Amazonとの競い合い、特にAWSと争うことは厳しいものだ。このクラウドコンピューティングの巨人は目まぐるしいペースでイノベーションを送り出し続けており、第二位と収入において何十億ドルもの差をつけている。そして、この企業にとって失敗は日常茶飯事だ。

だが、AmazonのCEOであるジェフ・ベゾス氏に言わせれば、他社はまだまだ失敗が足りていないとのことだ。

彼は、アマゾンの株主に向けた年次書簡において、「Amazonは世界一の失敗をする企業である」と言い放ち、失敗を糧として、昨年はクラウドで73億ドルの収入を上げる成功に至ったその社風を誇った。また、Amazonは来年の収入を約100億ドルと予測している。

Amazon logotype printed on cardboard box

Amazonは世界一の失敗をする企業

Amazonには他の企業と似たようなところもあるが、他とは明らかに異なるところもある。それの最たるものとは、ベゾス氏によれば”失敗を尊ぶ”という点だ。

「我々が他より際立っているところは失敗についてだと思う。我々は世界一失敗している企業であるし、実例を挙げるとキリがない。失敗と発明は切っても切り離せないものだ。発明のためには実験が必要だが、何が正解かやる前からわかっているようなものなどを実験とは言わない。大企業の多くは発明を有り難がるが、それを達成するために経験しなければならない一連の失敗で苦しみたいとは考えない。」

失敗を受け入れ、時には喜ぶという心構えは重要なものだと彼は続ける。これらの失敗は大きな見返りにつながる可能性があるからだ。

「大きな見返りとは、しばしば従来の知恵の逆を行くことから得られるが、従来の知恵というものはたいてい正しいものだ。だが、もし10%の確率で100倍の見返りがあるのだとすれば、10回のうち9回が外れるとしてもその博打に賭けてみるべきだ。」

「フェンス越えの打球を狙いに行けばストライクを取られる率も上がることは誰でも知っている。それでも何本かのホームランは出るわけだ。だが、野球とビジネスの違うところは、野球における見返りはある程度のところで頭打ちになる点である。たとえ、どんなに球を上手に打ち返したとしても得られる得点は最高でも4点どまり。だが、ビジネスでは登板の度に毎回1000点を得ることも可能になる。だからこそ、前に進む勇気を持つことは重要なのだ。そして、大勝ちするプレイヤーは実験的な行為に多くをつぎ込むものだ。」

というわけで、AWSは様々な実験をより早いペースで行っている。2015年には、AWSにS3やEC2、Autoraなどの70以上のクラウドサービスに722もの特徴的な機能が追加された。2014年と比べて40%の伸びだ。

だが、彼らは何の考えも無く失敗しようとしているわけではない。

細分化するAmazon

ジェフ・ベゾス氏によれば、「AWSで作られるものの90-95%は顧客の要求によるものだ」という。重要な点は、それらを作るためにAmazonではチームが細分化されているという点だ。

「Amazonは一つのことだけに携わる小さなチームの集まりで出来ており、そのために急速なイノベーションが可能になっている」とベゾス氏は述べている。これらのチームは、以下にある「公開されたAPI」に(強制的に)沿って互いにコミュニケーションを取っている。

 -全てのチームはサービスインターフェイスを通じてその機能やデータを公開しなければならない。

 -チームのコミュニケーションはインターフェイスを通じて行われる。

 -インターフェイスを通じたもの以外のあらゆるプロセス間通信は許可されない。
  直接的にリンクすること、他のチームのデータを直接見ること、共有メモリモデルによる
  コミュニケーション、バックドアやその他の手段すべてに対してこれは適用される。
  唯一許可されるコミュニケーションは、ネットワーク越しにインターフェイスを叩くことのみである。

 -どのようなテクノロジーを使っていたとしてもこのルールは変わらない。

 -どのようなサービスインターフェイスも例外なく公開されることを前提に、
  根底からデザインされなければならない。つまり、チームはインターフェイスを
  開発者に公開できるようにプラン設計を行わなければならない。例外は認められない。

そして、これらを選択肢の1つだと考えているAmazonの従業員たちに対し、ベゾス氏はこう締めくくっている。

「これを守れない社員はクビにする。では、今日もいい日を」

ジェフ・ベゾスは何を作るのか

AWSやKindleはプレスで取り上げられることが多いが、Amazonの顧客に対するより興味深い取り組みの一つにIoT分野がある。Amazonは開発者サイド、消費者サイドの両方からこれに取り組んでいる。

開発者サイドからの取り組みとしては、Amazonが昨年の10月に発表した『AWS IoT Platform』が挙げられる。これは、「管理されたプラットフォームであり、コネクテッドデバイス同士を安全かつ簡単に接続し、クラウドアプリケーションやその他のデバイスと連動できるもの」とのことだ。AWSとの親和性も良く、開発者はインフラを利用して簡単にIoTアプリケーションを作ることが可能になる。

また、Amazonは、音声操作が可能で将来のホームオートメーションの中心になるであろう『Amazon Echo』についても開発者たちが興味を持ちそうなものをリリースしている。Echo自体はコンシューマ向けだが、開発者たちにも門戸を開いており、たとえばこれを使ったサービス (Dominoピザに注文を入れるなど)を構築し、プラットフォームとしてEchoを拡張することができるようになる。

私がEchoを持っていた時、Amazonとそれを取り巻く開発者のエコシステムによってサービスが日々改善されていくのを目の当たりにした。AmazonはEchoを鳴り物入りで送り出したというわけでもない。私自身、身内の家でEchoが音声による指示で買い物リストを更新しているのを見るまでは気付かなかったが、Echoは瞬く間に家族生活の中でのささやかながらも大事な一部となった。

無論、Amazonがあの呪われてたとしか思えないようなFire Phoneのようなものを出す可能性はある。だがそこがポイントだ。Amazonは、大なり小なり様々な賭けに出ることに対して前向きであり、失敗を悲劇と受け止めない。そうする中で、Amazonは小売業、クラウド、デバイスビジネスを大きく発展させてきたのだ。数ある失敗があったにも関わらず、ではない。数ある失敗があったからこその話である。

(ReadWrite[日本版] 編集部)