グーグルが切り開く自動運転自動車の未来とは
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グーグルは、ハンドルやアクセル、ブレーキなど人間が自動車を運転するために必要となる面倒なメカニズムが無い、自動運転自動車のプロトタイプを100台生産すると発表した。いよいよである。

今の自動車には多くの問題がある。1トンを超える機械を運転する人々は非常に危険で予測不能だ。2012年に米国だけで34,000人もの交通事故による死亡が報告されている。せっかく車を買ってもそれを全く使わない人も少なくない。

であれば、人々が自分で車を運転せず、あるいは所有すらしない未来の世界はどのようなものだろう?私はこれについてずっと考えてきた。私の考える未来のドライブにお付き合いいただきたい。未来の世界ではシートベルトを締める必要もなくなっているはずだ。

車庫から車がなくなる

2030年には、私の家の車庫には自転車ぐらいしか置いていないだろう。あるいはベッドルームかAirBnB(世界最大手の空き部屋シェアサイト)のレンタル部屋になっているかもしれない。同様に家の前にも自動車は置いていないだろう。なぜなら、自動車を自分で所有する必要がないのだ。近隣の人々と自動車を共有し、1日のうちで本当に必要な時だけしかそれを使わないのだ。

さらに極端なことに、私は自分で自動車を運転しない。自動車レースでの運転をハイリスクな趣味とする人以外、誰も自動車を自分では運転しない時代なのだ。自動運転自動車が人間の運転が必要な自動車に完全に取って代わり、結果的に米国内だけでも年間で何十万もの命が救われることになる。自動運転を可能とするソフトウェアやハードウェアのコストも、2014年現在のおよそ20万ドルから数千ドルぐらいまで下がる。運転手の過失による、飲酒運転や歩行者を巻き込む交通事故は、重大な社会問題ではなくなっているだろう。

移動のために何時間も運転して時間を無駄にする代わりに、私は移動時間に読書を楽しんだり、記事を書いたり、映画を見たり、友達や家族とビデオチャットを楽しんだりしているだろう。私は、ウェアラブルなメガネ型デバイスへの音声入力やスマートフォンの操作から自動運転自動車を呼び出すことができる。同様に私の息子は、自分の子供達を車に乗せて学校やスポーツ、友達との遊び場へと送り届ける。自動運転自動車は宅配サービスにもシームレスに統合でき、荷物の集荷や配達は日夜時間を問わずに行うことが可能となる(配達そのものは夕方に集中するかもしれない)。

私が今まで自動車に使っていた資金は、他の買い物に使うか、アメリカ人の苦手な貯金に回すことだって出来るだろう。またこの輸送サービスであれば、経済的な状況を問わず国民の誰もが利用できるはずだ。低所得者の自動車保険に補助金を交付するのではなく、米国政府はこの自動車サービスに助成金を支給することになるだろう。ウォール街関係者は、皮肉にも今の特権を失うことになるだろう。

自動車が電車にかわる

自動運転自動車は、公共交通手段としての利用も高まるだろう。地下鉄利用者達は、もはや駐車場を探す必要もなく、駐車料金を払う必要もない。駐車場の中で駐車スペースを探し回るようなこともなくなるのだ。移動時間は結果的に早く、A地点からB地点への移動コストも安くなるだろう。全体として、私たちは毎日の生活における、貴重な時間とお金を節約できるようになるのだ。

社会的なレベルでは、自動運転自動車によって市街の交通はおよそ1/3程度に軽減され、現在駐車場として占有されている都市部における莫大な不動産を解放するだろう。都市で新たに建設されるビルの場合、駐車場が不要となるため一平方フィートあたり20%も多くの人々が収容可能になる。

交通量が減ることで道路への負担も減ることになる。警察はもはや交通違反とスピード違反の取り締まりに時間と労力を取られることがなくなる。交通裁判所は無くなるだろう。住宅街では特定の時間の交通規制を自主的に定めることで、子供達はこの時間に自由に自転車に乗ったり、ボールで遊んだりすることができる。

自動車やトラックにとって、こういった交通規制はほとんど問題にはならない。グーグルやマイクロソフト、米国政府によって提供されるGPSナビゲーション・システムは常に最新の情報に更新され、数秒おきに交通状況を更新し常に最適なルートを教えてくれる。

自動車のバッテリー価格が下がることで、今の古い内燃エンジンは経済的に存続できなくなり、自動車メーカーはこれを搭載しなくなっていく。さらにこれによって炭素放出も削減される。高速道路の近くの都市の喘息患者も、劇的に少なくなるだろう。毎年の医療費も何十億ドルが節約でき、何百万ものアメリカ人低所得者の生活と医療保険費が改善できるだろう。

ガスと石油を輸送するパイプラインはその役割を失い廃業することになる。電気の送電は、より簡単で安くて環境にも優しい。パイプラインや石油タンカーが起こす流出事故なども無くなるだろう。燃料が格納されるガソリン・スタンドや、石油タンク集合地域などの場所は、もはや中核都市の近くに必要ではなくなる。これは、さらに有毒廃棄物処理場の数を減らし、空気品質を改善し、さらには必要とされる不動産を解放してくれることになる。

悪い面も存在する

以上が良い面だ。産業革命がちっぽけに見えるほどの、自動運転自動車による破壊的で大規模な変化には、悪い面も存在する。自動車と自動車輸送を本当に共有する経済の出現は、自動車の需要をピーク時の半分へと縮小させる。これはクラウド・コンピューティングが、コンピューティング・ハードウェアやIT設備の購入に打撃を与えているのに近いものがある。

残念ながら、自動車需要の縮小は大手自動車メーカーを破産させ、大量の失業者を生み出すだろう。生き残った自動車メーカーやトラックメーカーは、労働力を10分の1にして、ほぼ完全なオートメーション工場へと変わるだろう。

自動車やトラックに依存している米国の経済における巨大な事業者たちは、大規模な統合を余儀なくされる。独立した自動車修理工場は消えるだろう。また、洗車場や板金工場、その他の多くの自動車関連の2次産業も同じ運命をたどるだろう。この時代の自動車メンテナンスは大規模な工場のような場所で集中的に行われ、人間が機械をモニターしてすべての作業が行われ、人間が車に触れることはないだろう。

現在数十億ドルの規模を持つアフターマーケットの自動車部品セグメントは、自動車製造業者以上の打撃を受けるだろう。自動車オーナーが顧客の中心であるこの産業は、もし誰も自動車を所有しなくなれば、無意味な存在となってしまう(自動運転自動車を運営する事業者は顧客として残るだろう)。

空港は駐車場の収入のすべてを失い、それを埋めるためのほかの手段が必要となる。UPSやFederal Expressなどのの配送業者は、自動車メーカーやグーグルなどとの競合を強いられるだろう。自動車メーカーは、共有自動運転自動車のシステム上での、第三者による荷物の運搬業務の展開を認めるだろう。一方グーグルは地図データと膨大な運送データを利用して、Androidデバイスと連携した、FedExやUPSにも競合できる地域や都市ベースの配送サービスを可能にするかもしれない。

誰もが車に乗れる時代では、需要に合わせて料金が変化するのが普通になる。例えば週末や祝日に都市部へ向かおうとすると料金はかなり高額になるかもしれない。政府に資金提供された海外のハッカー達が、この移動インフラのハッキングを常に狙ってくるだろう。車両のネットワーク全体の停止や、人を乗せた車両の遠隔操作によるハイジャックなども可能かもしれない。

未来の車には広告が入る。割引料金のために我々が視聴に同意すると、ボタン一つでドーナツ店や映画館に寄り道することになる広告が再生される。

資源をめぐる争いも、これまでの石油や天然ガスの埋蔵量に依存したものから、新しいタイプの永続的なバッテリーに必要なレアメタルへとシフトするはずだ。例えば、アンデス山脈のようにリチウムが豊富に見つかる場所が新たな中東となり、この非常に貴重な天然資源の政治的支配を巡るグローバルな覇権争いも生れるだろう。

どんな未来予測も、その信憑性は定かではない。私の予測にも多くの点で間違いがあるだろう。しかしこの未来像が、今週のグーグルの発表によって、また一歩現実に近いづいたことは確かだ。

編集部注:この記事は、ゲストライターのAlex Salkever氏(Silk.coのプロダクト・マーケティングおよび事業開発の責任者)によって執筆されました。この記事は彼のTumblrに最初に掲載されました。

トップ画像提供:Google

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