ここ数十年、音楽業界が芳しくないのは周知の事実だろう。長らく続いたアルバムの売上不調に続き、2016年には売上わずか1億枚と市場が底を打つ結果となった。前年から14%の減少であり、物理、デジタル問わず、アルバムの販売が低迷していることを物語っている。

言うまでもなく、低迷する業界は音楽ストリーミングへ移行し、売上は物理媒体のそれを昨年追い越した。ストリーミングの売上は66億ドルと41%にあたる急成長を遂げ、業界は新しい金の卵を産むガチョウと捉えている。

音楽業界はストリーミングに反対することで何十億もの損害を出してきた。CDの売上が81%も下落していることに目を背け、CDとダウンロード音楽に注力してきた音楽業界は、NYタイムズの指摘通り、ようやく自分たちが大きな損失を度外視し、小さなことに気を取られていたと気付いたのだから、良い方向転換だったと言えるだろう。

ミュージシャンへの損害は?

「ミュージシャンへの見返りがないのではないか?」と、かつて業界から嫌われたテクノロジーにも変化が訪れている。元Spotifyのクリエイティブ・トップであるトロイ・カーター氏は、レーベルはストリーミングで得られたロイヤリティを溜め込んでおり、それは手数料の70%以上にもなるとTechCrunchで述べている。ミュージシャンがレーベルと交わす契約書は、ミュージシャン自身ではなくレーベルの収入が優先される内容となっている。通例、成功するアーティストは契約する20名のうち1名程度で、レーベルがリスクヘッジのためにこれら20名に保険を掛けるのは妥当な判断だ。

カーター氏はより多くのユーザーがサインアップすることで、ストリーミングはCDの全盛期が生み出していた利益に並ぶことができると考えている。Repostのようなプラットフォームは1つの賭けに出ている。このプラットフォームはミュージシャンがオンラインでライブをし、他のアーティストと協力して音楽配布を収益化し、自身の活動をプロモートするために設計されたものだ。

様々なプラットフォームやテクノロジーが開放されているにも関わらず、ミュージシャンが自身による音楽の収益化は非常に困難で、状況が分断化されているのも大きな問題の一つだ。RepostのCTOを務めるジョーイ・メイソン氏は「音楽業界は必要以上に複雑な状況にあります。技術がこれだけ進んでいるにも関わらず、利益の回収の面においては未だに非効率的な構造になっています。更に悪いことに、著作権や規制がテリトリーによって異なるので、場合によっては利益の回収がコストに見合わない事もあるのです」と語る。

メイソン氏は、問題はミュージシャンが稼ぎを回収する為のテリトリーをまたいだシームレスな方法がなく、利権団体やレーベル、出版、ディストリビューターなど、いくつもの団体に働きかける必要があるところに起因するという。ミュージシャンにとっては新しい音楽を作り出すことよりも、ビジネススキルを身につけることが余儀なくされているという。

必要なのは業界全体の統一感

メイソン氏と共同設立者兼CEOのジェフ・ポンチック氏がRepostを設立した際、彼らの目的はミュージシャンにとっての障壁を出来る限り取り除くことだった。話を聞いた多くのミュージシャンが主にぶつかる点はパブリシティについてであり、一個人のミュージシャンとしての限界に行き当たり、次のステップに踏み出すための手助けを必要としていた。こういったミュージシャン達はプレスに記事を書いてもらったり、プロモーションのための販路を開拓したり、SoundCloudやYouTubeで視聴回数を稼いだりと、多くのタスクに向き合うことになる。

これらが如何にミュージシャンを疲弊させるものかお分かりだろうか。Repostは全てのタスクを一気通貫で対応できるショップだと位置づけている。プラットフォーム側が複数に渡るディストリビューションや支払い口を無くすことで、様々な障害の軽減を可能にしている。

「大勢の人達は音楽ディストリビューターとレコードレーベルの違いをわかっていません。ディストリビューターは売上の30%という、我々からしたら考えられない額の利益を持っていきますが、もう片方が持っていくのは売上の5%です。我々が提供するのはレーベルとマーケティングサービスであり、そのやり方はレコードレーベルが行うものと同様ですが、相違点として、音楽に対する所有権は主張しません。ミュージシャンはレーベルと契約することなく、個人として独立できるのです。月2万から3万ドルで音楽の所有権を維持し続けられます。」と、ポンチック氏は語る。

Chance the Rapperはレーベルと契約せずに成功したことで知られるインディー・ミュージシャンの一人だ。彼の成功は業界では「おとぎ話」のようなものだと考えられているものの、Repostのチームの目的は個人の成功を可能にすることである。応募はアルゴリズムによって判断し、アーティストたちはSoundCloudのIDを使って応募する。Repostのアルゴリズムはそこからアーティストの持っているチャンネルや、動画の平均再生数、フォロワーの数などから、プラットフォームを通じて収益的に回るかどうか判断する。

データに基づいたこのアプローチで応募のうち10万件が蹴られ、5000件が受け入れられた。だが、このアプローチはRepostがむやみやたらに手を広げ過ぎず、これまで音楽業界がアーティストにやってきたインチキなサービスを提供しないことを可能にするものだ。

テクノロジーが音楽にとっての「ベストフレンド」になり得るか

Repostはアーティストたち以外の事にも目を向けている。SoundCloud, Spotify, YouTubeなどが提供する技術インフラの管理は本質的に難しいものだ。アーティストがインディーであろうがアリーナを埋め尽くすほどの知名度があろうが、この事実は変わらない。

「全ての音楽プラットフォームは、コンテンツの配信方法や収益化の方法、視聴方法などにおいて、それぞれがユニークなものです。収益を最大化するには、アーティストがそれぞれの収益化戦略と何を実践することがベストなのかをしっかり理解しなければなりません。高度なインサイトとプラットフォームごとのコンテンツ管理を提供するディストリビューターの協力が必要になってきます。」とメイソン氏は語る。

残念なことに、ほとんどのディストリビューターは汎用的なアプローチしか取らないため、プラットフォームに合わせた利益の最大化は望めないと言う。Repostはマーケティング、収益化、コンテンツ保護に重点を置いた、音楽プラットフォームとの深い技術的統合を実現することでこの問題を回避している。Repostのクライアントベースは口コミで広がり、今では年間数千万ドルをアーティストに支払うようになっている。

例を挙げると、アーティストに利益を還元するためにRepostはYouTubeを通じて拇印を取っている。Repostは数千人規模のアーティストのレコーディングの権利に関する情報を集積し、YouTubeに配信する。この情報からYouTubeは同プラットフォームで合致する動画を探す。合致する動画が見つかれば、アーティストに代わって権利を主張し、動画の広告や購読などで生まれた利益がアーティストへ還元される。

テクノロジーは音楽業界でかつて不可能だったことを実現し、音楽制作をより民主的にしている。「音楽制作はこれまでになく手軽で手を出しやすいものになってきています。ラップトップPCとAbletonがあれば、誰でもヒット曲を作ることが出来るのです。ミュージシャンにも“中産階級”が現れ、資金が上流階級へ流れるようになってきています。レコードレーベルはテクノロジー企業ではないため、この規模の変化に追いつけていません。彼らのビジネスモデルは、より限られた数のアーティストを相手に、彼らの音楽を所有するように出来ています」とメイソン氏は説明する。

Repostは自身をテクノロジー業界の音楽企業ではなく、音楽業界のテクノロジー企業であると位置づけている。Repostのビジネスモデルは数多くのアーティストと共にあり、オートメーションに資金を掛けている。これにより、音楽の所有権に基づかない収益シェア型のビジネスモデルを可能にしている。メイソン氏は「クリエイター達にとっては都合が良いため、彼らはレーベルと契約するのではなく独立することを選ぶのです」と述べる。

音楽業界は長年低迷してきたが、テクノロジーが解決しようとしている。Repostのような企業がテクノロジーやオートメーションを通じて業界の長年の常識に勝負を仕掛けているが、彼らはまた、音楽業界が他の業界同様に効率的なビジネスに至るための道筋へ導こうしているのだ。