顧客がすべていなくなる前に:オラクルがクラウド囲い込みに方向転換

ラリー・エリソンがクラウドコンピューティングを「まったくわけが分からない話」とこき下ろして5年になるが、彼の会社は昨日、「Oracle OpenWorld」で10ものクラウドコンピューティング・サービスを発表した。

エリソンは自分ではそれらの新しいサービスを発表していない。それどころか彼は会社の年に1度の展示会に出席すらしていなかった。代わりにエリソンは会社のボートの上からアメリカズ・カップ・レースに参加しているOracle Team USAを眺めることを選んだのである。(公平を期すために言っておくが、このレースでオラクル・チームはメジャー復帰を見事やりとげている)

この鼻持ちならない行動は彼の性格の一面にすぎないのかもしれない。しかし事あるごとにクラウドコンピューティングをさんざんばかにしてきたこれまでの戦略を会社が完全にひっくり返すときに、その場に居合わせたくなかったとも考えられる。クラウドコンピューティングに関する彼の痛烈な批判から1年後の2009年、エリソンはチャーチル・クラブのイベントで出席者にこう伝えた

クラウドは水や霧と同じだ…クラウドコンピューティングはコンピューティングの将来ではなく、コンピューティングの現在および過去全体を含んでいるのだ…
私たちの産業は非常に奇妙で、用語をちょっと変更しただけで新たなテクノロジーを発明したと思ってしまう…「それを『クラウド」』と呼ぼう」などという安直な言葉の差し替えだけでは何も変えられないのに。

オラクル:「ちょと待った!やっぱりそれを『クラウド』と呼ぼう!」

1つ気になるのは、オラクルの顧客たちが「Business Intelligence Cloud」、「Compute Cloud、Database Cloud」、「Object Storage Cloud」といったオラクルの新しいクラウド・サービスをどう見るかという点だ。これらはオラクルがクラウドに送り出した商品の全てではない。「Oracle Databaseサービス」、「Oracle Javaサービス」、「Oracle Infrastructureサービス」などもまた、利用可能な製品の一部である。

果たして、これらのただラベルを張り替えだけの技術群が、オラクルのエコシステムから他のベンダーとサービスへの顧客離れを防ぐことができるのだろうか?「Compute Cloud」は完全にアマゾンの「EC2 service」の競合サービスだし、「Object Storage Cloud」も間違いなくアマゾンの「S3 service」のライバルである。エリソンの過去のコメントに基づけば、これらの製品は少々皮肉だと考えざるを得ない。

ただこれは戦術上、オラクルが取れる最良の選択だろう。エリソンの考えとは反対に、顧客はクラウドコンピューティング求めているのであり、それを求めてオラクルを去り始めているのだから。オラクルのライセンス・コストが依然として高いと思われていることも原因の一端かもしれない。顧客はたとえベンダーを変えてでも、より安価なサービスに乗り換えるという現実的な決断を下すだろう。

オラクルは明らかに、オラクル1社に支配されたサービスを顧客に提供し続けることを望んでいる。この戦術につられて、顧客はサービスの移行につきものである痛みに耐える気力をそがれてしまうだろう。たとえ最終地点がどのようなものであろうとも。
サービスの移行というものは、絆創膏を剥がすのに似ている。やらなくてはいけないと分かってはいるのだが、それが痛みを伴うことも知っているのだ。

これらのクラウド・サービスはすべて、絆創膏まだもう少し貼り続けておくように人々を説得するための、オラクルの方便なのである。

画像提供:Reuters/Robert Galbraith

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