車の自動運転およびコネクテッド・カーでよく話題に上ることといえば、運転中にスマートフォンアプリを使うのは未だフラストレーションがたまるという事だ。

車内エレクトロニクスが目指す未来の一つに、運転中に安全に電話、メッセージのチェック、音楽の選択及びナビの操作を行える様になるというのがあるが、これは未だ夢物語だ。運転中にダッシュボードのチェック、iPhoneの操作、選曲、携帯のナビアプリを操作を行うのは、頻繁に注意力を削がれることになる。

残念ながら2015年にこの状況を大きく改善できるであろう話はあまり無い様だ。

MirrorLink

4年前の状況はかなり違っていた。その頃は大手の自動車メーカー、スマートフォンメーカー、通信会社を含んだほぼ100社ほどが、MirrorLinkをプロデュースしていた。MirrorLinkはスマートフォンの機能を車のダッシュボード、ボタンやハンドルにポーティングするためのオープンな標準規格だった。

コンセプトは素晴らしかった。「スマートフォンメーカー及び自動車メーカーが各々独自のアプローチを取るのではなく、オープンな工業規格を用意した」とは、フィンランドに拠点を置くCar Connectivity Consortium(CCC)のマーケティングディレクター、アンティ・オウモが誕生したMirrorLinkについて語った言葉だ。「我々はWiFiやBluetoothのような汎用的なテクノロジーを作り上げた」

考え方としては、ユーザーがどんなメーカーものであれそのスマートフォンの機能を、どのメーカーの車でも実現しようというものだった。この事はとりわけスマートデバイスの技術サイクルが3-5周するであろう10年かそれ以上の間、自動車の方が対応可能となるという意味で大事なことだった。

ビジョンは良かったが、少々問題を簡単に考え過ぎていた様だ。CCCは携帯及び自動車メーカー達はうまくやって行くと予想していた。オウモによれば、このフレームワークによってスマートフォンのサービスはダッシュボード上にシンプルかつ安全な提供でき、(自動車メーカー及びその他の)アプリ開発者はMirrorLink上でイノベーションを起こすことが可能だとされていた。

MirrorLinkを通して

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「ある時、二人がクレイジーなものをもたらしました。そのものとは車と運転におけるイノベーションです。そのクレイジーなアプリがどうなるのか、誰にも分かりません」とオウモはいう。

イノベーションが嫌いな人とはどういった人達か? その答えは顧客の運転に関して全てのことを掴んでおきたいと考えている自動車会社だ。

2014年10月、ホンダがMirrorLinkをつかったスマートフォンとの接続サービス、Honda Connectを発表した。MirrorLinkプロトコルを採用しているがそれはバックエンドでの話であり、デザインやユーザーエクスペリエンスに関わるものは全てHonda Connectを使っている。これは2015年にヨーロッパで販売される特定のCivicに初めて採用される。

VW、スバル、トヨタを含む他社もMirrorLinkを利用しているが、このオープン規格の立ち位置は次の二つの単語で言い表される強力なライバルによって埋れてしまっている。アップルとグーグルだ。

アップルのCarPlayとグーグルのAndroid Autoは、ドライバーの注意を遮らないように、馴染みあるアップルおよびAndroidアプリを更に大きなアイコンやフォントとともにダッシュボードに持ち込もうというものだ。電話を接続するだけで、アップルないしグーグルのデザインガイドラインに沿った画面がダッシュボードに現れる。

右往左往するMirrorLink

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「MirrorLinkはチャンスを逸した」と、CCCの設立者 ダグ・ニューコムはいう。「別に努力を怠った報いだというわけではないが、こうなった理由の一部に彼らの足を引っ張る車業界の存在と、長い商品サイクルが挙げられる」

ホンダがMirrorLinkベースの製品を3ヶ月前に発表したが、これに込められたメッセージはアップルおよびグーグルに対するもののようだ。「CarPlayおよびAndroid Autoが市場に何をもたらすかについて、非常に基本的なことならいえる。しかし肝心の車の発表についてはこれからの話だ」とホンダの広報、アンジー・ヌッチは言った。

韓国の自動車メーカーのヒュンダイもアップルCarPlayとAndroid Autoに注力している。「MirrorLinkの成功は限られたものだが、これが然るべき結果だったというわけではない」と広報のマイルス・ジョンソンは語った。

CES2015で、ヒュンダイはCarPlayとAndroid Autoを統合した新しいヘッドユニット(ダッシュボードのハード)を披露した。ヒュンダイがCarPlayを最初に発表した時、これは車で最も高級な製品に使われるヘッドユニットでのみ採用される予定だった。しかしこの手頃な価格の新しいヘッドユニットでは、CarPlayもAndroid Autoも動作する。

「CarPlayはフェラーリに搭載されたが、他社で取り組んだところはなかった。うちの社員は一番乗りしようとがんばったが、未来の予想はできなかった」とヒュンダイのジョンソンは語る。
(フェラーリ・カリフォルニアT/FFに搭載されたCarPlayは、2014年のジェノバ・モーターショーでデビューした)

消費者家電は自動車の技術と比べて非常な速さで進歩する。CarPlayやAndroid Autoは2014年デビュー予定だったが、開発にかかる時間の長さと、全く異なるシステムを統合しなければならない事が遅れの原因になっている。最もこれは巨人といえる2社にとっては大した遅れではない。

ジョンソンによると、「このゲームに参戦し道筋をつけた彼ら2社は、明らかに試合の流れを変えた」という。彼はCarPlayとAndroid Autoは車の売り上げに貢献し、販売店で行うデモの集客になると信じている。

イノベーションの切り札は「馴染み」

車の備わる情報機器の学習曲線は非常に険しい、とは新車で初めてダッシュボードのメニューや音声コントロールを使った人なら大抵思うことだ。「我々の調査によると、平均的な顧客が新しいシステムの説明をちゃんと聞くのは15分間位までだ。もしこの間にCarPlayやAndroid Autoの説明を終えようとすれば、ものすごいスピードで行わなければならない」とジョンソンは言う。

馴染みがあるシステムというのは好条件ではあるが、それでもヒュンダイ、ホンダおよびその他ほぼ全ての自動車メーカーは、車種特有のアプリの開発を止めることは無いだろう。ユーザーの掌握とデータの問題だ。車種特有のアプリは車の機能のコア部分と捉えられている。緊急対応、室内調整、駐車機能、若年ドライバー運転モード、デジタルマニュアルへのアクセスなどがそうだ。実際、CES BMWは米国のオーナーが、車内から直接アプリやサービスの購入を行えるConnected Drive Storeを導入した。

今月初めにDetroit Newsが報じたところによると、ドイツの工業および政府のリーダー達は、国の主要工業の重要性を陰らす様なことや、グーグルが運転およびロケーションのデータにアクセスすることを望んではいないという。「我々が収集するデータは我々のものであり、グーグルのものでは無い。彼らが我々のOSに近い部分にアクセスすることは無い」と、Audiのチーフエグゼクティブ、ルパート・スタッドラーは新聞で語った。

第三者によるオープンソースでの自動車アプリにおけるイノベーションは、アップルおよびグーグルに脅かされつつある。そしてまた彼らも自社のスマートフォンのエコシステムを開発しようとしている自動車メーカーによって足を引っ張られている。この問題が解決するのに、あと数年はかかるかもしれない。

残念ながらそれまでのあいだ、ドライバー達は片手にハンドル、片手にスマートフォンという状況は変わらないだろう。

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