ビッグデータはもはや企業だけのものではない

毎年この時期になると、ビッグデータ、データ蓄積、ビジネスインテリジェンス関連の話題で騒がしくなる。話題の多くは O’Reilly Strata として知られる、ビッグデータ愛好家によるイベントに関するものだ。

私にとって Strata は最も興味深いテクノロジー関連イベントの一つなので、先月参加できなかったことが残念でならない。ビッグデータは一時期人気のトピックであったが、今でも重要なトレンドであることに変わりはない。結局のところ、私たちは次々と入ってくる莫大なデータに埋もれてしまっている。この事態を何とかしなくてはならないようだ。

ビッグデータを手に入れたのは誰か?それは私たちだ!

「私たち」とは誰なのか?今年の Strata によるプレスリリースや発表に注目していれば、ビッグデータの本質を理解できる本当の顧客は企業だけだと思うかもしれない。もちろん、市場の変化にいち早く適応するために企業がビッグデータを利用するべきだという判断は、特に間違ってはいない。

しかしこの当たりさわりのない考えは最近、大企業だけがビッグデータの恩恵を受ける立場にあるという思想に変わってきているようだ。この思想は控えめに表現しても大間違いだと言わざるを得ない。

この問題における最も疑わしい容疑者は、IBM のデクスター・ヘンダーソンだ。ちょうど彼が InfoWorld に寄稿した記事がある。記事中ではレンガを積むような繊細さで事例が積み上げられており、見出しには「企業が行う分析には特別な高性能のハードウェアが必要だと考えている」と書かれている。

もちろん大抵の場合、ビッグデータの問題を解決するには汎用品ではないハードウェアが必要になるだろう。しかし、IBM がビッグデータ用にカスタマイズされたハードウェアを売り込むためにこの考えを広めているのは明らかだ。大容量のハードウェアを販売するためにビジネスの必要性を宣伝したいと思うのは当然だろう。問題なのは、その陰にビッグデータの恩恵を受けられるのは企業だけだという思想があることである。ヘンダーソン自身が明確にこう言っているわけではないが、IBM が販売するマシンを買えるのは企業だけなのだから、明らかにこの意味合いが含まれている。

Strata で他の企業が行った発表も、かなり企業利用向けに偏った内容だった。MapR も Hortonworks もその一例に過ぎない。

繰り返しになるが、ビッグデータが企業にとって有益であることに間違いはない。確かにそうだと思う。しかし、ビッグデータは企業だけのためのものではない。Apache Hadoop が汎用のハードウェアで実行でき、あらゆるデータベースやデータ処理に用いられる解析ツールに接続できることを考えれば、ビッグデータの利用を企業だけに限定するのは短絡的である。

スタートアップにも目を向けよ

ビッグデータは企業のためのものだという思想の最大の欠陥を裏付けるものは、Amazon Web サービス、Rackspace、Google といった公共のクラウドプロバイダーの存在だ。これらの企業はそれぞれの方法で、洗練されたコンピューティングとストレージインフラを利用できる「公共クラウド」サービスを提供している。このために、スモールビジネスや個人までもが迅速で安価なサービスを提供できるようになった。

こういった類の「手軽な IT」をバカにする人々もいる。しかしこれらのサービスが成功しているということは、「企業」には当てはまらない規模の会社や個人からのニーズが高いということを意味する。そして、初めはこのような規模でコンピューティングを行っていたとしても、彼らが(全員ではないにしても)やがてビッグデータの問題に行き当たる可能性は高い。

ビジネスモデルにビッグデータを組み入れる方法を見つけた、企業未満の規模の会社の例を探すのは簡単だ。

例えば Recorded Future は、一日あたり何百万ものオンライン文書を集めて、顧客にリアルタイムの傾向分析を提供している。CourseraedX は、無料公開のオンラインコースを集約したカタログを提供している。Vino Vono は主要な空港にあるワインバーのチェーン店で、顧客のポイントアプリ、店頭システム、ソーシャルメディアから入ってくるビッグデータを使って在庫リストやメニュー項目、顧客の感想などを把握している。

これらは特に珍しい例ではない。デンバー大学のアンドリュー・ユルバチェフスキーによれば、中小企業がビッグデータの利用を始めるという傾向はこれからも続くようだ。

ユルバチェフスキー氏は、ダニエルビジネスカレッジのウェブサイトに掲載された記事の中で、次の様に述べている。「利益を上げたりトレンドを追跡して成長するために『ビッグデータ』を利用するビジネスがますます増えています。これによって『ビッグデータ』はただの『データ』になるでしょう。つまり、膨大なデータセットは事業の成長を促進するための普通のデータとして扱われるようになり、日常の業務に完全に組み込まれるようになるということです」

小さな物をないがしろにしない

企業向けビジネスは業界から過度な注目を浴びている。これは企業が多いからではなく(実際多くはない)、企業に資金があるからだ。。確かに平均的なITベンダーにとって、一つの大企業の成績は中小企業何十社分もの売上に匹敵するかもしれない。低いところにぶらさがっている果実に群がるのは当然の心理だ。

しかし、決してこれらを除外するべきではないと主張したい。中小企業はビッグデータから利益を得やすい。データを蓄積、解析するための公共クラウドサービスに継続的な需要があることが、これをはっきりと証明している。

内情に通じているビジネスとITの管理者は、必要であれば会社の規模に関係なくビッグデータ・ツールを採用するだろう。しかし現在の市場の傾向が続くようであれば、十分な経験を持たないビジネスやITにおける意志決定者は、ビッグデータは自分たちには関係ないという間違った印象を持ってしまうかもしれない。

他のツールと同様、ビッグデータは万人向けのものではない。しかし、資金が有り余っているごく少数の選ばれた人だけのものでもないのだ。

画像提供:O’Reilly

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