VRは昨年、多くのニュースの見出しを飾った。それらの大半はオバマ大統領がVRでヨセミテ国立公園を観たことや、Foxによるスーパーボウルのストリーミングライブなど、この技術に付き物であるエンターテイメントに関するものであった。だが多くの企業や組織は、VRの利点をもっと現実的なことに活用している。VRトレーニングである。

TrainingIndustry.comによると、2015年のトレーニングによる出費は北米だけで1600億ドル、世界中で3550億ドルに上るといい、2009年以来この出費は毎年増えている。トレーニング市場がどれほど大きなものかを物語る数字だが、VRなどのテクノロジーの成熟によって状況に変化が訪れようとしている。

VRにはトレーニングと相性のいい様々な利点がある。没入的でインタラクティブあり、記憶に残りやすくスケーラブルだ。大規模なトレーニングの場合、Google Cardboardなどの廉価なヘッドセットやiOS,AndroidのVRアプリを組み合わせて容易な配備が可能である。長時間の高品質動画が必要となる更に深いレベルのトレーニングには、Oculus Rift, HTC Vive, Samsung Gear VRなどのヘッドセットが最適だろう。

Inlet Shoresグループのオーナー John AlonsoはVRトレーニングアプリの製作、配布を彼のコンサルタント業の核としている。顧客から職業訓練について相談を持ちかけられた際、このテクノロジーを使うことにしたという。「教室でのトレーニングや教材ビデオでは、実際の業務がどのようなものか伝わりません」と彼は言う。

仮想現実の登場

Alonso氏のチームは現在、Gear VR向けの360度見渡せるトレーニングアプリの製作に特化している。没入的な動画を撮影するだけでなく、コンテンツにタイトルやナレーション、アニメーションを付け加えることも行なっている。トレーニングアプリの再生に必要なSamsung携帯とヘッドセットはいくつものオフィスに簡単に配布可能なものだ。

Alonso氏のVRトレーニングを取り入れた初期の顧客に政府部門がいる。「連邦政府のお客様にはここ数年、ビデオによるトレーニングを使っていただいています。ビデオは効率的なのですが、それでも見る人を”現地”に連れて行ってはくれません。解決法といえば実際に現地に行くことになりますが、経済的に難しいでしょう」

トレーニングアプリを使う利点の多くは費用対効果だ。トレーナーを連れてきたり、受講者を向かわせたりするためには、交通費や滞在費などの経費の他、生産時間の喪失などの見えないコストも発生する。時間や場所を選ばないというVRの性質により、どこにいてもVRの教室を通じて受講することが可能となる。政府のような予算に厳しい顧客にとってコスト削減は重要なことだ。

 

危険な状況にうってつけのVR

危険なシチュエーションを再現するのにもVRトレーニングは最適だ。エクセター大学のSam Vine教授によって創立された英国に拠点を置くCineon Productionsは、危険な仕事を360度体験できるコンテンツを製作している。危険な環境を再現するだけでなく、目線の追跡データからユーザーのVR体験に対する反応を分析するアプローチも行なっている。

これにより従業員が実際の危険な状況下で何に注目するのかを予測し、実際の状況でどのようにより良いアプローチをするかをトレーニングすることに繋げられる。もしシミュレーションで正しい行動が出来れば、現実世界でも同じように動くことができる可能性が高いだろう。

VRトレーニングに乗り出そうとしている製作会社やコンサルタント業者に開かれたチャンスは巨大なものだ。Inlet Shoresグループの場合、ある顧客はちょっとした試作品とヘッドセット10台の契約でスタートしたが、今では15倍の量のコンテンツと200台以上のSamsung Gear VRを納めるまでになっている。

コンテンツ製作者にとって、ヘッドセット以外のコストはこれまでのプラットフォームと大して変わらない。私の会社で扱っているようなWebベースのVRアプリ製作プラットフォームを使えば、編集や配備に要する時間もこれまでと変わらないか、あるいはより早くなるだろう。

VRコンテンツを提供するコストが低下し、ヘッドセットの販売数も伸びる中、VRトレーニングを採用する企業は増加することだろう。今の所、結果は肯定的なものだ。Alonso氏によると、「VRトレーニングアプリを取り巻く状況は実にエキサイティングです。お客様からは何度も”思っていたよりもすごい”という声をいただいています」とのことだ。

VR Landscape

この記事はVRシリーズの一部である。431社の状況図の高精細はこちらからダウンロードできる。

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