AIの役割の多くは顧客へのサービスであり、AIをサポートしたスマートデバイスはあらゆる家庭に入り込んだ。2017年ではクリスマスプレゼントにAmazon Alexaを注文するためにAlexaが使われているような状況だ。人工知能は我々の文化に食い込んできているが、全ての業界がその有用性を利用しているわけでもない。

SpiroのAdam Honigとその共同設立者はAIがセールスエクスペリエンスの改善に使われ出していると言っている。企業はCRMなどを使って継続的に営業努力をサポートし、新たな商機を掴んでいる。しかしSpiroのCEOであるHonig氏は、多くの企業はこういったプラットフォームから正しいデータを得ておらず、また正しく解釈されていないと語る。

Spiroはeメールベースのインターフェース(eメールボット)を備えた、AIを使って営業マンの予定表やメールなどの既存のデータを活用し、次のスケジュールやToDoリストの作成を行うCRMシステムだ。AI機能により人が表計算ソフトを使うよりずっと早く情報を処理でき、CRMが取引をクローズするためにどれだけのフォローアップが必要か、どういったフォーマットが効果的かの予想を立てられるようになる。

だがこれはまだSpiroの目指しているところでは無い。

 

AIが人手頼りな業界にもたらす恩恵

AIが人以上にデータを上手に処理できるのはよく知られている。MIT(Massachusetts Institute of Technology)のソフトウェアスタートアップ企業は、多くの人が予測するより、より優れた予測モデルを開発した。2060年までにはAIがあらゆる意味で我々を上回るようになると予想もある。しかしそれでも限界はある。Sheffield大学のEleni Vasilakiは「人のような多様性を持ったAIが近いうちに現れると言える確証は多くない」と語る。

このことは多くの人が混乱しているところだ。人間関係やカリスマ性、仲間意識が主体であるこの業界をAIがどうやって推進すると言うのだろう? 営業はまさに人間性がモノを言う分野だが、それでもメトリクスを収集し、人の振る舞いを予測すると言う取り組みがされるようになっている。Honig氏達は3,000社以上とのCRM事業を通じて、そこで気づいたことは集められたデータに問題があった。

「営業をする人間がCRMを憎悪していると言う表現は控えめと言っていいでしょう。ただ、ほとんどの人達が営業活動に何の価値ももたらさないくだらないものだと考えています。彼らに必要なのは売り上げを伸ばすためのCRMシステムであり、余計な仕事を増やすのではないと理解しています。‘Her’と言う映画を見たとき、今後現れるAIが営業活動に関係ないタスクの自動化にもってこいであり、営業マンはより多くを営業活動に割けると言うことに気づきました」とHonig氏は言う。

 

AIの得意とする作業を受け入れることが、我々の知っている営業活動変える

生産性や効率の向上以上に、AIは営業マンを事務作業から解放し、より戦略的なことに労力を割けるようにする。そうなると、AIによって事務作業がなくなった人が大量に解雇されることになると予想している。だがAIはこれまで人による複雑なニュアンスの解釈が求められる各種業種での問題を解決できるようになる中、大きなやり取りは人によって行うようになることから、予想するようなことは回避できるだろう・

Honig氏がAIは人に取って代わるものではなく、助けとなるものだというのはこのためだ。「ある意味、AIは急速に営業マンに変わって作業しています。AmazonのAIアルゴリズムは人間では難しかったおすすめ商品の特定やレベルの高いサービスの提供を行っています」と彼は語る。

このことが営業マンに意味することは、顧客により効率的になれるこうしたソリューションを受け入れる心構えが求められるということである。「AIソリューションがデータ入力など人よりも上手くできることを受け持ち、人間関係の構築や顧客のニーズを把握するなど人が得意とすることを人間が担当するというのが現実的なところでしょう」とHonig氏は説明する。

 

開かれる生産性への道筋

営業にとってAIの最大の利点とはデータ収集能力だろう。彼らは直感や顧客に対する感覚で動くが、そんな彼らも今や多くのマーケッターや広告業者と同じく費用対効果の基準を持っている。裏付けとなる数字がなければ予算や権限どころか、今の立場を維持することも難しいのだ。

そのためにはしっかりしたデータどりが必要なのだが、多くの営業部ではそれがデタラメに行われており、データベース上の契約数の記録が行われていないことや、受注に至るまでの経緯がわからなくなってしまっている。こうした情報の欠落が特定の販売プロセスに影響を与えることはないかもしれないが、チーム全体としての予測やゴールには影響を与えるかもしれない。SpiroのようなAIを備えたプラットフォームを使えば、埋もれてしまったデータを掘り起こしレポートの作成や、人がレビューするための分析レイヤーが実現する。Honig氏はSpiroによって作成されたレポートは普通のCRMによるものと比べて8倍も多くのデータを含んでいるという。まさにAIの力を思い知らされる。

AIが人の行動を大まかに把握し、コンテキストを読んで予測する能力も、生産性を上げる一つの側面だ。「取引を進めるためにCRMの方から誰を電話でフォローアップしたらいいかアドバイスできるとしたらどうでしょうか。我々がやっているのはまさにそういったことであり、Spiroは15,000人以上の営業マンに鍛えられた学習アルゴリズムを使って、最適なフォローアップのタイミングやメールのテンプレート、力を入れるべきコンタクト先を特定することができます」とHonig氏は語る。

Spiroがもたらす知見により、顧客達は毎週の契約見込みが最大で47%増加したという。その大きな要因はAIが締結を見込めそうもない商談を予測することで、営業マンがほかの案件に注力できるようになったことによるという。人間にとって結果が見えない状態で可能性がありそうな話を打ち切る決断を下すのは難しいことなのだ。

Honig氏は次のように語る。「AIは営業マンにとってますます役立つものになっていきます。誰に連絡やフォローアップを行うべきかのアドバイスだけでなく、ほかにも同じような見込みがある案件を特定し、コンタクトを取るよう提案できます。営業連絡の情報からリアルタイムでフィードバックを行うことでさらに効率的になります。メールや予定表などの情報から、これまでのことに基づいた提案を行います」

別の言葉を借りれば、AIは営業マンがより多く稼ぐための相方になるとHonig氏は考えているのだろう。営業は人間がモノを言う業界かも知れないが、AIがデータに直感同様の価値をもたらそうとしている。