オンライン教育は本当に就職に繋がるのか?
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最近では大学レベルの教育をオンラインから無料で受けることができるようになり、様々なジャンルの高品質なレッスンが提供されている。しかし雇用の現場では、専門職や技術職を除くとなかなか雇用には結びついていないように思える。

大規模なオンライン教育コースはMOOC(Massive Open Online Courses)と呼ばれている。特定の分野における受講者のスキル向上を目的としており、特に技術・科学・数学に特化している。受講したコースに合格すると、学生には修了証書が送られる。

オンライン教育はここ数年の間に急成長を遂げた。スタンフォード大学発のオンライン専門学校「Udacity」は200ヶ国以上の国と地域で利用されており、160万人の受講生がいるという。これだけの関心を集めているオンライン教育だが、多くの人事担当者は未だにこの手の非伝統的な教育方法に対し懐疑的であるようだ。

オンライン教育を雇用に繋げる

Udacityは技術関連の授業に特化した人気のオンライン教育で、より多くの卒業生を企業に採用してもらえるよう働きかけている。

Udacityは最近、Open Education Allicance (OEA)というプログラムを発表した。これは、雇用者(企業)や教育者(Udacity)がキャリアアップを目指す人々を支援し、高等教育を促進することを目的としている。この活動にはGoogle、AT&T、Inuit、Clouderaなどの企業も参加している。

「Udacityで学ぶ受講生の多くはモチベーションが高くキャリアアップを目指しているため、OEAに参加しているパートナー企業に積極的に採用されています」と、Udacityの戦略ビジネス・マーケティングを担当しているクラリサ・シェンは語った。

また、Udacityは職業紹介プログラムにも積極的に取り組んでいる。このプログラムでは、Udacityのスタッフが大手企業からベンチャー企業に至るまで300社以上のネットワークを活用し、学生の就職を支援している。

「受講生のうち10~15%はUdacityのプラットフォームに自身の履歴書を公開しています」とシェンは言っている。また、受講生は受講内容を履歴書やLinkedInに投稿し、GitHubにも同じようにプロフィールを設定するよう奨励されている。

Udacity以外にも「Coursera」というオンライン教育ツールがある。こちらは「最終的に学位を得る得ないに関わらず、生涯学習の機会を提供したい」という思いからスタンフォード大学の教授たちが立ち上げたものだ。

Courseraは「signature track」というプログラムを提供している。受講を終了した学生が就職先に提出するための公式な修了証書を発行するというもので、発行には30~70ドル程度の料金がかかる。

Courseraでプロジェクト・マネージャーを勤めるクリス・ヘザーは次のように述べている。「受講終了時、受講生たちにこの修了証書をどのように使うつもりか確認しているのですが、大抵の受講生は既に大学の学位かそれ以上の資格を有していることが分かりました。彼らはあくまで自らのキャリアアップのためにCourseraを受講しているようです。」

つまりオンライン教育は、既に大学を卒業している人にとってはキャリアアップの一手段であり、様々な理由から大学へ進学する機会がなかった人にとっては良い就職先を見つける重要なチャンスなのである。

学位は役に立つか?

2013年に発表されたBrookings Institutionの調査結果によると、科学・技術・エンジニアリング、そして数学の知識を必要とする米国内の約半数の仕事は大学の学位を必須としないようだ。学位が必要な仕事は全体のおよそ5%にすぎないという。

これはUdacity、Coursera、edX等のオンライン教育プラットフォームにとって良報だ。「edX」とは、ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学によって創立された非営利プロジェクトで、これもまたオンライン教育プラットフォームである。非常に安い料金で大学レベルの授業を受けることができ、IT業界への就職に有利だ。

ニューヨークタイムズが行ったインタビューで、グーグルの人事担当役員ラズロー・ブロックは次のように話している。「グーグル社内で大学を出ていない社員の割合は徐々に増加しています。大卒ではないメンバーが14%を占めるというチームもあります。仕事を始めて2、3年経つと分かりますが、学校でいかに良い成績を収めていたとしても、勉強に必要な能力と仕事で求められる能力は全く異なるのです」

タミール・デューバースタインという青年の実例は、大学卒業後に新しいスキルを学ぶことがいかに雇用機会を増やすかを良く示している。彼はMITx(現在のedx)を通じてオンライン授業を受講し始め、やがてUdacityがコンピューター・サイエンスに焦点をあてたコースを開始するとそちらに移行した。タミールはコンピューター・サイエンスとプログラミングに関する5つのコースを修了し、Udacityのプラットフォーム上で自身の経歴を公開した。その結果彼は、サンフランシスコの「Square」という決済代行会社でプログラマーの職を得ることができた。

自分が就職できたのは間違いなくUdacityのおかげだと、タミールはeメールでのインタビューで語った。「Udacityのスタッフが積極的に私をSquareのリクルーターに紹介してくれたんです」

タミールはウォータールー大学で機械工学の学位を取得していたが、実はこれまでコンピューター・サイエンスを学んだことはなかった。彼はUdacityのコースは大学での伝統的な授業とは全然違っていたと言い、最終的に今の職に就くことができて幸せだと述べた。

学位の力は未だ衰えず

学者たちは、オンライン授業で取得した修了証書に大学の学位と同じ価値があるという考えを一笑に付している。この懐疑的な態度はもしかしたら、オンライン授業が普及して大学よりも人気が出てしまうと、大学で教鞭を執る教授の需要が減ってしまうという考えに基づいたものなのかもしれない。

マサチューセッツ工科大学でデジタル・ラーニングのディレクターを勤めるサンジェイ・サルマは、職場では今でも大学の学位が重要な役割を果たすと信じているようだ。

彼はReadWriteのインタビューで次のように語っている。「会社を長期にわたってリードしてくれる人材を探す際には、その人が総合的なスキルと論理的な思考を持っているかどうかをまず確認します。私にとって、良い学校を卒業して素晴らしい教育を受けているという事は重要な判断基準なのです」

プログラミングや数学等の技術的なスキルはオンライン教育でも獲得できるが、企業が求める対人スキルやリーダーシップ等はMOOCのコースでは培うことができないというのである。

しかし、ある人事担当者は次のように話している。
「オンライン教育で学位や修了証書を取得する人の多くは既にフル・タイムで働いているか、(私のように)大学へ進学する機会を得られなかった人です。このような人は大抵豊富な社会経験を持っています」

さらにCourseraもUdacityも声を揃えて、「オンライン教育の受講者には、既に大学を卒業してさらなるスキルアップを目的としている人や、既に就職していて今後のキャリアアップを目指している人が多い」と述べている。

となると、オンライン教育で懸念される対人スキルやリーダーシップの不足はあまり問題にならないことになる。今後、オンライン教育を経て現場で活躍する人は更に増えていくだろう。

画像提供:ilikespoons(Flickrより)

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