“とにかく早く作って早く試せる”環境を作るためのフルリニューアル

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◇株式会社VOYAGE MARKETING CTO 松本昌裕(まつもと・まさひろ)氏

- グループ全体として幅広くやられている印象があるのですが、その中でもVOYAGE MARKETINGでは、どういった事業を担っていますか?

松本氏:VOYAGE GROUPは、一言で言えばインターネット分野における事業開発会社です。二本柱が立っていて、一本はアドテクノロジー事業、もう一本がメディア事業。そのメディア事業の中の一つが、僕が所属しているVOYAGE MARKETINGの事業です。その中で基幹のサービスとなっているのが、『PeX(ペックス)』というポイント交換サイトです。

PeX
◇ポイント交換・移行サービス『PeX』

 

- 現在、松本さんはどういった業務に携われていますか?

松本氏:最近までは、PeXのフルリニューアルプロジェクトに主に携わっていました。“新しい施策や機能を追加したいと言ったらすぐ応えられる”というコンセプトのもと、ここ1,2年くらいかけてリニューアルしたんです。プロジェクト自体は終了して、現在は新しい機能追加に向けていろいろとしていますね。直近、「YOUの気持ちを聞かせてよ」というコンテンツを新たに追加したところです。

とにかく早く作って早く試すことができる環境を整えるためにリニューアルして、その結果、新機能の実装がこれまでと比べて非常に早くできたので、「リニューアルの甲斐があったな」と感じています(笑)。「YOUの気持ちを聞かせてよ」も結構好評なのですが、まだまだ他にも試したいことがたくさんある状況ですね。

- フルリニューアルともなると、なかなか難しい部分も多くあると思うのですが、いかがでしたか?

松本氏:そうですね。PeX自体が10年近く続いているサービスだということもあり、当時なんでこうしたんだろう?みたいな、古くに作った機能があって、なぜこういう動きになっているんだろうっていうみたいなのが、結局誰も分からないような状態になっている部分がありました。その辺りをどういう風に乗り越えていくかっていうのが非常に苦労はしましたね。

今後の新たな展開を考えるとリニューアルは避けられないな、と思ったのが2年前。たとえば、その当時使っていたフレームワークが今後アップデートされないという状況だったり、インフラやアプリの構成もこのままでは使えなくなると想定されるものだったりしたので、アーキテクチャもサーバ自体も大幅に変更しました。ほとんどゼロからの組み上げだったので大変でしたね。

- なるほど。その開発チームの体制やスタンス、開発スタイルはどういった感じですか?

松本氏:人数規模的に13人とそれほど大きな数字ではないので、基本的には“話し合えばなんとかなる”といったスタンスでいますね(笑)。裁量権を各々に渡したうえで互いに突っ込み合う、みたいな開発スタイルです。たとえば、僕が作ったものに対してみんなからガンガン突っ込みを入れてもらったり、その逆も然り。GitHub上でプルリクエストを投げるということを基本ルールに置いて、フラットにやり取りしています。

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◇リニューアルプロジェクト『OLIVE』を終えたプロジェクトメンバー集合写真

 

どう“安全にチャレンジ”するのか、が知恵の出しどころ

- CTOとして、組織をマネジメントするうえで気を付けられていることはありますか?

松本氏:これには、「プロジェクトの進め方」と「組織のつくり方」の2つの話があると思っていて。どちらの場合もフェーズによって気を付けるべきことは変わると思います。たとえば、開発する時にルールをガチガチに固めることが必要な場合もあれば、それが逆に足かせになる時もある。そういう手法や手段っていうのは、“どのタイミングで適用するか”によって結果に幅が出るので、必ずしもこの手法だったら大丈夫、といった考え方はせずに、「今必要なのは何なんだろう?」ということを常に考えるようにしています。

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あとは、エンジニアだったら誰しも経験すると思うんですが、あっちこっちで障害が発生してしまった状況でも落ち着いて判断することだったり、「チームとして本当に大事なことって何だっけ?」と別の観点で見ることだったりを意識していますね。これは必ずしも誰か1人がやるべきことではなく、プロジェクトを進めるうえで各々が持つべき視点だと思っています。

- 1人ひとりが全体感を持つことを大切にしていると。前半にある“タイミング”の見極めはどこでされていますか?

松本氏:判断が難しいところではありますが、一言でいうと“制約の厳しさ”です。その時点で必要な制約は何なのかっていうのをハッキリさせて見極めてますね。たとえば、そのプロジェクトにかけていい時間や最低限担保すべきクオリティのラインがどこにあるのかっていうのをハッキリさせるのは必須かなと。そのうえで、「自由にやっていいけど、スケジュールは守らないとダメだね」と言うのか、逆に「スケジュールは気にしなくていいけど、モノだけはきっちり作らないとダメだよ」と言うのかを決めています。

- では、組織づくりに関して、一緒に働くエンジニアとのコミュニケーションで意識していることなどはありますか?

松本氏:これは、VOYAGE GROUP全体でやっていることなんですが、“ちゃんと話をする”ということを大切にしています。たとえば、「今どうなりたいんだっけ? どうしたらそれに近づけるんだっけ?」というような話をしますね。さまざまな人と話していく中で、自分がしたいことや目標などのぼんやりしていたものが段々ハッキリしていくと思うので、僕だけでなくいろんな人と話すことを促すようにしています。

あとは、仕事も設計も“まずは型を教える”ようにしていて。それを覚えてもらったあと、その型を使うか使わないかは個人の選択に任せますね。自分で考えて選択して、その結果、なぜ成功したのか失敗したのかっていうのを考えて、そうして出た答えを元にまた次に繋げていけばいい。なので、基本は任せて結果を一緒に振り返るっていうところを大事にしています。

ただ、PeXが長く続いているサービスということで失敗できないというプレッシャーもあるのか、任せるとチャレンジすることに戸惑ってしまう若手エンジニアもいますが、「安全にチャレンジするにはどうするか?」という部分こそ僕たちエンジニアの知恵の出しどころだと思っています(笑)

 

メディアの捉え方は1つじゃない

- “安全に”という制約、ただチャレンジするよりも燃えますね。VOYAGE GROUPにおける技術力の強みだと感じる部分はありますか?

松本氏:そうですね。“たいていのことはなんとかなる”っていうのが強みだと思います。たとえば、「エンジニアの評価はエンジニアがする」という制度があって、やってることが全く違う他部署のエンジニアと互いにソースコードを見合うことがあるんです。それで横のつながりが深まって、「困ったときは○○さんに聞こう」とか「あそこの部署で導入しているものをこちらでも導入したら良さそうだ」という雰囲気も生まれるし、支える制度もある。そういうのも技術力の1つだと思っていて、先ほどお話した強みにも繋がると思っています。

- 社内のナレッジ共有がしっかりされているんですね。他に技術のためにしていることはありますか?

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松本氏:@t-wadaさんというエンジニア業界では有名なテスト手法の伝道師みたいな方がいるんですが、その方に技術顧問という形で来ていただいてハンズオンのワークショップを実施したりして、外から刺激を受けるようにしていますね。自分たちがベストだと思ってやっていることに対して、客観的なポジションから意見をもらうことで“個人としてもチームとしても成長したい”と思ってやっています。

- さいごに、事業の展望や個人としてもチームとしても目指したい姿があれば教えてください。

松本氏:そうですね。事業については、「メディアの捉え方は1つじゃない」というのを推していきたいですね。1つのメディアでも切り口を変える(たとえばサービスを複数持つ)ことで、今以上にメディア同士の連携を増やし新しい価値を生み出していくような、よりシナジーを生み出せる事業を作っていきたいです。

現在、“必須ではないけれど人生を豊かにしてくれるもの”を生み出すメディアに挑戦していまして。このメディアは、これまでのPeXやECナビといったどちらかというと生活の基盤になるようなメディアとは異なるものです。この両種メディア間で新たな連携など、相互に掛け合わせた何かができるといいなと思っています。

個人やチームとしては、「好き勝手やってるように見えて全体としてはうまく連動している組織」を作りたいと思っています。エンジニアとしての理想って、個々人がやりたいチャレンジを好きにできる状態だと思っていて。また、一人よりも多くの人と一緒にやった方が大きくて楽しいことができるとも思っていて。結局、“みんな好きにやってるけどまとまりある組織”というのが一番強いと思うので、そこを目指したいですね。

- ありがとうございました。

たいていのことは“なんとかなる”と思える雰囲気が「強み」だという株式会社VOYAGE MARKETING。その強みは、社内でのナレッジ共有や所属にこだわらないフラットなコミュニケーションなど、エンジニアが積極的に高め合える機会をつくり、制度として確立させているからこそ生まれるものだろう。

人を軸としたVOYAGE GROUP、その技術を支えるVOYAGE MARKETINGはどのような“シナジー”を生み出すのか。新たなメディアの在り方の実現を楽しみに待ちたい。

 

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今回取材した方

株式会社VOYAGE MARKETING CTO
松本昌裕(まつもと・まさひろ)氏

京都大学農学部農業工学科卒、神戸大学大学院総合人間科学研究科修了。大手SIerの関連開発会社にエンジニアとして就職。官公庁向けの公的個人認証系システム、出版社向けの印刷・出版系システム等の開発にプログラマ、PMとして従事。2010年、㈱ECナビ(現㈱VOYAGE GROUP)へ入社。子会社の立ち上げなども経験し、2014年10月VOYAGE MARKETINGのCTOに就任。

 

 

 

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