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BYOD(Bring Your Own Device:職場への個人デバイスの持ち込み)は、今や一般的となった経営上の課題だ。しかし会社にとっては、「Bring Your Own Everything(職場に全てを持ち込む)」という新たな時代が到来し始めている。

HTML5が成熟し、ほとんどのビジネス・アプリケーションがどのデバイス上でも問題なく使うことができるようになった今、営業職にとって適切なモバイル・デバイスを選ぶことはそれほど重要な事ではなくなった。デバイスよりもむしろ、アプリやツールに注目が集まっている。それは次のようなことだ。

1.ソーシャルネットワークの持ち込み
営業職を雇う場合、より多くの人脈を持っている人が採用される。しかし今の時代、人脈は名刺フォルダではなく、Facebook、LinkedIn、Twitterなどのソーシャルメディアにある。そして重要なのは、単なるFacebookの友達の数や、Twitterのフォロワーの数、LinkedInのコネクションの数ではなく、そこでの関係と付き合いの深さや質なのだ。営業というのは「私のために、あなたは最近何をしてくれたか」が全てだ。しかし、顧客データが重要になる程、その価値はデータを生み出す営業職に移行するようになる。個人への権限委譲を進めることは歓迎すべきだが、一方で顧客データをどうやって適切に管理するかという事も、同じく重要なのだ。

2.顧客リストの持ち込み
LinkedInはビジネス用ソーシャルネットワークとして特別な存在だ。なぜなら登録者の情報は勤め先を問わず常に更新され、絶えずその登録者と繋がっているからだ。しかし顧客リストとしてのLinkedInは、会社ではなく営業職が個人的に所有しているのは明らかだ。営業職を雇った場合、会社はあくまでその営業職のLinkedInを、顧客リストとして借りているに過ぎない。

3.営業手法の持ち込み
かつて営業職は、どのような営業手法を用いるべきかを会社から指示されていた。従業員達は、「この会社でのやり方」を学ぶことを強いられていたのだ。会社に属することは、その会社の標準的な営業手法のトレーニングを含んでいた。しかし今や営業手法は多数存在し、優れたものも多い。(有名なものではMiller Heiman, SPIN, Target Account Selling等が思い当たる。)会社は自社の営業手法を決めてしまうか、そうでなければ優秀な営業職が自社の営業手法ではなく例えばSPINを用いようとした場合、それを許容するかどうかを決めておく必要があるだろう。

4. 営業ツールとアプリの持ち込み
営業職がiOS、Android、Windows、あるいはBlackberryのどれを使っているかは会社にとってあまり問題ではない。しかし、彼らが自分のデバイス上でどのアプリを使っているかは、重要な問題だ。なぜなら今や営業管理というものは、営業職が持つデータのコントロールや統合が全てなのだ。優秀な営業職ほど自分のスマートフォンやタブレットで使うアプリをしっかり準備し、クラウドで使うネットワークやサービスにも既に接続している状態で、こういう人材は入社1日目から即戦力となるだろう。

営業効率化のための新たなツール

営業職に与えられるミッションは厳しいものだ。まだあまり知名度の高くない自社を背負って、新しい市場を早く大きなスケールで開拓することが求められる。こんな厳しい仕事を与えておきながら、「ところで君が好きかどうかに関わらず、会社の与えるこのシステム、このプロセス、このツールを使って全ての仕事をして欲しい。」というのは難しい。

長年自分の使い慣れた営業管理のメソッドやツールを捨てて、会社で決めたものを使うよう、ベテランの営業職に伝えることを想像して欲しい。彼等に会社のやり方を強要する事と、新市場の開拓推進や販売目標達成を求める事のどちらが大事なのか、考えるべきだ。

どんな営業管理のメソッドやツールを使うかという問題は、営業職とその雇用者間でのパワーバランスを乱す可能性もあり、雇用する側にとっては頭痛の種だ。しかし幸いにも、この問題の解決を目指した新しいソリューションが存在する。

Nimble、RelateIQ、ClearSlide、Yesware、Tylr Mobile、Social Pandas、Selligyのようなベンチャー企業がこのソリューションに取り組んでいる。「営業効率化」を売りにするこれらベンチャー企業は、これまでのCRMとは違った方法で営業職の効率化を図り、営業管理をより生産的なものにする事を目指して、次の二つのソリューションに注目している:

1. モバイル・デバイス・レベルでの統合
営業職は外回りが基本だ。モバイル・ファーストでないシステムでは、営業職は外出中に殆ど仕事をすることができず、彼らの生産性を奪ってしまう。営業職がずっとオフィスの机に座りっぱなしでいる状態は、会社にとっていい兆しではない。モバイルが明らかな解決策だ。さらにモバイルは、単独で機能する全てのクラウドアプリ群を統合するための重要なキーとなる。APIのおかげで、モバイルのアプリ・レベルでこれらを統合するのは比較的簡単だ。LinkedIn、電子メール、プレゼンテーション、CRM、地図、オンライン会議システム等、営業職が日々の仕事をこなすための様々なサービスがあり、これらは1つのユーザーエクスペリエンスとして統合され、利用することができる。

2. 営業データ入力の自動化
もし営業職がオフィスで報告書を作成する事に多くの時間を費やしているとすれば、それはシステムとマネージメント両面での失敗を意味している。彼らが顧客と商談している時間こそが、会社に価値をもたらしてくれるのだ。

優秀な営業職ほど、例えば「ノルマをXX%上回り、今月の予算を達成。」のような簡潔な報告書を書くことができる。長い報告書はノルマ未達成の言い訳であることが多い。

とはいえ、会社は営業の数字やデータを必要としている。モバイル・アプリは空き時間(エレベーターや電車の中、喫茶店など)での迅速で簡潔な報告を可能にしてくれる。戦略的により面白いのは、「セールス・ビッグデータ」として認知され始めている、営業データの自動収集というトレンドだ。これは、いわゆるビッグデータのようにデジタル的に自然に生成されるデータを基にしており、営業職がモバイル・デバイスを一日中利用していることで自動的に収集できるデータを活用する。「セールス・ビッグデータ」を使うことで、次のような質問の答えを得ることができる。

1.誰と商談したか
2.どこで商談したか(直接会ったのか、クラウド上か)
3.商談にかけた時間
4.顧客はどれくらい興味を持ったか

最初の3つの質問は会社の最も基本的な疑問「そもそもこの営業職は熱心に仕事をしているのか?」に答えてくれる。営業職にこれらの質問に手間暇かけて回答させるよりは、自動的に報告されるほうが有益だろう。また、営業職にとって都合の良い報告に偏ってしまう恐れもない。CRMによる報告という現行のシステムは、価値ある時間を消費するという点とそして何よりデータの信憑性という意味で、2重の問題を抱えているといえる。

会社にとって最も価値のあるデータは、最後の質問の答えだろう。顧客の関心度が把握できれば、優秀な営業職がやる事、つまり見込みのありそうな特定の顧客にリソースをかける事を、会社が組織的に実行することができる。

我々は、営業とはハードな仕事であり、忍耐力や決断力、あきらめない精神が全てだと思ってしまいがちである。そして少しでも可能性のある顧客には何度もしつこく電話をかけて追い回してしまう。だが本当に優秀な営業職は、顧客の需要が確実かつ急を要するようになるまで待つ。顧客の「悲鳴が聞こえるまで」ひたすら待ち続けるのだ。

さらにターゲットとなる顧客が、自分との関係にどれだけ力を入れているのかを確かめる必要がある。もし営業職が5回電話をかけてやっと折り返しがある程度なら、対等な関係とはいえないだろう。何度も提案書を提出し、プレゼンテーションを行っているにも関わらず、その顧客が必要な質問にすら答えてくれないのであれば、努力の価値はないのかもしれない。営業職の起こした全てのアクションに対して顧客に何かしらの反応を求め、もし何も起こらなければ、顧客の「悲鳴」はまだ大きくないという事なので、次の顧客を探すべきなのだ。

顧客レベルで収集したビックデータは、以下のような質問に答えてくれる。

・この顧客は営業職との会話にどの位の時間を費やしているか
・この顧客は営業職の送ったメールをどれだけ早く開いているか
・Web会議のプレゼンで、この顧客はスライドのページをペラペラとめくっているだけか、どこか特定のページに興味を持って留まっているか
・この顧客から何通のメールが送られてきたか

営業効率化ツールの市場はまだ発展途上の段階だ。しかしニーズは確実に存在しているため、普及は早いかもしれない。「全てを持ち込む」時代には、会社の営業管理システムやツールにも進化が求められる。会社に必要なのは、第一線の営業職の生産性を向上し、同時に効率的な監視も可能としてくれるようなツールだろう。

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