アップルがNestを買収すべきだった3つの理由

グーグルは、32億ドルを注ぎ込んでスマート・サーモスタット・メーカーのNestを買収した。Nestの創業者が元アップル役員でありiPodの発案者でもあるトニー・ファデルであることから、同社はアップルに買収されることになるだろうというのが大方の予測であった。しかし一部の報道によると、アップルは入札すらしていなかったようである。

今後アップルがこの選択を後悔することになるであろう3つの理由を以下に挙げてみる。

1.データ

グーグルは、今後のテクノロジーにおいてデータ収集プラットフォームがいかに重要であるかを明確に捉えている。同社の技術は我々のニーズや我々自身についてさらに詳しく知るようになるだろう。グーグル検索の進化を見守ってきた人であれば心当たりがあるだろうが、5年前に比べて今日のグーグル検索では、情報の共有や選択を行う上で、ユーザー情報や位置情報といったデータの重要性が明らかに高まっている。

Nestは巨大な分散型データネットワークである。外見はおしゃれなセンサー・プラットフォームだが、長期間にわたって人々の生活スタイル、習慣、嗜好、ニーズに関する膨大な情報を提供するのだ。これはGoogle Nowの理念と完全に一致している。

2.商品開発力

アップルは十分な資本を持っていたのだから、GoogleのCEOラリー・ペイジの手からトニー・ファデルを守るべきであった。買収額が高く付いたとしても、Nestはとてつもないヒット商品になる可能性があったし、収益性も見込めたはずだ。というより既にインターネット対応の家電ハードウェアとして大きな成功を収めていたではないか。

なのになぜ、ティム・クックは数十億ドルと引き換えにトニー・ファデルを手元に置いておくという選択をしなかったのか?世界でも有数の商品開発能力を持ち、現在は急成長中のマーケット(スマートフォンのマーケットは既に停滞し始めている)に取り組んでいる人材を獲得する資金的な余裕はあったであろうに。なぜ、魅力的な商品の開発に苦戦しているグーグルのチームに、わざわざ商品開発の才能と専門知識を備えた大胆不敵なリーダーを与えるような真似を許したのだろうか。

3.マーケットにおける地位

アップルは未だにコンピューターから抜け出せていない。iPhoneもiPadも様々なノートPCやデスクトップも、結局はコンピューターの一種である。

それも結構だが、コンピューターの外側の世界、「モノのインターネット」の世界ではもっと大きな流れが生まれている。特定の機能に特化した多様なデバイスが続々と誕生しているのだ。こうしたデバイスはコンピューターとは異なり、プラットフォームに縛られない。今や非常に重要な役割を担うようになってきており、ユビキタス化も進んでいる。

アップルは、「モノのインターネット」のマーケットに進出できていない。AppleTVは近いところにいるが、iPadやiPhoneのような成功を収めた訳ではない。

目の前に広がる空間が広すぎると、そこへ飛び込んで行くのは勇気がいるものだ。しかしグーグルはそこへ踏み込んでいった。時間が経っても隙間は残っているかもしれないが、権利で埋め尽くされてしまう可能性もある。アップルはこのことを心配するべきであろう。

空っぽになった「巣」

別に、アップルはもうおしまいだとか、深刻な打撃を受けるだろうと言いたい訳ではない。逆に、今回の買収劇はアップルの目を覚まさせ、正しい方向(iWatchのことではない)に向かわせることになるだろうと思っている。いわゆるショック療法である。

グーグルがNest Labsだけではなく、100人に及ぶ元アップル社員をも買い取ったことは重要な意味を持つ。この事実はカリフォルニア州クパチーノにあるアップルの本社にも動揺を与えるに違いない。

編集部注: この記事は、Telefónica社でクラウド・コンピューティング/IaaSのグローバル・プロダクト・マネージャーを務めるAlex Salkever氏によって執筆されました。

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