インターネットが登場して以来、世界で革命が起こり続けている。組織や企業が効率的に動けるよう繋がったわけだが、私達の体や家庭、コミュニティー、グッズやサービスその他全体のエコシステムまでがつながったわけではない。このギャップを埋めようとするのがIoTの流れだ。この先10年ほどで私達の生活を一変させることだろう。人と人、人とモノ、そしてモノとモノとで構成される想像もできないような巨大なネットワークにより、誰がどの様に判断するか、そしてその判断がどこでなされるかといった点で、我々の生活は根本から変わることになる。

私達が住んでいる建物や普段購入する商品、食べ物を含めて、あらゆるものがIoT(モノのインターネット)の一部となる可能性を秘めている。そしてIoTの開発者達が次に目をつけているのがスマートスーツケースだ。

荷物の心配をなくすスマートラゲッジ

旅行が飛行機であれ鉄道であれ、盗難や誤送、損壊などの懸念は常にある。タグ付け、追跡、位置の特定:荷物を機内持ち込みする事で行列待ちの手間が省けるが、荷物を預けるとなるとタグを付けてカウンターにチェックインするため、時間も人手もそれなりに掛かる。この手続きを簡略化するために、ドイツの荷鞄製造業者がEインクディスプレイを備えたスーツケースを発売した。普通の紙ベースのタグと同じ大きさをしたEインクディスプレイに対応する航空会社のアプリか、同社のアプリから情報が集められる。航空会社のアプリのチェックイン機能を使い、この電子タグと情報を同期することで、カウンターで荷物を預ける手間が軽減される。

荷物の紛失は旅行者にとって気持ちが滅入るアクシデントだ。だが、IoTベースのソリューションがあればこういった心配もなくなるだろう。RFID技術により、スマートスーツケースのタグに保存されている情報が常に正確なスキャナーで収集され、シンプルかつ効率的な荷物の追跡が可能となっている。旅行者は荷物の場所を常に把握し、確実に搭乗する飛行機に積み込まれ、目的地で荷下ろしされたことが確認できるようになる。数多の検証結果により99.9%の成功率を誇り、世界344か所の空港で採用される見込が高い。RFID技術と管理報告システムの組み合わせで、荷物のハンドリングがより効率的になるだろう。

施錠:荷物を施錠したものの、鍵を紛失したり暗証番号を忘れてしまったりといった初歩的なトラブルは少なくない。スマートフォンによる解錠や指紋を使った施錠、GPSにより飛行機に積み込まれている際も施錠されていることが確認できるスマートロックなど、よりスマートな施錠方法が検討されている。

重量制限の問題:荷物の重量制限を懸念しない旅行者はいない。スーツケースの製造業者達も、材質や設計などの改良を続けている。そんな中、多くの企業が重量の制限値をスマートフォンから確認するための重量計を、スーツケースに組み込む施策が検討されている。

遠隔操作できるキャスター:キャスター付きのスーツケースは、当然旅行者が手で引く必要がある。この手間を改善するため、手で引く必要のない遠隔操作できるスマートスーツケースが普及しようとしている。さらにスーツケースのハイテク化が進む中、とうとう先月、史上初となる「視覚」をもったスマートスーツケースが登場した。この、スーツケースはユーザーを認識し、周りの状況を分析し、時速6マイルでユーザーと同行することができる。前方に障害物があればユーザーの後ろにも周ってくれるのだ。

ベッドやキッチン、オフィスにもなるスマートスーツケース?

ベッド、キッチン、仕事場を全て荷物としてまとめられるなんて想像したことはあるだろうか?先月登場したオーストリア生まれのデザイナーが設計したスーツケースがこれを実現した。外装にアルミと木材、内装にレザーをあしらい、様々なデザインのものがある。このスーツケースはデスクや寝袋にも形を変えることができる。次の展開として考えられているのは折りたたみ式のまな板やミニ冷蔵庫、電源にカトラリーをしまう引き出しを備えた、キッチン機能付きスーツケースが予想されている。

水を差す規制と不十分な法整備

北米の航空会社がリチウムイオン電池を規制して以来、スマートスーツケースに課題が突きつけられている。スーツケースをまさにスマートなものにしているこのバッテリーは可燃性が非常に高く、飛行中に火災を起こすこともあり得る。PCなどのデバイスやスーツケースに入れられたリチウムイオン電池は許可されているが、スマートスーツケースについては頭上のキャビンに収められることから認められていない。この規制を緩和する方法として、航空会社がバッテリーを外した状態のスマートスーツケースの搭載を許可するというのが考えられるが、ここで二つの問題が浮かび上がる。

まず、取り外しのための分解作業に恐ろしく手間がかかるであろうということ、そしてバッテリーが外されたスマートスーツケースはただのスーツケースに過ぎなくなるという点だ。今年始まったこの規制により、何社もが難しい立場に追いやられている。スマートスーツケース市場にとっても大きな痛手となり、人々もこれらを買い控えるようになるだろう。旅行者が飛行機につめるスマートスーツケースは、取り外し可能なバッテリーを備えたものだけになるだろう。

また通信の問題を考えると、スマートスーツケースに見込まれる可能性は空港に限定されるであろうことも、問題を深刻化させている。加えて電線やネジ、バッテリー充電器やRFIDタグを備えていることから、荷物の検査時に紛らわしい状況も引き起こす。また、個人情報や旅行プランなどの情報の漏洩といったセキュリティ的な要因も、スマートスーツケースの普及の遅らせる一因だ。

規制がもたらす影響はスマートスーツケース市場に間違いなく影響を与え、製造業社は他の市場に目を向けるか、商売自体を止めてしまうだろう。業者の中には組み込み式ではないモジュール型のオンボードバッテリーの製造を始めているが、スマートスーツケースのポテンシャルは未だ完成からほど遠い。