システムは“誰でも、手軽に、素早く”使えないと意味がない

– まずは、所属されている『Hazama』チームについて教えていただけますか?

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◇ サイボウズ株式会社 サービス運用部 Hazamaチーム 内田公太(うちだ・こうた)氏

内田氏:『Hazama』は、サイボウズが提供するクラウドサービスのインフラ基盤を支えているチームです。たとえば、運用基盤の自動化や可用性、耐障害性の向上など、 クラウドサービスの安定運用と付加価値向上を担っています。僕個人としては、今はアクセスログ解析を主にやっていますね。

ちなみに、アプリチームと物理機材の狭間みたいな、運用の狭間みたいな意味を込めてこの名前にしました。アプリチームが作ったフロントの部分を機材にインストールするためのツールや、機材が壊れた時にメールを飛ばすためのシステム、そういったものを作っているのが『Hazama』です。

– 現在、具体的にはどのようなことをされているのでしょうか。

内田氏:最近だと、13時間かかっていたアクセスログの集計処理を“20秒”で完了できるシステムを作りました。というのも、事業規模の拡大に伴って扱うデータ量も日々増え続けていて、これまで見えていなかった性能の限界みたいなものが出てきたためです。

具体的には、これまで使っていたMySQLというデータベースを使うのをやめてHadoopを使うことにしました。好きなようにサーバ台数を増やせるというメリットを活かしています。

– なるほど。13時間から20秒へって大きな変化ですよね。その変化を経て、何か新しい動きはありましたか?

内田氏:そうですね。社内のマーケティングメンバーが製品の利用状況などを計るために使ってくれているんですが、半日以上かかっていたものがコーヒーを入れる暇もなくなるくらいの高速化を果たしました(笑)

新しい動き、というところだと、たとえば、アクセスログだけだと情報としては十分じゃないということが分かってきましたね。分析するのに、ログと組み合わせて使う顧客データベースも同じ基盤上で見られないと困るよね、みたいな。あれもこれも乗せたいよね、という議論も活発にされるようになって、データ分析したい人の環境が整ってきたかなと思います。

今後もデータ量は増え続けますが、それでも“手軽に素早く”使えるものにしていきたいですね。やっぱりどんなに便利でも、使う人が勉強しなきゃいけないシステムってあまり使われないと思うので。

 

“ズラせる文化”と“やらない勇気”

– 日々改善といった感じでしょうか。現在、何人体制で行っているんですか?

内田氏:少数精鋭といった感じで、今は5人でやっています。ちょうど『*Necoプロジェクト』という会社全体のインフラを新しくする計画が走っていて、その一環でアクセスログデータベースやログ収集基盤を新しくしているんですが、それを進めるにも5人だと全然足りない感があります。

*Necoプロジェクトとは
サイボウズのクラウドインフラにおける現状の問題点を洗い出し、5年を目安に改善を実施していく取り組み。現状の問題点を 19 の分科会(Operational Simplicity、ストレージ・バックアップ、検索エンジン、サービスディスカバリとリソースプール等)に分けてプロジェクト進行中。

– 膨大な情報の処理をたった5人で、となると大変ですよね。少人数でもうまくやるための工夫などはありますか?

内田氏:タスクは日々溜まっていく一方なのでうまくやっているとは言えないかもしれませんが、同時に複数の大型プロジェクトを走らせないようにしたり、外部からの割り込みを無くすようにしたりしています。Hazamaは、その名の通り狭間にいるために両方から話がきたりするので、なるべくスムーズなコミュニケーションを意識しています。

たとえば、みんなで議論するよりも一人ひとりにやることを充てがった方がいいものができるので、ある一人は環境構築を丸ごと担当して、もう一人は他チームとの接触セッションを全部担当するみたいな分け方をしています。1つのタスクをチーム内で分けると余計な調整が発生するんですが、これなら集中してできる。

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あとは、上司ですね。チームで工夫するというよりも、理解ある上司ばかりなのでそのおかげで“うまくいっている”感じがあります。元々技術畑にいた創業者の青野をはじめとして、上司が技術に理解のある人なので、エンジニアにとっては非常によい環境だと思っています。

たとえば、良いものを作るために本当に譲れない部分があれば、締め切りを“ズラせる文化”がありますね。もちろん、一度決めた〆切を目指して頑張るのが前提ですが(笑)

– それはすごいですね。“ズラせる文化”があるから安心していいものを出せると。

内田氏:そうですね。あと、“やらない勇気”という言葉も運用本部ではよく言われています。たとえば夜中に障害が起きたときなど、「取りあえず何かせねば!」とつい焦ってしまうような状況で使われますね。翌朝で間に合う場合には焦って対処せず、皆が居る時間に落ち着いて行動しようという意味です。

– いいものを出し続けている理由が垣間見えた気がします。ちなみに、内田さんが山場だと感じたのはどんな場面ですか?

内田氏:一時期、Hazamaが障害対応も担っていたときがあってそれが山場でしたね。障害は時間関係なく発生する可能性があるので、深夜に起きて昼も働くことになれば能率下がるよね、という前提でスケジュールを組んだら、全然終わらないじゃんコレ、みたいになって(笑)。上司にも「さすがにこれは遅すぎじゃない」と言われましたが、だってしょうがないじゃん、という感じでした。

ただ、そんなやりとりもあってか、Hazamaは、障害対応から抜けてメイン業務に集中できるようになりました。やはり、ある種のマイペースさは重要だと思っています。いつも全力を出そうとすると、結局10%くらいの力しか発揮できないと思っているので、うまく抜き差ししながらやることを意識しています。

 

サイボウズ社員は「賢いグループウェア」が欲しい

– 話は変わりますが、無限にリソースがあったら内田さんは何をしたいですか?

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内田氏:「賢いグループウェア」が欲しいという意見が社内で言われているんですが、その実現に向けて何かやってみたいです。たとえば、検索精度を上げたり、タスクの優先度付けなどよくやる操作をすべて自動でやってくれるような「賢さ」の実装です。

個人的には、2人で会議をしようと思ったら20人部屋しか空いてないというようなときに、部屋を人数に合わせて自動で組み替えてくれる賢いグループウェアが欲しいですね(笑)

– さいごに、今後の展望をお聞かせください。

内田氏:僕自身が新卒入社だということもあり、個人的には新人さんに入ってきてほしい気持ちがありますね。もちろん即戦力としてガンガン進めてくれる方にも来てほしいですが、今後もこのペースは崩さずに新プロジェクトを進めていきたいです。

サイボウズは基本的に内製プロダクトが多く、かつ、実装期間と試験期間をほぼ五分五分で取っているので、試験期間が他の会社に比べたら長い印象ですよね。すごいスピード感を持って8割を世に出すというよりは、じっくり作ってより質の高いものを出したいと思っています。

あと、新人マニュアルみたいなものがないのも特徴ですね。スタンスとしては、技術も変わっていくし正しいとされることも変わっていく、それに応じて共通認識を都度作っていくという感じです。『Hazama』は新しいチームなので、そこはまだこれからですね。

– ありがとうございました。

 

“ズラせる文化”と“やらない勇気”。インフラエンジニアとして、良いサービスの安定稼働を最優先に動くチームの根幹には、ある種のマイペースさとも呼べる考え方が浸透していた。

「世界中のチームワークを向上させる」ことをミッションに掲げるサイボウズ株式会社、そのサービス基盤を支える『Hazama』チームは、現在新たなプロジェクトを進行中だという。ゆっくりと、けれど確実に歩みを進めるチームの生み出す新サービスがどんな姿で世に出るのか、楽しみに待ちたい。

 

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今回取材した方

サイボウズ株式会社 サービス運用部 Hazamaチーム クラウドインフラエンジニア
内田公太(うちだ・こうた)氏

2014年にサイボウズに新卒入社。クラウドインフラを開発するプログラマ。モニタリングシステム、アクセスログ解析基盤の構築などを担当する。低レイヤな技術に興味があり、OSの自作に明け暮れることも。2015年8月に書籍を執筆。『自作エミュレータで学ぶx86アーキテクチャ

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