ソーシャルグラフ検索を活用して犯罪防止を図るシカゴ市警

昨年シカゴで起きた殺人事件の数は500件を超える。これはニューヨークやロサンゼルスを上回る数字だ。しかし今年に入ってからその数字は(今のところ)減少を続けており、昨年に比べて22%減となっている。シカゴで発生する暴力犯罪の多くはギャングによるものだ。630もの派閥に分かれたギャングたちが都市を横断して抗争を続けているのである。

こうした暴力犯罪と闘うため、シカゴ市警はギャングの構成員たちに迫った死の危険を本人に直接知らせるという手法をとっている。Governing magazineによれば、シカゴ市警は「ネットワーク分析」に基づいたソーシャル・メディアを使って、市内で活動する1万4000人のギャング構成員たちの関係性を特定しているらしい。グラフ検索を行うことによって彼らの誰が誰を殺そうとしているのかが分かるのだという。Governing magazineは次のように述べている。

CPD(Chicago Police Department)は重要なことを発見した。シカゴには「ホットスポット(※1)」が多いわけではなく、「ホットピープル(※2)」が多いという点だ。

※1 ホットスポットとは、何らかの活動が活発である場所を指す。この場合は「犯罪が多発する地域」の意味
※2 「犯罪を犯しやすい人々」というような意味

ネットワーク分析の結果によると、ギャングの構成員は一般の人々にくらべて殺人の犠牲になる確率が3~4倍高いらしい。これは副所長のロバート・トレーシーがGoverning magazineに語ったことである。

シカゴ市警は地元の社会学者と協力してソーシャル・マッピング戦略を開発した。FacebookやTwitterのようなプラットフォームが我々の関係性や会話をトラッキングするのと同様の手法を使って、対象の行動を記録し予測するというものらしい。つまり、Facebookのグラフ検索(※)の実生活版というわけだ。

※ユーザーの周囲とのつながりや会話を分析し、個別にカスタマイズされた分析結果を提供するもの。

シカゴ市警は、市内で最も「ホット」な住人を識別できるようなモデルを構築した。「ホット」とは、犯罪に関与しやすいという意味だ。このモデルでは人物ごとに「これまでに撃たれた回数」「身分証の提示を求められた回数」「銃に対して何らかの信念を持っているか」「保護観察や執行猶予が付けられたことはあるか」といった指数が付与される。彼らは市内22か所の管轄ごとに、最も「ホット」な20名をリストアップしている。

シカゴ市警は「シカゴ暴力削減戦略」と呼ばれる組織とチームを組んで、これらの「常習的犯罪者」として新たに特定された人物や既に割り出されているギャングの構成員に対し、彼らが将来犯罪を引き起こして連邦政府のお尋ね者になる可能性があることを告げて回っている。また同時に、彼ら自身が殺人の犠牲者となって家族や身近な人々を悲しませる危険性についても警告を行うようにしている。

これが功を奏することもあれば、失敗することもある。しかしシカゴ当局は、このやり方が殺人件数の減少に結びついていると信じているようだ。

ソーシャル・ネットワークには良い面もあれば悪い面もある。シカゴ市警と上記の組織がソーシャル分析で殺人件数を抑えようと奮闘する一方で、当のギャング構成員たちはFacebookやTwitter上でお互いを罵り合い、暴力行為を自慢げに投稿しているのである。

オンラインでも犯罪は起きる

昨年、路上での暴力行為がTwitterでの騒ぎに発展したことがある。シカゴ・ギャングの巨大派閥「Gangster Disciples」の構成員であった18歳の少年ジョジョがオンラインでの口論の末に射殺されるという事件の後、「Gangster Disciples」(#GDK)ともう一つの巨大派閥である「Black Disciples」(#BDK)がTwitterのトレンドワードに浮上したのである。

Wiredによれば、この少年の殺害はさらなる数件の殺人を呼び起こし、YouTubeやFacebookなどのソーシャル・メディアでは大変な騒ぎになった。ソーシャル・メディア上で問題を起こすギャングたちのことを表す用語まで生まれたほどだ。彼らは「Facebook drillers」と呼ばれる。誰かを撃って「穴をあける(drill)」ことから付けられたあだ名だ。

主要なソーシャル・ネットワーク誕生の地である沿岸部でも、サンフランシスコ市警が犯罪者の追跡と確保にソーシャル・メディアが有効であることを発見した。

「我々は犯人を捕まえるためにFacebookやTwitterのようなソーシャル・メディアを活用してきた。ソーシャル・メディアから容疑者の写真や情報を入手し、さらにそれを拡散して容疑者の特定や逮捕に結びつけるのだ」と、警察署のスポークスマンは語っている。

犯罪者を発見するためにソーシャル・メディアを利用している法執行機関は彼らだけではない。「警察署長によるソーシャル・メディアのための国際交流協会」の調査によると、92%の法執行機関が何らかの形でソーシャル・メディアを利用しているという。調査の結果では90%がFacebookを、50%がTwitterを、そして27%がYouTubeを利用しているようだ。

しかし、シカゴ市警は彼らよりもさらに一歩踏み込んだ使い方をしていると言える。Facebookのようなソーシャル・マッピングのコンセプトに基づいたサイトを構築して、地元のコミュニティ内での犯罪対策に活かしているからだ(まだソーシャル・メディアが一般に普及する前の1990年代に、ボストンのとある省庁間グループがギャング間の確執や結び付きをマッピングするという似たような試みを行っていた)。

この手法の良い面(と呼べるかどうか分からないが)は、ソーシャル・メディアで暴力行為が拡散されればされるほど、ネットワーク分析のネタが増えるということだ。ギャングたちを死の危険から守ることが彼らの行いを改めさせることに繋がるかどうかは全くもって不明だが、少なくとも彼らに、自分の行いが思っていたより早く実生活に過激な影響を及ぼすのだということを気付かせるきっかけにはなるだろう。

画像提供:U.S. Marshals Service(Flickrより)

Last year, violence in the streets spilled over into a Twitter war. Two main Chicago gang factions, the Black Disciples (#BDK) and the Gangster Disciples (#GDK), emerged as trending topics on Twitter after an online dispute led to the shooting of 18-year-old JoJo, a Gangster Disciples member.

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