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マーク・アンドレッセンはかつて「ソフトウェアが世界を食い尽くしている」という表現を用いた。しかしオープンソースの世界では、ソフトウェアは互いに互いを食い尽くそうとしている。それも凄まじい勢いで。ソフトウェア業界では特定の商品とそのベンダー達が長年にわたってマーケットを独占しているが(OSはマイクロソフト、データベースはオラクル)オープンソースの世界では事情が異なるようだ。絶え間なく進化し続け、成功者は勝利の余韻を味わう間もなく競合に追い落とされている。

めまぐるしく変化するオープンソースの世界において、企業はどのように投資を行うべきなのだろうか。

加速するオープンソース

数年前に、ダーク・リーヒルがオープンソース・プロジェクト数の増加率を分析した。最新のデータではないが、彼の分析結果によるとプロジェクト数は増加の一途をたどっている。

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ビッグデータ、クラウド、モバイルといった重要なマーケットにおいて、今注目に値するようなコードはどれもオープンソースである。HadoopやOpenStackのような分野の人気は高まる一方であり、オープンソースの進化と発展は今後ますます加速するものと思われる。

この傾向にはいい面もあるが、悪い面もあるだろう。

オープンソース開発者に平安は訪れない

構成管理(Configuration Management)の分野を例にあげたい。Redmonkのステーヴン・オグレーディは、ChefやPuppet、Ansible、Saltといった各システム管理ツールの人気を把握するため、いくつものデータソースを調査している。AnsibleとSaltは最近出てきたツールだが、人気が高く導入事例も増え続けている。

こうした現状を踏まえ、オグレーディは次のように推測している。「リレーショナル・データベースの市場は2つの大型プロジェクトに支配されています。構成管理の分野もこれと同じように、少数の大型プロジェクトに支配されることになるのだろうと以前は思われていました。しかし今では全く将来の予測がつきません。」

オグレディーは以下のように続けている。

コミュニティーから生まれる数々のデータソースを見てきましたが、なかでも興味深いのは、AnsibleとSaltの両方がそれぞれ妥当性を持っているという点です。両プロジェクト共に将来性が見込めることから、この分野の需要がいかに高いかが分かります。また、選ばれるプロジェクトは開発者達の個人的な好みにも左右されます。例えばPythonの開発者達はSaltを好む傾向が強いようです。

しかし本当に興味深いのは、どのオープンソース・プロジェクトも長期的に利用される保証はどこにもないという点ではないだろうか。2005年に登場したPuppetは未だに既存のプロジェクトとの勢力争いを続けているが、今やChefやAnsible、Saltといった、ここ数年の間に現れた新参者との戦いも強いられている。

どのマーケットにおいても既存の勢力に対する新たな挑戦というのはつきものだが、オープンソースの世界では挑戦者達が他に類を見ないスピードで飛びかかってくる。新たな挑戦者達はマーケットが巨大化するのを待たずして攻撃を開始するのだ。ChefとPuppetで既に充足しているマーケットに対してSaltとAnsibleが攻撃を仕掛けたことが良い例である。

コミュニティーは与え、そして奪う

同じ構図が構成管理以外のマーケットでも見られる。コンテンツマネージメントにおける「Drupal 対 Joomla 対 Alfresco 対 WordPress 対 その他無数のCMS」。クラウドにおける「Eucalyptus 対 OpenStack 対 CloudStack 対 CloudFoundry 対 Openshift 対 その他多数」。ウェブサーバーやデータベースでも似たような状況だ。

DB-Enginesトラッキング・サービスから読み取れる限り、オープンソース・データベースに至っては毎日のように新しい挑戦者達が現れている。なかでも一番活発なのはリレーショナル・データベース市場だろう。つい最近までこのマーケットはMySQLの独壇場だった。Postgresも有力な対抗馬だったが、MySQLには遠く及ばなかったものだ。

今では状況が大きく変わった。変わったどころか大混戦である。オラクルがMySQLコミュニティーの不信を買ってからというもの、Postgresは乗りに乗っている。かつてMySQLを最初に取り入れたような、時代の最先端を行く人々にすら人気を博しているのだ。だが、同時にMariaDBにも人気が集まっている。まだ規模こそ小さいが、Red HatのFedoraやUbuntuといった主要なLinuxディストリビューションはMariaDBを採用している。グーグルでさえもMySQLをMariaDBに入れ替えた。

オグレーディが言うように、結局は開発者の好みなのかもしれない。開発者に支配されるオープンソースの世界では、彼らは自らの一存でニーズに合ったプロジェクトに乗り換えることができてしまう。これがマーケットに混乱を招いている原因とも考えられる。もしこの仮説が正しいなら、一社が長期にわたって独占できないとされるオープンソースの性質にも説明がつく。

開発者のご機嫌を取るのは実に大変なのだ。

コミュニティーに喜ばれるビジネスを

さて、このような状況を踏まえた上で、オープンソース・プロジェクトに対する長期の投資を検討している企業は何をすればよいのだろうか。満足のいく答えではないかもしれないが、企業は自分が興味を持ったプロジェクトに貢献し、その存続を支援すべきである。たとえそのプロジェクトが衰退したとしても、企業がサポートを続けて維持すれば良いのだ。

しかし今のところ、自らの手でオープンソースの勝者を作りだそうという企業は見当たらない。

実際には各企業は、彼らの求める技術的な要件を満たしており、なおかつ強力なコミュニティを有しているプロジェクトの中から、既に人気が高いものを選んでいるようだ。しかし「人気」などというものは、プロジェクトが少しでもコミュニティに対して無関心になったらあっという間に消え去ってしまう。Linuxがこれほど長続きしているのは、開発者コミュニティーへの配慮と彼らの要望に対する理解があったからだ。

残念ながら、オープンソース・コミュニティーの活気を見極める決定的な方法などというものは存在しない。OpenStackは強い土台を持っていたから成功したのだし、Linuxは強力な各個人の力によって支えられてきた。

ただ一つだけ言えるとしたら、これまでリードを保っているオープンソース・プロジェクトは常に革新的な変化を遂げており、数ヶ月に一度はアップデートされているということだ。このようにめまぐるしい進化を遂げるプロジェクト応援するのは企業にとって難しいかもしれないが、進化するのはプロジェクトに求心力がある証拠なのだ。

オープンソース・プロジェクトの衰退を回避するには進化し続ける以外に方法がないのだし、企業はそれを支援し続けるべきなのである。

トップ画像提供:Shutterstock

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