ネットワーク容量を武器にアマゾンに立ち向かうグーグル

パブリック・クラウドを巡る争いはAmazonの勝利で幕を閉じたかのように見える。ガートナー・リサーチは同社のマジック・クアドラント(四分割表)で、AWS(Amazon Web Services)が他のクラウド・プロバイダーと総合的に比較して5倍のコンピューティング能力を提供していると強調している

このリードは決定的に思えるかもしれない。しかしこのガートナーの分析には、まだ一般公開されていなかったGoogle Cloudが含まれていないのだ。グーグルは他の競合たちとはひと味違う。アマゾンにはない武器を持っている。それは、あり得ないほどに高速なネットワーク容量だ。この武器の存在によって勝負の行方は分からなくなった。

AWSの勝利かと思いきや・・・?

AWSが愛される理由はたくさんある。独占的なベンダーにありがちな、利用価格の引き上げや技術革新の停滞などは全くみられない。それどころか逆に価格は下がり続けており、新しいサービスや機能もどんどん追加される。

一方で、AWSの競合たちは特に何もしてこなかった。ガートナーのアナリストであるリディア・レオンは次のように指摘する。「多くの競合たちは、クラウドを巡る競争へのリソースの投資を意欲的に行ってきませんでした。彼らはこの競争を、機能速度が物を言うソフトウェア・ビジネスであることを理解していなかったのです」

グーグルは違った。同社が提供する開発者主体のAPIの数はAWSよりもずっと多い。グーグルはアジャイル開発のことを良くわかっている。AWSの脆弱性はおそらく開発速度にはそれほど影響しないはずである。問題となるのはネットワークのスピードなのだ。

アマゾンの弱点を探せ

あらゆる競合は、開発者や顧客企業を獲得するために必死になってAWSの弱点を探している。セキュリティやパフォーマンスなどがやり玉にあげられてきたが、アマゾンの進撃は止まらなかった。

最近になってPivotalの幹部であるジェームズ・ウォーターは、パブリック・クラウドに対するアマゾンの宗教じみた献身的態度も、より柔軟なアプローチには敵わないのではないかと主張している。

 

今の段階だとAWSは完全に怪物だけど、技術の世界は変化するものだし、もしかしたらマルチクラウドが問題になるかもしれない。

ウォーターの意見はおそらく正しいだろう。企業の完全なパブリック・クラウド化を推し進めるようとすると、Pivotal/CloudFoundryのようなハイブリッド式アプローチに直面して失敗することがある。しかし理由はこれだけではない。

GigaOmのバーブ・ダローは「Google Cloudがアマゾンを脅かすために必要な8つの事」を挙げている。しかしこのリストからはある重要な差別化要因が抜けている。Cloudscalingのランディ・バイアスはこの要因を認識しているし、他の要因よりも重要なのではないかと思われる。それはネットワーク容量だ。

クラウドにおけるドラッグレース

バイアスが強調したように、グーグル(ヤフーやマイクロソフトもだが)は過去10年間にわたってダークファイバー(敷設されてはいるが稼働していない光ファイバーのこと)を買い集め、配備してきた。これらのネットワークを使えばテラビットの速度でグーグルのデータセンターと通信することが可能となる。これはつまり「もし所有しているダークファイバーを自社で活用し、新たなDWDM(Dense Wavelength Division Multiplexing:光ファイバーを多重利用ための技術)の機材を送受信両方に設置することができれば、同じインフラを使ってより多くのデータ転送を実現できる」ことを意味している。これについてバイアスは次のように述べている。

グーグルはこれをどのように活用できるだろうか?Google Cloudのストレージ全体に対して、帯域幅コストをかけることなくジオレプリケーションを行うところを想像していただきたい。これだけの帯域幅があれば、100GB以上のVMイメージを移動させることも夢ではないだろう。西海岸や東海岸全域に匹敵するほどの「リージョン」があなたのものになったとしたら?グーグルが持っている巨大で高速でしかも安いWAN(Wide Area Network)ならこれが可能なのである。そしてこれは、アマゾンには決して真似できないのだ。

現在ではダークファイバーが不足しているため、アマゾンがグーグルに追いつくのは簡単ではない。データセンター間との通信における帯域幅供給やコスト面において、アマゾンはグーグルに太刀打ちできないのである。

これは非常に重要な問題だ。果たして、AWSの独占支配を打ち砕くほどの影響はあるだろうか?それは時が経てば分かるだろう。とにかく、グーグルがアマゾンにとって最大の脅威であることは間違いないだろう。今後の2社の動向から目が離せない。

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