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この数日はHP(ヒューレット・パッカード)にとって厳しいものだった。この巨大テクノロジー企業の決算発表は市場の予想を下回り、11,000~16,000人の従業員削減の予定が発表された。残念ながら、業績の伸び悩みに苦しんでいるのはHPだけではない。オラクルの業績もここ数年市場の予想を下回ることが多く、最近の第3四半期も例外ではなかった。IBMも、なんとか利益が出てはいるが、またもや目標を下回る結果だった。

古参のIT企業は明らかに苦しんでいる。だが、テクノロジーの革新が今も続いているのは間違いない。ただ、新しいテクノロジーは過去のテクノロジー・ビジネスの基盤とは異なる方法で開発され展開しているのだ。

今のソフトウェアはライセンス駆動ではない

私の言いたいことを理解してもらうために、最近のこのウォールストリートジャーナルを見てほしい。

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HPの厳しい見通しが大きく報じられている一方、その右上端には次世代の「テクノロジー企業」がいかに好調であるかの記事が並んでいる。

記事に取り上げられている企業の一つ、Uberは現在5億ドルの追加増資を進めており、その場合の時価総額は120億ドルとなる。同社はテクノロジー企業ではないかもしれないが、正式な社名は「Uber Technologies Inc.」だ。Uberは、空車のハイヤーと乗客をマッチングする配車サービスを提供している。たしかにこのサービスはNode.jsやPython、その他のオープンソース・ソフトウェアから成り立っている。しかしUberは、すくなくともHPやSAPなどの一般的なテクノロジー企業と同列では分類されないだろう。

というのもUberはテクノロジーを販売している訳ではなく、テクノロジーを基盤としたサービスを提供しているからだ。

同じことが、グーグル(広告)、フェイスブック(ソーシャルネットワーク)、アマゾン(全方位的なサービス)、Netflix(エンタテイメント)やその他の多くの企業にあてはまる。テクノロジーに極度に依存しているが自分自身は「テクノロジー企業」ではないというこのトレンドは3年前、マーク・アンドリーセンによって「ソフトウェアが世界を征服する(Software is eating the world)」という言葉で見事に言い表されている。

アンドリーセンは以下のようにも書いている。

映画、農業、国防にいたるまで、ますます多くの主要な事業や産業がソフトウェアによって成り立つようになっていく。勝利者となっているのは大抵、既存の産業構造に侵入してそれをひっくり返しているシリコンバレー・スタイルの企業家型テクノロジー企業だ。この先10年間で、さらに多くの産業がソフトウェアによって崩壊するだろう。そのソフトウェアを作り出すのは間違いなく最先端のシリコンバレー企業だ。

いずれUberはHPよりも大きい見出しで取り上げられる存在になるだろう。なぜならテクノロジーによって実現されるサービスこそ、面倒なライセンス戦略や高額な保守契約にあまりにも長く依存してきた産業の新たな標準となるからだ。

ソフトウェア開発企業にチャンスは残されているか?

ソフトウェア開発企業に未来はあるのだろうか?ほぼ、無いだろう。一部の大企業向けの、ファイヤーウォールに守られたデータ・センターにインストールされて実行されるソフトウェアの開発業務は残るかもしれない。しかし、こういった大企業ですらそのほとんどが、異常に高額なライセンス費用や保守費用、巨額な値引きとコスト競争が当たり前となった今の企業向けの販売モデルを好んではいない。

そこで今、新たなタイプのソフトウェア・ベンダーが頭角を現している。

インフラストラクチャーとアプリケーションの両面で、より多くのソフトウェアが「サービスとしてのソフトウェア(SaaS: Software-as-a-Service)」のビジネスモデルにシフトしている。Amazon Web ServicesやSalesforce.comなどだ。また、成功する企業の中にはRed Hatのような新しいビジネスモデルの企業も存在する。Red HatはLinux、JBossミドルウェア、その他の関連サービスの販売で、今や毎年10億ドル以上の売上を得ている。だがRed Hatはかつて一度も、ソフトウェアを販売したことがない。

RedHatはすべてのソフトウェアをオープンソース・ライセンスの元で無償提供している。彼らの資金源はソフトウェアのアップデート・サービス(Red Hat Network)で、このサービスではソフトウェアのパッチや更新による維持と、ソフトウェアと共に実行される多くの第三者ソフトウェアの継続的な認証などが行われる。ビッグデータ・ムーブメントの流れに乗ってClouderaやHortonworksなどのベンダーは大規模化し、これまでの大手開発企業と本格的に競合し始めている。

しかし彼らよりも、さらに大きな勝利者が他にいる。

すべての企業がテクノロジー企業になる

Cowen & Co. のアナリスト、ピーター・ゴールドマーカーの指摘によれば、最終的にソフトウェアによって最も利益を得るのは、ソフトウェアを販売する者ではなく、オープンソースを利用してSaaSを販売する者でもない。ビッグデータの世界における最大の勝利者は、ソフトウェアを利用してそのデータから価値を生み出すことができる、技術的なスキルを持った企業である、と彼は主張している。

これはUberの場合だと、「クレイジーな数学と科学」を使って運転手と客を繋ぎ、ピックアップの時間を正確に予測するスキルに当たる。老舗の百貨店シアーズの場合は、最新のHadoopを利用してパーソナライズされたクーポンや付随的な他のマーケティングを顧客に提供して売り上げを伸ばすことだ。その他の企業にとっても、その基盤を作るテクノロジーの大半はオープンソースになるはずだ。今月の初めに開かれたOpen Business Conferenceのキーノートにおいて、ゾハル・メラメドがその理由を説明している:

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我々はOSS(オープンソース・ソフトウェア)を選び続ける
・本格的な投資を行う前に何年かテスト稼働を行える
・採用の際、初期投資が必要ない
・急な技術的変化に対応できる
・自らの将来を自分で決められる

どれも、現在君臨しているテクノロジー企業にとっては耳が痛い話だろう。しかしソフトウェア業界の未来にとってはいい話だ。オープンソースのソフトウェアを利用する企業は、ますます多岐に渡り、より影響力を増していくだろう。ソフトウェアを作る企業に代わって、ソフトウェアの価値を見出す企業の時代がやってくるのだ。

トップ画像提供:Ken Funakoshi(Flickrより), CC 2.0

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