がお抱えのスターを売り出した戦略と何ら違いはないのだ。

しかしこの戦略は、YouTubeが特別な存在たりえた重要な要因をないがしろにしている。その狂信的で、非常に熱心なファン層を。

ファンにとってのVidCon

驚くほどの大人気チャンネル「vlogbrothers」の一人(弟)で、VidConの共同出資者でもあるハンク・グリーンは、イベント参加者に人気クリエイターへの接し方を説明したビデオを投稿した。

グリーンは、人気クリエイターが押し掛ける信者の群れに飲み込まれずにVidCon会場を歩くのがいかに難しいかを、この上なく見事に説明している。要するにこれは、崇拝しているユーチューバ―にストーキングやハラスメントを行わないよう呼びかける、お願いの動画なのだ。

グリーンは動画で、会場にはクリエイターがサイン会をするための専用ホールが設けられ、イベントスタッフはファンが行列で8時間(?!)以上待つことが無いよう最善を尽くすと述べていた。

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事情を知らない人の目には、こういった「オンラインセレブ」を取り巻く状況は大袈裟に映るかもしれない。しかし勝手知ったる者にとってこれは、YouTubeスターの日常風景でしかない。

警備やファン、そしてYouTubeセレブとファンの間に横たわる明白な格差が混在する光景は、一般の人の目にはハリウッドのレッドカーペットのように感じられるかもしれない。しかしYouTubeファンにとって、これはそれ以上のものだ。これは、お気に入りのオンラインセレブ達が一堂に会する夢の2日間なのだ。

こういった類のエネルギーや情熱は、他のビデオ配信プラットフォームでは見られないものであり、それが故に大きな問題が発生する。果たして大衆の「新しいメディア」と言って憚らないYouTubeは、ファンを裏切ってまでメインストリームに進出しても生き残れるのだろうか。

かつての私にとってのYouTube

数年前までYouTubeクリエイター達を信仰し、秘密の祭壇まで隠して持っていた筆者にとって、これは身近な問題でもある。実はかつて、YouTubeでお気に入りのクリエイターやミュージシャン、vlog投稿者をフォローすることこそが人生そのものだった時期があるのだ。YouTubeは私の映画で、テレビで、ハリウッドだった。

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その当時は、「返信動画」という他の動画に対してコメントを行う動画が流行していて、何千もの視聴数を誇っていた。当時、無名のクリエイターのビデオがトップページに登場し、新しいキャリアが幕を開けるといったことがあり得た。それはmememolly thewinekoneのようなvlog投稿者が画質の粗いウェブカメラを使って話す10分程度の動画を投稿していた時代だった。今でも彼らはYouTubeチャンネル登録者数で上位につけている。

それは2006年当時のことで、もちろん長くは続かなかった。

その後ビジネスや代理人、ショービズ界や宣伝キャンペーンの影響によって少しずつ、しかし確かにクリエイターと視聴者の間の溝は広がっていった。数年間オンライン動画の世界にどっぷりと浸かっていた私は、YouTubeとの間に距離を置いた。私の知っている、愛してやまなかった個人の自由な活動はもうどこにも無いように思えた。

YouTubeが抱えるリスク

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最近のYouTubeは、ファンとビジネスの両極の間でどっちつかずのまま彷徨い続けるリスクを犯している。一方では、商業化の拡大に伴って熱心な視聴者が離れていき、もう一方では、クリエイター達がYouTubeによる支払いに不満を抱きつつあるように見える。

ヤフーがYouTubeの競合サービスの開始を計画しているという噂から察するに、ヤフーは個々人のクリエイターやそのネットワークに踏み込んで、より良い条件の広告や金銭の提供を申し出ていると思われる。そのサービスの成功を疑う理由は十分にあるが、それでもヤフーがYouTubeから新進気鋭のスターを好条件で引き抜く可能性は十分にある。その場合YouTubeは商業化を更に推し進めると思われるが、それはファンとの距離を更に広げてしまいかねない。

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このジレンマは目新しいものではない。それは成長過程のエンターテインメント業やメディアビジネスが、既存の視聴者を失う代わりに広大な市場に進出する際に必ず直面するものだ。そしてそれはまた、多くの企業が簡単には解決できない課題でもあるのだ。

画像提供:Gage Skidmore(Flickrより)、Genevieve(Flickrより)、NewMediaRockstars

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