2018年4月初旬、米国証券取引委員会は連邦裁判所にロングフィン社の株の不正売却で得られた資金2700万ドルの凍結を申し出た。同社の株は仮想通貨ビジネスの買収を発表して以来、株価が5ドルから142ドルに跳ね上がっている。同じくして、連邦取引委員会は不正行為を行なった一群の個々人に、ビットコインまたはライトコインで決済する投資スキームにより、投資家たちを欺いたとして罰金を科した。また、別の被告はジェットコインという詐欺まがいの仮想通貨をプロモートしたとして訴えられている。

こういったニュースは人々に仮想通貨が如何わしいものだという印象を与える。ビットコインやその他の仮想通貨は、犯罪者が秘密裏に取引するためのものではないかと思う人も少なくはないだろう。しかし、大事な点として、仮想通貨は匿名性のあるものではなく、それは銀行当座と等しい。

2018年1月にコインチェックは大規模なハッキング被害を受け、およそ580億円相当の仮想通貨「NEM」を失った。頭が痛くなるような金額だが、さらに痛い点はコインチェックが仮想通貨をオフライン管理できるコールドウォレットではなく、オンラインの「ホットウォレット」に保管していたことだ。また、出金するために複数のシグネチャを必要とするマルチシグネチャウォレットも使っていなかった。仮想通貨業界の問題はセキュリティ自体ではなく、それを扱う人の資格に起因している。

客観的に見てみよう

先日、イギリスの大手一般新聞であるガーディアンの記事で、アメリカの四大銀行の一つであるJPモルガン・チェースでCEOを務めるジェームズ・ダイモン氏は「ベネズエラ、エクアドル、北朝鮮といった地域に住んでいる、あるいは麻薬の売人や殺人者のような連中であるのだとしたら、限定的なマーケットではあるが、米ドルよりもビットコインに手を出すといいだろう。」と言及している。氏の意見には一理あり、麻薬の売買やマネーロンダリング、売春などの行為の決済にビットコインが使われたことは事実だ。だが米ドルこそ、これらの決済に最も使われていることも事実である

米国がその価値を全面的に担保しているドルは、ビットコインよりはるかに多額が違法行為やテロ活動などで用いられている。犯罪者達も金銭を使う点においては我々一般人と変わらない。ただ、ビットコインは全ての取引で変えることのできないパブリックな記録を残す。そういった意味で普通の金銭と同じというわけではない。

実際のところ、犯罪行為につぎ込まれる大量の資金を追跡するための法整備が進むにつれて、犯罪行為に用いられるビットコインの金額は減りつつある。そんな中、注目されているのが「モネロ」などの追跡しにくいよう設計されている通貨だ。例を上げると、2017年12月に「モネロ」を解放の身代金として一時間あたり19万のWordPressを使ったサイトがハッキングを受けた。だがこうした犯罪行為に使われるようになったことから、「モネロ」は他のデジタル通貨のような信用を得ることはないだろう。

仮想通貨の次なるステップ

仮想通貨はブロックチェーンの公共的な特徴から、既存の手段と比べてより透明性の高い公益の手段である。通常の通貨と異なり、特定の資産の出所を遡って追跡することができる。つまり仮想通貨を使った銀行業より、リスクが少ないものになるということだ。

仮想通貨の勢いは今後も増すことが予見され、法整備も進んでいくことだろう。法整備によって最初は市場の動きが悪くなるものの、結局は個人にとっても企業にとっても投資をする上での信頼性が保証される。

犯罪に関わるデジタル取引を追跡し、その責任を追及する企業も現れて来ている。例えば、Chainalysisはビットコインや銀行の適切な取引を手助けする会社だ。違法な取引を見張ることで資金の流出先を追いかけ、現金化される際に犯罪者が特定することができる。取引には口座番号や他の個人情報が必要になるため、何度違法な取引を行ったとしても、特定の個人の行動に結びつけることが可能だ。

イノベーションとの接点

仮想通貨が次に向かうステップとして、銀行で取り扱われるようになることだ。そうすることで法整備がいい加減なプラットフォームに留まることなく取引のコンプライアンスは保たてるようになる。それでも尚、既存の金融機関は仮想通貨に拒否感を示し、これを強みとなる資産ではなく脅威とみなすことだろう。仮想通貨が人気を得ること自体に難色を示されるかもしれない。

例を上げると、バンク・オブ・アメリカは同社の資産管理部門であるメリル・リンチで、ビットコインにまつわる投資を扱っていたファイナンシャルアドバイザー17,000人の首を切った。また、同行(及びJPモルガン・チェース、シティグループ)は顧客がクレジットカードを使って仮想通貨を買うことも禁じた。マネーロンダリングなどのコンプライアンスに反していないことを担保するのがますます難しくなってきている現状をその理由に挙げている。

しかしイノベーションを推し進めるためのブロックチェーンの活用に失敗しているものばかりというわけでもない。マスターカードなどはより高い取引の透明性、スピード、国際間取引の低コスト化を実現する上で、自社のブロックチェーンソリューションを構築しようとしている。仮想通貨とそれを下支えするブロックチェーン技術を取り入れることで、金融機関は強い競争力を得ることが可能になる。

仮想通貨に関するニュースを見ていると、恣意的な情報にとらわれがちになるかもしれない。だが過去のニュースに目を向け、仮想通貨の根本に立ち返ってみれば、このユニークな業界が提示する可能性に気付くはずだ。