機械が我々の気持ちを理解するようになれば、移動はこれまでと違うものになる。

世界中で人の移動方法が大規模に変わろうとしている。そしてこの分野で人の社会に最も大きな影響を与えるであろう変化はAIを使った自動運転車の出現だ。

これまで自動車業界は一握りの大手自動車メーカーに牛耳られていたが、今後はAIに支えられた”交通移動サービス”のエコシステムへと移りつつある。AI開発の大きなステップとして、我々の心理的、感情的状態を観測し、理解する”共感”する能力の実現がある。おそらくはウェアラブルやリモートセンサーなど、フィットネスバンドが体の状態をモニターするのと同じような方法でこれは実現されるのだろう。

センサーからのデータをAIに入力することで、我々が何を感じ、それにどう適切に応対するのか訓練することができる。こうして生まれる共感能力はAI自身に感情を持たせることでより強力なものにできる。

共感テクノロジーが移動交通分野に与える影響は小さなものではない。では共感能力を持つ乗り物とはどのようなものだろうか?

 

安全な交通

どういった共感能力が運転手や同乗者たちを災害から守るのに役立つかという研究が、既に大手自動車業者によって進められている。そこで用いられているのがバイオメトリクスセンサーやカメラ、マイクロフォンだ。

疲労や眠気など : 頭部や目の動き、姿勢や心拍・呼吸数から検知する

注意散漫 : 運転者が道路から視線を離していないか確認する

酩酊状態 : 赤外線や発話、音声の分析による検知

急病 : ウェアラブル心拍センサーによって起こりうる心臓病の検知を行う

 

快適な移動

共感するAIは旅の安全だけでなく、旅の体験を心地よいものになるように使われる。それはみんながよく知っているメーカーの車に組み込まれる部品や、おそらくは聞いたこともないサプライヤーが多数存在する。そういったサプライヤーたちが共感するAI技術の先陣を切ってより革新的な乗り方に導いてくれる。例えば乗客の気分に合わせて照明、エアコン、音楽などの調整することや、シートの位置やエンジンの設定を変えたりする。またAlexaやSiriなどが家庭や携帯に入り込んでいるが、同じようなものが車にもやってくる。

 

移動にエンターテイメントを

AIによって移動が安全で快適になるところまでは触れたが、その場の空気を読むAIの利点はほかにもある。
車内で流す音楽や情報エンターテイメントの選択に適用されることはかなりありえるだろう。またドライバーの気分が乗ってる時などはエンジンの出力を上げることで、より運転手の気持ちに沿うドライブを楽しいものにしてくれる。

 

自動運転車社会の新しい規範

自動運転車は人との関係性ばかりに重きを置いているわけではない。 その技術の多くは自分の置かれた環境を感知し、どの行動するかを迅速に決定することに費やされている。各々の車は互いに天気予報や道路の障害物に関する情報を共有するネットワークを持つ。各車両が周りのより大きな世界と繋がることで、車が規律を持って振る舞う、新しい社会的構造が見えてくる。

AIが実現する「社会」は車と乗客との間だけでなく、オンボードデバイスや周りの歩行者や車、そしてその乗客や周辺のインフラとのやり取りをも包括したものとなる。市場では「車から全てへ(V2X)のコミュニケーション」と呼ばれている一連のルールによって、我々は移動に関する幅広いニーズを機械に委ねられていくことになるだろう。

こうしたモビリティエコシステムでは、スマートフォンやホームオートメーションシステムなどの、我々の生活にあるほかのAIとも情報を共有するだろう。うまく回れば自動運転車は我々のことをより深く理解し、信頼できる友達のような振る舞いも可能になるかもしれない。

これは単に技術上の問題というだけでなく、ユーザー体験の大きな変化でもある。システムの共感能力の向上は、交通を安全で快適なだけでなく、楽しいものにするだろう。

移動交通の未来はエモーショナルだ!