(写真:アマゾンCEO ジェフ・ベゾス)

アマゾン ウェブ サービス(AWS)は、その名が示唆するとおり、広大なミッションの途上にある。実際、ガートナー社のアナリスト、リディア・レオンが指摘するように、「彼らは基本的に世界支配をめざしている」のだ。

またアマゾンの今日の方針と成長速度をみれば、どこがアマゾンに対抗できると言えるだろう?

今日の状況はアマゾン時代の幕開けとも言え、同社は、クラウドサービスの収支をはじめて公開しようとしている。ここにいたってひとつ、疑いようのない点がある。それは、すべてのクラウドサービスは、アマゾンにつながっており、競合他社はその点について自らを責めるほかないということである。

AWSに7年の先行を許す

AWSスタート時、同社グループ内の誰も、AWSが「7年の先行スタート」を切ったのだとは想像しなかった。これはAWSのチーフ、アンディ・ジャシーがビジネスウィークに語ったところである。このクラウド事業は、新しい分野で、収益性が低く、ばかげたアイディアと見られていたからだ。つまるところ、まともなマインドをもちあわせる企業が、はたして、自社データをクラウドに預けるだろうか?

その疑問はしだいに薄れ、やがてまったく解消されるだろう。

最終的に、使い勝手のよさがすべてに優先されることとなった。このように、ある意味でAWSの成長は必然的であった。Box社のCEOアーロン・レヴィーは最近、Twitterで次のように述べている。

Aaron Levie(@levie):「30年以上ものあいだ、IT戦略とは設計であり、ユーザーエクスペリエンス(顧客満足度)がその結果とされてきた。今日では、ユーザーエクスペリエンス(顧客満足度)に戦略を見出し、その結果として設計が行われるのだ」

顧客満足度には、アプリのルック・アンド・フィール(外観)、つまりインターフェイス(使いやすさ)も含まれる。しかし、顧客満足度は外観よりはるかに深い意味をもつ。現代の消費者は、絶えず溢れ出る欲求が即座に満たされることを求めている。このため、企業や、企業内開発者らは、これらの欲求にすばやく応えることを、くりかえし求められている。

即実行を求められることが次々と現れる状況において、データセンターによる対応では間に合わない。ITと調達に関する煩雑な内規を避けるため、開発者らはためらわずにクラウドサービスを使用するようになり、たいていの場合、アマゾンのクラウドを使用するようになってきている。

またアマゾンは、莫大な数に昇る利用者から、どれぐらいの収益が上がっているか、正確なところを近く公開しようとしている。これは初の試みだ。

未来を支配する

IDC社の予測では、クラウド・インフラ市場は、2015年には全体として320億ドルを超えるとされている。このうちパブリッククラウド(複数の利用者が共用するクラウド)が210億ドルを占め、プライベート・クラウド(利用者が自分専用に設けるクラウド)のおおよそ2倍のシェアが予測されている。

アマゾンがこのパブリッククラウド市場の何割を占めているかについて、これまでは、おおまかな推測がされているにすぎなかった。一例として、アンドリーセン・ホロウィッツ社のベネディクト・エヴァンスが、賢明な推測を行っている。それによると、AWSの売り上げは、2014年半ばにおよそ50億ドルに達し、アマゾンの「その他」の事業とほぼ同じ規模になったとされている。

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Amazon ‘Other’TTM revenue ($m) [Source: Amazon, a16z]

これは、AWSの年間売り上げを60億ドルとする、ドイツ銀行のアナリスト、カール・カールステッドの推測と一致している。

(西海岸標準時午後2時52分アップデート:AWS、第1 四半期に15億6000万ドルの売り上げを記録。前年比49%増、営業利益は2億5600万ドル、上げ幅だけで2000万ドルで8.5%の伸び)

しかしこれは、今後の市場動向と比較すれば、小さな変化にすぎない。

つまるところ、ガートナー社のアナリスト、トーマス・ビットマンが指摘するように、「新しいワークロード(作業に要する容量)は、パブリッククラウドに移動する傾向にあり(中略)明らかに急成長している」。その成長スピードは、データセンターのワークロードよりも速い。

この傾向は、ビットマン氏が行った成長分析にみることができる。ビットマン氏は、過去数年間、異なる環境下にある仮想マシンで、成長分析を行っている。

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情報提供:ガートナー社

もし仮にパブリッククラウドがプライベートクラウドの約3倍のスピードで成長しており、その両者とも従来のデータセンターより速く成長しているとしたら。そしてAWSが少なくともその恩恵の3分の1を得るとしたら…

そう、私たちはいまアマゾンの時代に生きているということだ。

薄利多売

アマゾンは、会社として十分な利益を、AWSで稼いでいるわけではない。AWSは非常に収益性が高いものの、それに匹敵するほど、会社全体としての出費が大きいためである。

実際、ガートナー社のアナリスト、デビッド・スミス氏はつぎのように指摘する。「AWSが2桁の収益性をもってアマゾン社に貢献しているという推測を、私は何回か目にしてきました」。

アマゾンにとって重要なこととして、AWSは同社が基本とする薄利多売の経営モデルを変えてしまうほどの収益率を得る必要はない。しかし競合他社は、同じ収益率では生き残ることはできない。IBMを例に挙げると、クラウド事業ではわずかな上昇傾向が見られる一方で(どの部分を対象とするかで変動する)、12四半期連続で売上減を計上している。

要するに、アマゾンはAWS事業を推進してゆく、あらゆる動機をもっているのだ。 AWSは収益を拡大しているからである。その一方で競合他社は、収益率の低いクラウドサービスに移行するには、痛みを余儀なくされる。また、収益率のギャップを補うために「プレミアム」サービスを展開し、事業の頓挫を目にすることもよくある話だ。そのようなことはあってはならないし、競合他社もそのようなことはしないだろう。

今のところただ一社、マイクロソフト社だけが、AWSに対する確かな答えを持っているように思われる。パブリッククラウドの巨大市場には、両社にとってじゅうぶんなスペースがあるのである。

トップ画像提供:Steve Jurvetson

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