国際的リサーチ・コンサルティング企業のOvumは、顧客、小売業者、テクノロジー間の相互接続を指す「拡張顧客」(Augmented Customer)が生みだす、デジタル時代の顧客のアイデンティティの変化について今週レポートを発表した。

「スマートホームやVR、AR、ウェアラブルテクノロジーの発達によって、スマートデバイスの数は倍増することが見込まれており、顧客の行動も変わることが予想されるなか、企業はそれに備える必要が出てきています。」まずはビジネスモデルの見直し、期待を満たすことからはじまります。特にサービスプロバイダは、顧客のデータおよびプライバシーの保護というかたちで、コンテンツや利便性への投資を行うことになるでしょう」と、Ovumのコンシューマ・サービスリサーチ・ディレクターのRob Gallagherはいう。

この流れの背景にはいくつかの重要なトレンドがある。

Ovumの予測では、2021年までにスマートフォンの販売数の伸びは鈍化し、2014年には30%だったのが2020年には3%まで落ち込むという。追い込まれるかたちとなるAppleやSamsungそのほかの企業はスマートホームやVRなどの新しくより没入的でパーソナルなエクスペリエンスを提供できるテクノロジーへと、イノベーションをシフトすることになるだろう。

顧客がモバイルから、より没入的でパーソナライズされたエクスペリエンスにうつるなか、視聴覚テクノロジーやVR、ARそのたの主要な技術は互いに統合し結びつくようになるだろうとOvumは考えている。

 

変わりゆく顧客、変わりゆくビジネスモデル

これらのテクノロジーについてまわるのが、顧客の慣習やビジネスモデルの変遷にともなうサービスプロバイダ、ベンダー、顧客の関係性の変化だ。

おそらくもっとも分かりやすいのは関係性の長期化だろう。冷蔵庫や洗濯機などのスマートホーム製品を買えば、それらは10~15年使われることになる。AIやIoT、メディア処理にエッジコンピューティング、セキュリティ技術が絡む複雑さを感じさせないカスタマーエクスペリエンスを提供することが、長期に渡る関係性を築くのに欠かせないものとなるとOvumは考えている。

とくにOvumは家庭がデジタルイノベーションのるつぼになると捉えている。例えばAmazon EchoやGoogle Homeなどのインタラクティブ・オーディオ・スピーカーは2021年には40億台ほど使われるようになるスマートホームデバイスのうちの、わずか1920万台にもかかわらず、これらに囲まれて過ごす”拡張顧客”が音声操作やバーチャルアシスタントなどを使うようになるうえで果たす役割は非常に大きいものだ。

 

 

顧客の快適な生活を守るという責任

技術的イノベーションが継続する中、顧客の保護についても過小評価することはできない。大きな力には、より大きな責任がのしかかってくるものだ。拡張顧客たちの需要を満たすための課題は、ごくわずかな世界的コンシューマテクノロジー企業に力が集中していくことにつながっていく。

Ovumによると、消費者は生活のより多くをテクノロジー企業にゆだねることになるため、企業はハッキングやネットいじめ、そのたのネガティブなことに対する防御策を講じるだけでなく、ユーザの個人情報やプライバシーの保護においてもその優位性を保たなければならない。

これは賢明なアドバイスだと思っていい。Boseヘッドフォンのメーカーがアプリを使って、顧客の許可を得ずに何を聞いているか情報を集め、そのデータを第三者に提供していた件で、シカゴで告訴されたのがつい先週のことだ。

新しい技術が消費者の習慣をかえるうえで、その課題は倫理や法律にまで及ぶことだろう。すでにロボットの設計やAI自動運転車について、倫理学者たちが議論しているさまを目のあたりにしている。拡張顧客達がさまざまな課題に行きあたることは予見できることであり、解決するには、正しい計画とその実行によってのみ実践される。