スマートフォンをレゴみたいに組み立てる、モトローラの実験プロジェクト

我々は一度、グーグルに騙されている。モトローラがカスタマイズ可能なスマートフォンを発表するという噂は数ヶ月の間世間を駆け巡った。噂の内容は、消費者がハードウェアの種類を好きなように選べるというもので、バッテリーを大きくしたり、プロセッサを選んだり、カメラのグレードを上げたりすることができるのではないかと言われていた。消費者向けのオープン・ハードウエア・プラットフォームという概念は、世界中のギークたちの胸をときめかせたものだ。

しかし実際に発表されたのは「Moto X」だった。確かに「カスタマイズ可能」なスマートフォンではあったが、その内容は、色が選べたり、バックカバーに刻印ができたり、スタートアップ画面に個別のメッセージを追加できるというようなものであった。我々が求めていたスマートフォン・ハードウエアの革命は、こんなものではない。

だがモトローラのエンジニアも諦めてはいなかったようだ。10月29日、同社は「プロジェクトAra」を発表した。ユーザーがコンポーネントを自由に選択して独自のスマートフォンを構築できる、オープン・ハードウエア・プラットフォームである。

「エンドスケルトン」に接続されたモジュール

モトローラの「プロジェクトAra」構想は一年にわたる。同社は、マジックテープで包まれた運搬車を使った「Sticky」と呼ばれるプロジェクトによってキャンペーンを行った。ハッキング可能なモトローラのスマートフォン部品と3Dプリンターの設備を車に積み込んで各都市を回る「MakeAThon」というイベントが開催され、エンジニアたちは生の部品を使って独自のスマートフォンを作成することができた。

これがプロジェクトAraの目指すコンセプトだ。モトローラによればプロジェクトAraとは、高度にモジュール化されたスマートフォンを作成するための「フリーな」オープン・ハードウエア・プラットフォームである。

デバイスは各モジュールと、モトローラが「エンドスケルトン」と呼ぶもので構成される。エンドスケルトンはデバイスのフレームのことだ。各モジュールとはハードウエアであり、ハードウエア開発者が思いついたものなら何でも良い。気圧測定と空気の湿度を専門に扱うスマートフォンが欲しい場合は?誰かがセンサー機能に特化したモジュールを設計・構築してくれれば、それをCPUやストレージ、カメラやラジオといった他の部品と一緒にエンドスケルトンに組み込めば良いのだ。

ara_prototypes

プロジェクトAra用のモジュール構築に向けて、モトローラは数ヶ月のうちにアルファ版の「モジュール開発キット」やMPKをリリースする予定である。

実現する「Phonebloks」

最初に「Phonebloks」を見たときは冗談かと思った。面白い発想だが、冗談なのだろうと思ったのだ。Phonebloksとは、オランダのデザイナー、デイブ・ハッケンズによって制作されたビデオである。彼は高度にカスタマイズされたスマートフォンを実現するため、ユニバーサルなマザーボードの上でハードウエアのブロックをレゴのように組み立ててスマートフォンを構築するという構想を描いていた。

Phonebloksのコンセプトビデオ(以下の動画)は実に魅力的だったが、残念なことにほとんどの人が時間を持て余したデザイナーの空想に過ぎないと退けてしまった。

モトローラはこのビデオを退けたりはしなかった。同社はハッケンズに会い、Phonebloksの実現を目指す人々のコミュニティを活用したのだ。そして今、ハッケンズのビジョンを実現できそうな、プロジェクトAraが誕生した。

コンピューターがどのように作られるかを知っている人であれば、Phonebloksを風変わりな夢想だと片付けてしまうだろう。スマートフォンレベルのハードウエアは、専用のモバイル・オペレーティング・システムで動作するよう緻密に構築されている。スマートフォンにカメラを付けたければ、そのカメラはAndroidかiOSかWindows Phoneで動作する必要があり、またコンピューター・プロセッサ、グラフィック・プロセッサその他各種のハードウエア/ソフトウェアに対して互換性がなくてはならない。

ユーザーが手当たり次第に選んだどんな部品も組み込めるオープン・ハードウエア・プラットフォーム?そんなものは品質保証の面から考えたらまるで悪夢である。

オープンソース・ハードウエアの開発者たちがこの実験のために新しいモジュールの開発を行うにあたり、Project Araはおそらく互換性の問題に行き当たるのではないだろうか。モトローラはこのプロジェクトの提唱者として、Araスマートフォンの全ての部品が相互に問題なく動作するために、プラットフォームに対する明白な基準と開発手法を示す必要に迫られるだろう。Araが超えなくてはならない最大の難関は、オープンソース・モジュールの開発者たちを団結させることではないかと思われる。

断っておくが、Araはまだ実験段階に過ぎない。どこかの大学のキャンパスで、学生たちが独自のオープンソース・ハードウエアのスマートフォンをいじくり回しているようなものであり、実際のデバイスが市場に出ることはないのだ。似たようなプロジェクトは、ケンブリッジ大学のMITメディアラボでも行われている。

だが、もしモトローラがAraから実行可能な商業プロジェクトを立ち上げることができたならば、それはDIY(do-it-yourself)ムーブメントの集大成であり、MotoXが創設された当初の夢の実現を意味するのだ。