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クリックを弁護する側として語らせて欲しい。

「クリックベイト(Click Bait)※」という言葉ほど、最近出てきたもので私が考えさせられるものはない。物語は語られるものであり、作者は読者のために書く。語り手はその聞き手のために語る以上の何をするというのだろう?

※ウェブページ上で閲覧者にクリックさせるための餌(えさ)となるリンク

かつてのWebでは、クリックは終わることのない情報にアクセスするための目新しい物だった。クリックしクリックしクリックして、ネットの最果てに至るまでクリックし続けた。

20年たった今、クリックはトリックとなり、読者自身が気づかずに、あるゲームに巻き込まれる様なことも起こった。

確かに読者に、オリジナリティのないどこかから拾ってきた様な話に、全然関係のないお情け話を絡めたような記事を読んでがっかりさせる事は出来る。

見落としているのは、つまらない話やつまらない語り手が存在するからといって、素晴らしい話まで聞く価値がないという事ではないということだ。

それを主張したいが為、この記事を書くことにした。

そもそもWebの根本にあるのは、誰でも書いて、それを誰でも読めるということだ。

「クリックベイト」の虚構とは、誰もリンクを踏んでくれないのではないか? 読んでくれないのではないか? という事が全てと捉えている点にある。

本当の問題はクリックのもつ奇妙な特性にあるのではない。問題は玉石混交の中から素晴らしい記事を探し出すことは、まだまだ難しいという点だ。
Webはもっぱらキリがないリンクによって成り立っており、我々はネットの最果てに行き当たる事はない。しかし実に悲劇的なことに我々はそれを探すことを止められないのだ。

クリックはやがて中毒になる

FlipboardのCEO、マイク・マッキューと話していて楽しい理由の1つに、彼が早期からのWebのベテランであるということが挙げられる。

8月初旬、ReadWriteMixシリーズのイベントでマッキューと、彼がPaper Software(最終的にはインターネット初期の成長を支えたブラウザ企業であるNetscapeに売却することとなった企業)を設立してからの四半世紀に渡り、どの様なことが起こったかについて話をする機会があった。

彼のキャリアはPaperの3Dグラフィックに始まり、Twitterの前触れとも言えるWebサイトにアップデートがあった際に通知するNetscapeのNetcaster、そしてWebに音声操作を持ち込んだTellmeからFlipboardに至るまで、情報発信者へのツールを提供する事に関係している。

Flipboardは、2010年にiPad用に作られたニュースリードアプリとして知られている。知らないのであれば、TwitterやFacebookで知り合いに訊ねてみるといいだろう。Flipboardは大きなニュースへのリンクを収集する為の編集者を内輪に持っており、大手の出版社の記事を更に面白いものにするためパートナー契約を結んでいる。

これは去年Flipboardが全ての人に門戸を開く事で大きく変わった。誰でもリンクを放り込むだけでWeb雑誌を作ることが出来るようになり、本物の雑誌と同じく、それらを誰もが購読できるようになった。

これのビジネスにおける効果は明らかだった。700万ほどのFlipboardユーザーたちは創作する側に回り、8月前半の時点で1000万のWeb雑誌が作られている。そして溢れこんできたこれら新しいコンテンツは新規のユーザーを呼びこむこととなり、2013年3月時点で5000万だったユーザーは、今日では倍の1億になっている。

Flipboardは製作者に編集のためのツールと読者を用意しており、この中で創作活動を行えることが、この環境を他のデジタル雑誌より優れたものにしている。

視聴者はネットワーク

この文章で述べておきたいことに、発信のためのツールと客寄せのためのツールが不可分であるという事がある。Flipboardの編集ツールはエレガントにデザインされているが、何よりの肝はあなたのジャック・ラッセル・テリアの写真集みたいなものにでも興味を持つかもしれない1億人のユーザーだ。

これはTumblrやYoutubeといった、全く違うタイプの情報発信のメディアが注目を集めている事の説明でもある。これらはコンテンツ作りのためのツールと配信のためのツールを兼ね備えている。Tumblrではユーザーをフォローし、購読をソートし、投稿をリブログボタンで拡散できる。Youtubeでも同じだ。10億人以上がこのサイトを視聴しているにも関わらず、人々はそれぞれ製作者のチャンネルを購読し、熱烈なファンカルチャーを形成するに至っている。

メディアがメッセージだとするならば、聴衆はネットワークだ。

ReadWriteの親会社であるSay MediaなどもTempestと呼ばれるWebサイトの発行ツールを作り、お抱えのReadWriteやその他の発行者に広告を販売している

媒体について言うと、素晴らしいストーリーがあるにも関わらず聴衆に恵まれない場合に何が起こるかという事について、Twitterの共同設立者であるイブ・ウィリアムズが最近立ち上げた、Mediumと名付けられたスタートアップ企業の例を挙げたい。
人々はこの企業が提供するコンテンツ作りのインターフェイスを絶賛した。これはWordPressやBloggerなどと比較しても大きな強みだ。しかし製作者側には記事の掲載を約束し、場合によっては金銭も支払うとしているにも関わらず、視聴者サイドに対してあまり多くのものを提供しているとは言えない

有名な刊行物、LadyBitsがMediumを辞めるにあたって、コンテンツマネジメントと支払いスキームについての不満を述べた興味深い記事がある。これについてMediumの編集長、エヴァン・ハンセンは以下のように述べている。

今回学んだことは、クリック毎に支払いが発生するというスキームは、大量の中身のない投稿を生みだす手段とはならないということだ。我々は信頼できる編集者を選び、ほとんどの場合彼らはサイトに敬意を払い質の高いコンテンツを上げていた。しかしながらそうした質の高いコンテンツがあるからと言って、その努力に見合うほどの視聴者の注目を集めるわけではないという事は、驚くべき発見だった。結果、我々のペイメントモデルは一部の貢献者に対して十分な見返りを与えることが出来なかった。

クリックベイトは必要ない。

FlipboardはMediumと同じ状況になろうとしており、雑誌の広告から得られる収入をシェアするという形で、一部の貢献者に支払いを始めている。最初の三ヶ月はFripboardは製作者たちに対して100万ドルの小切手を切っている。これはまだ小さな始まりだ。

Youtubeは自己表現のための制作ツール、多くの聴衆を生むシステム、トップクラスのクリエイター達に報酬を支払う仕組みをバランスよく兼ね備えているという意味で、恐らく最良の一例だろう。この事はYoutubeが事実上のオンラインビデオとしての立場を揺るぎないものにするのに大きく役立っている。

Flipboardやその他の候補が、この3点、「ツール・聴衆・資金」をセットでモバイルプラットフォームに提供できるだろうか? もしあなたが私のように記事を読んだり書いたりすることに興味があるのであれば、この問題を解決しようとしているサービスを応援するべきだ。

トップ画像提供:Kara Brodgesell

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