スマート自転車で街乗りが進化する!

オープンソース・ハードウェア協会によれば、世界初のオープンソースなハードウェアは自転車だった。より正確に言うと、それはドライジーネという1817年に登場した人力2輪車であった。

自転車が世界中に広まって人々に愛されるマシンになるに従い、その時々の科学技術者たちによってペダル、チェーン、ゴムのタイヤなどが付け加えられていった。そして誕生からほぼ2世紀が経ち、2~30億台にも及ぶ自転車が世に送り出されたと思しき頃、自動車による交通渋滞から世界の都市を救うために自転車はさらに進化した。GPSとワイヤレス接続から成るコンピューター制御が搭載されたのである。

最も新しい革新はスロベニア出身のニコ・クランセックによってもたらされた。彼のブルックリン進出は2011年に始まる。自転車通勤者が汗をかかずに仕事場に到着できるよう、電動自転車の製造と販売を行ったのである。ヨーロッパとアメリカで300ユニットの電動自動車を売り上げるために2年間に渡って苦労を重ねた末、クランセックは自転車の車輪を文字通り再発明することを決断した。「FlyKly Smart Wheel」と呼ばれる新しい車輪を開発したのである。「既に自転車を持っている人に対して電動自転車を買うように説得することは非常に難しい。」とクランセックは語った。「それよりもこの車輪を購入して手持ちの自転車に取り付けるほうがはるかに簡単だ。」

FlyKly Smart Wheelの9ポンド(約4kg)のハブは、毎時20マイル(約32キロメートル)程度の推進力を提供する250ワットの薄いモーターを収容している。また、30マイル(約48キロメートル)の走行が可能な36ボルトのリチウムイオン電池パック、Bluetooth 4.0、iOS/Android/Pebbleの各プラットフォームで動作するアプリケーションも付属している。3Dプリンタで作成されたコンポーネントも一部に利用されており、4つのステージから成るプロトタイピングを経て実際に動作するワーキング・モデルが生産された。私もプロトタイプを使わせてもらって走行してみたが、まだ少々荒削りという印象だった。「安全性」のためにモーターが最大出力の10パーセントに設定されていたのであまりパワーがなかったが、音だけはF1マシンのようだった。

FlyKlyは先月、最初の166ユニットを生産するための10万ドルを集めるキックスターター・キャンペーンを行った。1週間後には600を超える後援者が集まり、生産を進めるために17万ドル近くを投資している。

学習する電気ホイール

数時間に渡る作業と複雑なケーブル接続を求められる電動自転車変換キットとは異なり、Smart Wheelは1分足らずで既存のホイールと交換できる。あとは最高速度をセットするためにモバイルのアプリを立ち上げ、ペダルを踏み込めばすぐに走り出せるのだ。

flykyapp
FlyKlyのモバイルアプリ

FlyKly Smart Wheelはアプリからロックとアンロックを行うことができる。自転車が盗まれた場合には、アプリが追跡用のGPSを使って位置を知らせてくれる。その上印象的なのは、走行中にSmart Wheelが「Nest Learning Thermostat」のように動作することだ。「このホイールは、あなたがいつ、どこで、どうやって使用したかを学習する」とクランセックは説明する。「しばらくすると、Smart Wheelはあなたが丘の上に住んでいると気付く。そしてあなたが家に近づいたらアシストを強化するようになるだろう。逆に丘を降りる時にはバッテリーを充電するのだ。」

FlyKlyはSDKキットを提供しており、開発者はNike Fuel Bandにカロリー・データを供給する機能を追加したり、手で制御するワイヤレスのスロットルのようなものを作成したりすることが可能だ

クランセックは2014年の初めに、KickStarterでの支援者や販売店、ウェブ購入者に向けた出荷を開始したいと意気込んでいる。

クラウド走行

一方、ブルックリンからイーストリヴァーを超えた先にある自動車中心のマンハッタンでは、2010年に「Social Bicycles」と呼ばれる自転車シェアリングのプロバイダーが誕生しており、インターネット接続された自転車に対してまた別のアプローチをとっている。

「我々の製品は、モバイルとウェブのアプリケーション、機載コンピューター、GPS、ワイヤレス接続などを自転車と一体化させた初のモデルだ。」とジャスティン・ウィリー(Social Bicycleの事業開発ディレクター)は説明している。「AT&Tとの提携によって3Gネットワークへの無線接続が可能になった。加えて加速度計もあるため、我々は自転車がいつ移動しているかを知ることができるのだ。」

SoBi-Lock
ステーションに置かれたSocial Bicycle

Social Bicyclesは最高経営責任者であるライアン・ルゼペキがニューヨークシティーの運輸省(彼はそこで自転車をシェアリングするプログラムによって都市計画を支援していた)を去った際に設立された。そこでの経験から彼は、自転車を管理し追跡する設備をすべてステーション側に置くことは必要以上にコストがかかることを理解していた。そこで代わりに自転車側に直接テクノロジーを統合することによって、コストの削減を図ったのだ。ウィリーによると、このプログラムにかかる初期コストは一般的なステーション用設備に必要なコストのおよそ5分の1になるという。

Social Bicycleユニットのコストは、自転車1台につき(利益込みで)1,000ドルほどだ。ユーザはウェブあるいはモバイルのアプリを使って遠隔で、もしくは直接自転車に搭載されたキーパッド上で予約を行う。自転車シェアリング・プログラムのオペレーターはリアルタイムに料金をセットし、すべてのユニットを軌跡することができる。KlyFly Smart Wheelと同様、自転車は電子的にロックすることが可能で、盗まれた場合はGPSによって位置の特定が可能だ。

Social Bicyclesが採用しているハブ・システムでは、ユーザーには比較的自由な行動範囲が与えられる。ユーザーがハブからかなり離れた場所で自転車を降りた場合には割増料金が請求されることになっている。その割増料金(5ドル程度)はプールされ、次の乗り手が自転車を所定の位置に戻した場合にはインセンティブとして回収することができる仕組みになっている。ユーザーがあまりにも遠くで自転車を乗り捨ててしまった場合には厳密な罰金を徴収できるよう、Geofences(仮想的な地理境界を定義するスマートフォン機能)を設定することも可能だ。

要するに、レンタル自転車の管理をネットワークでソーシャル化することによって自転車を公共の輸送機関に近い移動手段とし、ラッシュアワーを改善するという試みなのである。

Social Bicycleはニューヨーク州バッファローを含む約5つの都市で展開されており、バッファローでは地元のカー・シェアリングに統合されている。バッファローの学生は1学期に10ドル程度の低価格でこれらの自転車を利用することができる。サンフランシスコ国際空港でも利用されており、従業員がターミナル間の移動に使っている。Social BicycleはSOSventuresと同様エンジェル・インベスターで資金調達を行っており、現在までに約130万ドルを集めているようだ。2014の第一四半期中にはさらに3都市へ拡大する予定だという。

スマート自転車はまだ始まったばかり

FlyKly Smart WheelやSocialBicylesは、オープン・ソースでネットワーク化されたスマート自転車という新しい分野における果敢なチャレンジであり、こういった事例は世界でもまだあまり類を見ない。他にもサンフランシスコを基盤とするHeliosは、ハンドルバーにヘッドライトと2つのLEDを統合した方向指示灯を提供している。さらにBluetooth 4.0でスマートフォンと連動させることにより、グーグル・マップのナビゲーションを利用することができる。左右のハンドルに付けられたLEDライトが行くべき方向を示してくれるのだ。

また、同じくサンフランシスコを基盤とする航空学エンジニアのジャック・アル・カウォティは、乗り手の安全強化を目指してスマートフォンを使ったインテリジェントなライド・バイ・ワイヤー(電気操縦アシスト走行)の自転車に取り組んでいる。連続可変トランスミッションと力覚フィードバックによって、電動アシストレベルの変更やギヤの調整が行えるようだ。また、かつて「Veloプロジェクト」と呼ばれたものはVelo Labsに形を変えて社外秘扱いとなり、さらなるハイテク自転車通勤の再発明に取り組んでいる。

こういった全ての進歩は初心者ライダーでも走行を楽しめる手助けとなるだろうし、ベテランライダーには走行をさらに楽しいものにする新たなツールを生み出してくれることだろう。

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