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マイクロソフト(MS)はかつて悪者だった。それはもう不適当だ。今彼らは勝者のように見える。

いったい何が起きたのだろうか?

私はキャリアを通じてMSとやりあってきた。Windowsに対してはモバイル・デスクトップそしてサーバー市場でLinuxの側についてきたし、SharePointについてはAlfrescoに、そして現在、SQL Serverに対してMongoDBの側に付いている。私は多くの時間を、コンピューティングにおけるレドモンドの支配に抗うために割いて来た。それもここ数年までの話だ。MSはMSのこれまでのやり方で未来を築いてはいない。

彼らは自分たちの未来をオープンソースを用いて築いている。

そしてここ数年で、MSは最前線に戻ってきている。その戦略は変わらないにも関わらず、競争力を増すためのキーとなる変革を断行した。

MSの過去の亡霊

MSが悪者であった過去を、今更説明する必要はないだろう。一極化した権力を振りかざすその企業はあらゆる者から憎まれた(今ではOracleがその立場にいるが)。しかしながらユーザーや企業はそれでも、MSが他の企業よりも複雑な技術を容易に使える形で提供する事から、その商品を買い続けた。

そしてMSが支配的であった時代は、停滞期でもあった。

レドモンドの巨人は死に体であったが、それに気づいていなかった。過去のビジネスモデルによって生まれた過去の収益によって成り立っていた。

確かにMSはオープンソースに対して何かとちょっかいを出してきた。また自社の製品群にクラウドの機能を提供してきた。しかしそのビジネスの中核は、昔ながらの手法によるものだった。

更にいうと、MSは自社が他より優れた企業であるための根本を蔑ろにしてきた。しかしこれは変わりつつある。MSの新CEO、サトヤ・ナデラがVanity Fairで以下のように語った。

まず事柄のうち、何が足りていないかというとそれは人の注目だ。ソフトウェア・エクスペリエンスを作り出すために最高の仕事をすれば、それを用いる個人及び企業は更に多くの時間あたりの価値を手にすることが出来る。それがこの会社のコアであり、魂と言える部分だ。

この点は、何にもましてMSを素晴らしい物にしていたものであり、そしてMSに何よりも欠落している要素だ。MSは古いやり方で凝り固まっており、ソフトウェアライセンスビジネスに依存しきっている。これでは未来はつかめない。

しかしナデラのもと、こういった事は変わりつつある。

MSは昇り調子

例えばMSのIaaSクラウドであるAzureは、クラウドの雄であるAmazon Web Serviceを本気で焦らせた。その理由はいろいろあるが、MSがデータセンターの負荷をクラウドにシームレスかつ簡単に分散させる技術などが挙げられる。

しかしながらそれ以上に目を引く事が起こっている。ビル・ベネットが取り上げる所によれば

クラウドコンピューティングは素晴らしいものだ。しかしDropboxやOneDrive、iCloud以上のものは、ITのプロ以外にとってハードルが高い。Amazonは企業向けクラウドサービスのマーケットリーダーだが、AWS EC2上でのサーバーやWebサイトの構築を簡単に説明することは出来ないだろう。かたや、MS Azureでサービスの利用を開始する事に躊躇することはない。MSが提供するクラウドコンピューティングは、Wordドキュメントを作成するようなシンプルさでサーバーの構築を可能にしている。

大事なことだが、MSはカスタマーが徹頭徹尾MS製品に依存しなくても、この「私達でも使えるクラウド」を利用できるようにしている。むしろMSはオープンソースをAzureにおける一等市民といえるところに位置づけている。これはMSが悪者だった頃も含め、今までにはあり得なかったことだ。

なによりAzure自体がオープンソースに関わっている。MSは相も変わらずMSだが、オープンソースに対する貢献が容易になるよう試みてもいる。とりわけ、プル・リクエストとして知られる、オープンソースのコードレポジトリに変更を加えるプロセスがそうだ。スコット・ハンセルマンの解説によれば、

AzureのメンバーはAzureプルリクエスト・ボットというものを作った。これは自動的に「プルリクエスト」を検出し、コントリビューターが「コントリビューター・ライセンス・アグリーメント」を必要とするときにこれを解決し、オンラインフォームをセットアップする。電子署名の受付の他、多くの機能を有する。更に良いことには、ボットを起動する方法はプルリクエストを送ることだ

これは今までのMSとはだいぶ違う。

MSは利用が困難なテクノロジをシンプルに、かつセキュリティなどを犠牲にすること無く提供してきた。事実、あるIT企業の幹部は、「MSのクラウドは自分が用意できるものよりもセキュリティがしっかりしている」と指摘する。

ついにMSの革新性が帰ってきた。MSは初めて「Database as a service(DBaaS)」というクラウドサービスを市場に提供した。AmazonはDynamoDB DBaaSへのJSONのサポートに留まっている。
しかしJSONサポートと完全なドキュメントデータベースとでは、大きな差がある。

ドキュメントオリエンテッドなDBaaSの追加は、MSのSQL Serverビジネスに壊滅的な影響を及ぼしかねないという点で、非常に大きな意味を持つ。451リサーチによるLinkedInの分析では、ドキュメントデータベースはNoSQLにおいて寡占的な立ち位置にある。

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「NoSQLスキルの相対的な採用率 – LinkedInメンバーを対象に調査(2014年9月)」(Source: 451 Research)

この寡占状態は日々顕著になっており、機能面での幅広さにおいて肩を並べる存在であることから、幅広いアプリケーションにおいてRDBMSの存在を脅かしている。

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「LinkedInでのNoSQLスキルの指数(2014年9月)」(Source: 451 Research)

にも関わらず、MSはNoSQLデータベース業界に大きく貢献することにハッピーなように思われる。

レドモンドの意図を真摯に考える

明らかなように、MSはトップベンダーとしての地位を失った事はない。しかし企業のITについて意思決定を行う開発者達の動向はというと、ガートナーの試算では、IT資源の38%はIT部署の管理を離れており、2017年にはこれが50%にもなるという。MSも開発者にアピールしなければならない。

そしてこの事は単にスティーブ・バルマーに唄われるような保守的な開発者だけに留まる話ではない。MSはオープンソースを好み、クラウドを当たり前と捉える、新世代の開発者をも納得させる必要がある。

ナデラが率いる新しいMSはこの事を理解し、そういった方向で動いているように思える。しかしMSが古くから持つ、複雑なテクノロジーを簡単にという考え方だ。

MSがもう悪者でないのはこういった理由からだ。悪者というのが不適当なのであれば、彼らは競争者として戻ってきたと言うことだろう。

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