10 億ドルの企業評価で従業員の幸せは手に入るか?
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ビートルズによれば、お金で愛は買えない。聖書によれば、お金への執着は諸悪の根源だ。しかし Glassdoor(※) によれば、10 億ドル規模の会社は相当な数の従業員の幸せを買うことができるようだ。

※従業員が自分の職場やCEOを評価するサービス

ウォールストリートジャーナルの「10 億ドル規模のスタートアップ・クラブ」に目を通せば、従業員は自分が勤める会社の価値が高いほど、あるいは会社の志が高いほど、経営者をより高く評価する傾向にあることがわかる。

幸せを買うということ

アメリカに基盤を置く 26 社の10 億ドル規模の技術系スタートアップでは、従業員の満足度は最大 5 ポイント中、平均値の 3.9 ポイントあたりから急カーブで上昇する。ウォールストリートジャーナルのリスト中ナンバーワンに輝いたのは Dropbox で、4.6 ポイントの従業員満足度を獲得している。CEO のドリュー・ヒューストンを評価した人全員が彼に満足しており、92% の人が Dropbox を友人に勧めたいと回答している。

元従業員によれば、Dropbox には「素晴らしい学習の機会、素晴らしい文化、素晴らしい人々」があり、「ここで過ごした時間にこれ以上望むものはなかった」と述べている。

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同じく 10 億ドル規模の技術系スタートアップである Uber は、時代遅れのタクシーサービスにうんざりした世代のための個人運転手サービスだ。Uber の評価は 4.7 ポイントと高く、Grassdoor に投稿した従業員全員が CEO のトラビス・カラニックに満足しており、会社を友人に勧めたいとしている。なぜだろうか? どうやら、Uber では「仕事を仕事と感じない」ようなのだ。

同じことが Box にも当てはまる。Boxは、企業のコンテンツ共同制作の概念を変える会社だ。CEO のアーロン・レヴィは 91% の満足度を得ており、80% の従業員が会社を友人に勧めたいとしている。彼らは「成長に向けた驚くべき機会」を会社が提供してくれると強調している。

そして Pure Storage は何と、5ポイント中5ポイントを獲得している。

全てのスタートアップで評価が高いわけではない

産業界で際立って裕福なスタートアップ達がすべてバラ色というわけではない。例えば Palantir の評価は 3.6 ポイントで、従業員はワークライフバランスを「ひどい」と評価している。確かに会社は「『無期限の休暇』を提供している」が、「休みを取るのは非常に難しい」のだそうだ。

イーロン・マスクが CEO を務める宇宙探査のスタートアップ SpaceX も同様で、その評価は 3.5 ポイントである。85% がマスクに満足している一方で、SpaceX を友人に紹介したいという人は 68% しかいない。やはり劣悪なワークライフバランスが原因だ。SpaceX は従業員に対する福利厚生として「無料のフローズンヨーグルトやソーダ」だけではなく「史上初のロケット工場へのアクセス権」を提供しているのだが、それでもどうやら「非人道的な時すらある常態化した長時間労働」や「ソーシャルライフの時間がとれない」といった不満を埋め合わせることはできていないようだ。

世界を偵察したり(Palantir)地球を離れたり(SpaceX)することはおそらく、プライベートな時間を犠牲にするほど重大なミッションではないのだろう。

裕福な従来型の企業はどうしているのか?

大企業の場合では、同程度の母数から評価の平均値をとってみると 5 ポイント中 3.4 ポイントとなる。しかし大企業でも、その大志によって従業員を鼓舞することができれば際立った評価を得ることが可能だ。

アップルは一番お金を持っている。プロダクト・リーダーとしてのアップルの目覚ましい業績に対抗できる企業はほとんどない。では Glassdoor における従業員の評価はどうかというと、3.9ポイントとなっている。アップルの CEO、ティム・クックは 93% の満足度を得ているが、アップルを友人に勧めたいという従業員は 81% と比較的少ない。アップルの主な問題は何なのだろうか?それはワークライフバランスの崩壊、そして転職の難しさだ。

正確な調査ではないとはいえ、アップルの評価は他の従来型企業と比べて大分低い。サムスン・モバイルの結果は3.3 ポイントと散々だったが、アップルもそれと大差ない。

  • IBM – 3.2。CEO バージニア・ロメッティの満足度は 67%。ワークライフバランスについては現旧の従業員から一番の評価を得たが、他の点では程々の結果だ。それでもなお、59% の従業員が IBM を友人にも勧めたいとしている(「在宅勤務や柔軟な勤務時間を実現できる管理体制が整っている」)。
  • HP – 3.0。CEO のメグ・ホイットマンは80%の満足度を得ているが、友人に勧めたいという従業員はわずか 47% と少ない。なぜだろうか?ワークライフバランスは好評だが、上級管理職の評価がとても低い。給与、キャリアチャンスなども同様だ(「会社が過度なリストラを行うせいで、上級管理職が頻繁に変わる」)。
  • オラクル – 3.3。いまでもデータベースの王者として君臨するオラクルは、他の企業よりも高い評価を得た。CEO のラリー・エリソンは 78% の満足度を得ており、65% がオラクルを友人にも勧めたいと回答した。ワークライフバランスが要因のひとつだ(「素晴らしいワークライフバランス(でももっと働きたければ、誰も止めはしない)」)。
  • Juniper Networks – 3.4。Juniper の CEO、シャイゴン・ヘラドピアに対する従業員の満足度は 100% と飛びぬけて高く、73% が Juniper を友人にも勧めたいとしている。要因の一端は素晴らしい給与だ(「給料はとてもいい」)。

従来型の企業から離れて最先端の技術系企業に戻ろう。グーグルの評価は 4.2 ポイントで、CEO ラリー・ペイジの満足度は95%、そして従業員の 90% が友人にも勧めたいとしている。ヤフーは最近では 3.4 ポイントと振るわず、従業員が上級管理職を批判しているが、それでも 84% の人が CEO マリッサ・メイヤーを愛している。ちなみに、従業員のひとりは次のように嘆いていた。「ここで共有するには(問題が)多すぎるが、一番重要なのは会社の方向性が見えないことだ」。

因果関係ではなく相互関係

この調査は、お金がすべてではないことを示している。10億ドル(あるいはそれ以上)の企業評価も結局は単に、会社が重要な仕事をしているという証しに過ぎない。

アップルとグーグルはもうスタートアップとは言えないが、産業を決定づける技術に携わっている。そしてその従業員たちは、業界をけん引する会社のために働くことと引き換えに、ワークライフバランスの欠如といった数多くの不満を、ある程度までは喜んで我慢しようとしている。

要するに従業員は、勝者のために働くことを願っているのだ。彼らは皆世界を変えたいと思っていて、それを実現していると思える経営者を高く評価しようとする。ウォールストリートやサンドヒルロードが会社を評価する過程も、結局はこれと似たようなものである。

それでも大抵の場合、従業員の仕事以外の生活を充実させることができなかった経営者は、会社の志とは関係なく低い評価を獲得してしまっているようだ。お金で幸せは買えないが、従業員の幸せは確実に会社の評価に反映されているのである。

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