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世界をより良く変えるのだという理想主義による取り組みのうち、コンシューマ向け技術においてほとんど成功をおさめていないセグメントがある。障害者向けの技術だ。障害者の割合たるや、米国の5人に1人にのぼるという。

「障害を持つアメリカ人法」が制定されて25年を迎えようとしているなか、アクセシビリティ向上のための開発を啓蒙する為のグループが結成された。このTeaching Accessibilityと題される取り組みにおいて、教育者及び技術系企業は力を合わせる事になる。

彼らのWebサイトによると、この集まりは「基本的なアクセシビリティの概念、そしてどの様な成功事例があるのかについての認識と理解の欠落という課題に取り組む事が目的」だという。主要な参加者にはカーネギー・メロン大、スタンフォード大のほか、アドビ、AT&T、Dropbox、フェイスブック、Intuit、LinkedIn、マイクロソフト、ヤフーなどが含まれる。

当然ながら、彼らには彼らなりにこの取り組みに関わる理由はあるだろう。イメージの向上や、将来ありえるかも知れないオンラインサービスにおける障害者法の拡充についての備え等と言ったところだ。しかしこういった事はアクセシビリティに対する取り組みの価値を否定するものではない。最近の技術によって可能になった事もあるが、それでももっと早くに取り組ま無ければならなかったことだ。

取り残されているのは誰か? 我々の多くだ

Teaching Accessibilityのウェブサイトには、障害を持つ人々をサポートするテクノロジーは良くはなったが、それでも基本的な優先事項になっているとは言えないとある。「アプリケーションや標準規格、規則などで前進はあったが、アクセシビリティは未だ新しい技術開発に置いてシステム化されてるとは言えない」。

2015年の今でも様々なニーズを抱えているユーザーに対する取り組みがテクノロジー業界のDNAの一部と言えるものになっていないというのは、なんとも後ろめたい気がするが、彼ら障害を抱えている人々が米国のどういった所に住んでいるのかをみてみると、それも仕方がない事なのかも知れない

ニューハンプシャー大障害者学会が発表した2014年の年間障害者統計によると、シリコンバレーのあるカリフォルニア、ロス、NYに定住するのは比較的少ないという。

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Teaching Accessibilityはまさにその名前が示す通り、まずは学生を対象に教育の機会を求めている。同団体は明日を担うメーカーたちが障害者達の幅広いニーズについて考え根底から捉えるような新しいモノの考え方を育んで行きたいと考えている。また、専門家やツールを駆使して、あらゆる企業やスタートアップたちがアクセシビリティ開発を行う上で役立つような標準規格を作りたいとも考えている。

なんとも志の高い目標だが、ビジネスとしても望みがある。

若い層がターゲットの場合は特にそうだが、技術系企業は米国の障害者の内約40%は定年を迎えているということに目を向けていないように思える。逆に言えば残りの60%は子供から定年前までの比較的若い世代だとも言える。

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これは米国内に限った話であって、国連によれば推定10億人、あるいは全世界の人口の15%は障害を抱えて暮らしているということだ。如何に多くのユーザーに目が向けられていないことか。ただ彼らは完全に忘れ去られたわけではない。

すくなくとも、全ての人々によっては。

「アクセシビリティは人間の権利だ」

7月、アップルのCEO ティム・クックがTwitterで、彼が障害者に対してどうしようと感じているかを率直に語った。

「アクセシビリティは人間の権利だ。アメリカ障害者法(ADA)の25周年を祝福し、我々は、これからも我々の製品によって人たちの生活をもっと改善していきたい」

力強く明白な宣言だ。UberのCEO トラヴィス・カラニックには無理な発言だろう。アップルはiPhoneのアクセシビリティ機能でこれまでも素晴らしい実績があり、改良も加え続けられている。

最近のWWDCで、アップルはアクセシビリティAPIについて多くを語った。これはアプリ開発者がiPhone/iPad/Apple Watchのアクセシビリティ機能を使うためのツールだ。

アップルは「スピークスクリーン」による音声操作、ズーム、点字サポートを提供している他、Apple Watchでは「デジタルクラウン」(スクロールウィールだ)によるテキストズームも可能だ。グーグルもAndroidにおいて開発者がアクセシビリティ機能を使うためのツールを提供している。

Teaching Accessibilityに名を連ねる企業が手を抜くような事になれば、取り組みは大きく足を引っ張られることになる。ユニバーサルな規格をつくる為には協調した取り組みが必要となる。この様な大企業が協力しあわなければ、出来上がる規格がどのようなものであれ、その普及は困難になるかもしれない。

そうなれば残念な話だ。人-コンピュータのインターフェイスがより多くの人を包括するよう進歩するのにまたとない機会であるのだから。

テクノロジーは成熟している。ではその作り手はどうか?

顔認識、虹彩/指紋スキャニング、ジェスチャー認識、音声操作その他の技術はこれから成熟期に入ろうとしている。これらの幾つかは既に大変有用なものだ。例えば振動フィードバックや位置特定など、我々が長らく当たり前の様に使っている技術の新たな使い方の再検証が出来るのではないか。

一つ例をあげよう。ユーザーが帰ってきたら自動(あるいは音声操作)で解錠し、電気をつけるようなスマートホームがあったとする。一般の人にとって便利なものだが、自分で歩けなかったり目が不自由な人にとっては天からの贈り物と言えるかも知れない。

技術屋はこの様な話を考えて自分たちで盛り上がるのを喜ぶが、一般人からしたらそのような話はまだまだ遠い未来のことだ。それよりも解決しなければならない当面の課題がある。例えば盲導犬が同乗できない相乗り通勤サービスや、障害者のことを考えていないサービスやウェブサイト等だ。

ツールが障害者をガッカリさせているわけではない。その成熟度は増してきており、ポテンシャルはかなりのものに思える。逆に我々、人が見つめなおすべき点はなんだろうか。こういった問題に対する姿勢と観点だろう。

標準規格の策定は課題の1つだ。また取り組みの優先順位を決めなければならないという事もある。Teaching Accessibilityによってこれらが決まることになるかどうかは分からないが、ともあれ今はそうなることを祈ろう。

画像提供:David Fulmer

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