ライト兄弟の飛行機、毘廬遮那仏像、マンモスの化石。

何十年もの間、このような工芸品や出土品を見るためには直接ワシントンD.C.の国立スミソニアン博物館を訪れるしかなかった。そしてわざわざ時間とお金をかけて出向いたとしても、これらの品々をガラス越しに正面から眺めることしかできなかったのだ。

先週、3Dソフトウェア会社のAutodeskはこういった貴重な文化遺産をより身近なものにしてくれる革新的な技術を発表した。収蔵品の3DデータをWeb上で閲覧可能にする、「Smithsonian X 3D Explorer」というWebアプリである。インターネット接続が使える環境であれば誰でもスミソニアン博物館の貴重な収蔵品の一部を鑑賞したり、マウスで操作したりすることができる。しかも、なんと3Dプリンターで実物を出力することも可能だという。

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3Dスキャンによって、毘廬遮那仏像の摩耗した彫刻もくっきりと浮かびあがる。

「実に70億人もの人々が毎年スミソニアン博物館を訪れます。でもそれは世界人口の1割にも満たないのです。」そう語ったのはAutodeskの副社長であるブライアン・マシューズ氏だ。「我々はスミソニアンの所蔵品を、これまでにないほど身近なものにしようとしているのです。」

Autodeskは「3Dライダー」を使って展示品から超正確なモデルを作り出す。ライダーとはLight Detection and Rangingの略語で、対象物にレーザーを当て、その反射を分析して形や大きさ、性質を計る最新の計測技術だ。どんなに小さなディテールも逃さず、場合によっては本物よりも正確なレプリカを作り出してしまう程である。マシューズ氏いわく、紀元前300年の毘廬遮那仏像がこのケースに当たるという。

「毘廬遮那仏像はあまりに風化が進んでおり、肉眼では彫りがほとんど読み取れない程でした。でも我々のレーザーは精度が高く、見えないディテールまでをも再現してしまいました。結果的に毘廬遮那仏像を本来の形に復元することができたのです。生涯をかけてこの仏像を研究されてきた博物館のキュレーターに完成した3Dモデルをお見せした際には、涙を流して驚かれておりました。」とマシューズ氏は説明してくれた。

Smithsonian X 3D Explorerは、先週の水曜日にワシントンD.C.のスミソニアン協会本部で初公開された。現在はキュレーターによって厳選された20の展示品を見ることができる。同博物館は今後より多くの展示品を展開したいと考えているようだ。ただそのコレクションはあまりに膨大で、1億3700万点におよぶ収蔵品の写真撮影すらまだ完全には終わっていない状況だという。

今回のAutodeskの発表にはもう一つ注目すべき点がある。作成された3Dモデルはすべてオープンソース化され、学生や研究者達は自分たちの研究のために3Dプリンタを使ってそれを印刷することができるのだ。仮に、とある学校でアメリカ先住民の勉強をしている子供達がいるとしよう。担任の先生はスミソニアンの所有する土器を3Dプリントし、各部族によって土器の作り方や用途がどう違ったのかを実際手に取って学ぶことができるのである。

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学芸員は毘廬遮那仏像のこのビューを適切なホット・スポットに分割した。

マシューズ氏を最も興奮させたのは、過去をよみがえらせて大勢の人に触れてもらえるようになったことだ。博物館のキュレーター達は各展示品の3Dモデルに「ホットスポット」を設定し、ユーザーがクリックするとその展示品の特別な点を見られるようにしてある。技術も重要だが、このような歴史や背景にまつわるストーリーにはそれ以上に価値があるのではないだろうか。

「我々が普段博物館に行くと、展示品を限られた方向からしか見ることができません。」とマシューズ氏は言う。「もしライト兄弟の飛行機を裏側から見ることができれば、人類の飛行に対する考え方を変えることとなった、反転したローラーチェーンを見ることができます。3Dモデル化された今、展示品のすべてを見る事ができるようになったのです。」

画像提供:Autodesk

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