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午後6時40分。相手はまだ来ない。私は魔法の呪文で買い手を呼び出すかのように、つま先で歩道をコツコツと叩いていた。もちろん効き目はないが、それでも私はやめることはできなかった。冬のニューハンプシャーで凍えそうになりながら、私はお金を払って荷物を受け取ってくれるはずの見知らぬ人を待っていた。

まるで映画の中の、うまくいかない麻薬取引シーンのようだが、そうではない。私はただ、古いiPadを売ろうとしていただけなのだ。

数年前、新品を買うための足しにしようと古いiPadを売った時、私は販売価格やその他いろいろな事に気を配ったが、失敗もある。今思い返すと自分の幼稚さにぞっとする。人生は甘くない。一歩間違えば良くない事態、それも最悪の事態に陥っていたかもしれないのだ。

今は個人が新品や大事に使った中古の電子機器を高値で売ったり、ホリデーギフト・バーゲンで掘り出し物を手に入れたりするのに絶好の季節で、ネット詐欺に遭わないよう、売買の多くは直接商品を手渡しする形で行われる。しかし、この方法には大きな危険が潜んでいる。

大抵の場合、高価な電子機器を現金で取引する。にもかかわらず人々は、自分の身の安全に十分気を配っていないのだ。

これは犯罪者にとって、絶好のチャンスだ。

知らない人は危険な人

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数週間前、サンフランシスコで22歳のイケンナ・ウワカを悲劇が襲った。Instagramに投稿した「PlayStation 4売ります」のメッセージに応えてきた男に殺されたのだ。二人はサンフランシスコのベイビュー地域の交差点で会う約束をしたのだが、そこが殺人現場となった。犯罪は暴力的というだけでなく、理不尽なものだった。ウワカが射殺されたのは、彼が犯人にゲーム機を手渡した後だったのだ。

私のCraigslist(地域情報投稿サイト)経由での取引を振り返ると、この事件との類似性にぞっとする。私もウワカと同じように、数百ドルするガジェットを売ろうとしていた。(もっとも、私の古いiPadの売却価格は、PS4の提示価格600ドルの半分だったが。)そして同じように自分の家では取引せず、買い手とは街中で他の誰かと一緒に会うことにした。ウワカはガールフレンド、私は夫と。

しかし私が当時住んでいたニューイングランドの小さな町は、治安の悪さで知られている騒々しいサンフランシスコ近郊とは状況が違う。だから何の問題もなかったはずだ。いや、本当にそうだろうか?

最近のニュースの見出しをちょっと検索しただけでも、私の考えは間違っていたことがわかる。カリフォルニア州のLodiとBakersfield、ブリティッシュコロンビア州のChilliwack、インディアナ州のIndianapolis、ニューヨーク州のTonawandaでも同様の事件が起きている。周囲の環境に関係なく、犯罪者はだんだん大胆になってきているようだ。被害者の家から屋外、さらにはコーヒーショップにまで犯行場所を広げている。

注意が必要なのは売り手側だけではない。嘘のネット販売情報を投稿して、善良な人をおびき寄せ罠にかけるという、逆の手段を取る犯罪者もいるのだ。

買い手にも売り手にも注意せよ

これまで、個人の売り手が中古品を売るのは、Craigslistのような情報投稿サイトを使うことが主で、今でも多く利用されている。しかし、ウワカが別の手段、Instagramを使っていたことは心に留めておいても良いだろう。実際、この写真共有サービスは法人や個人が電子機器や他の物を売る場所として人気が出てきた。そしてFacebookやTwitter、Pinterestを含む様々なサイトやソーシャル・ネットワーキングがごちゃまぜになって膨張するにつれ、人々が自分の物を売りに出す手段はこれまでにないくらい増えている。

ネット販売に関係した犯罪には、アメリカ中の警察も大いに注目していて、取引に際しての安全上の注意点として、次のような勧告を出している。

・取引場所には、ショッピングモールのような、人通りの多い公共の場所を選ぶこと。
・取引は日中の時間帯にすること。取引がうまくいったとしても、家まで尾行される可能性があり、視界の悪い夜は危険。
・他の誰かと一緒に行くこと。絶対に知らない人と一人だけで会ってはいけない。
・実際に会う前に、買い手あるいは売り手と何度か話をすること。
・取引相手の身元を確認し、会った時も身分証明書を確認すること。
・取引相手の連絡先を確認すること。

iPad

肝心なのは判断力だ。ネット上で知り合った人と実際に会う時は、いつでもこの力が必要だ。OKCupidのような出会い系サイトで知り合った人とデートをする時や、新しくてクールなダンジョンズ&ドラゴンズの(ボードゲームの一種)の愛好会に参加するときも同じで、相手が言葉通りの人物かどうか確かめるべきだし、自分の身を守るため、危ない目に遭う可能性のある場所には行かないことだ。もちろん、一番安全な方法は個人間の取引を避けることだ。買取会社に売る、小売店の下取りプログラムを利用する、あるいはネット上で販売した物は手渡しではなく配送する等、中古のガジェットを売却する方法はいくつもある。特に配送する場合はネット詐欺が気になるかもしれないが、被害に遭うといってもせいぜい売り物や、手にするはずだったお金を失うくらいだ。もっと大事なものを失うよりずっと良いはずだ。

トップ画像提供:Jeff Ruane(Flickより)

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