未来は地図に載っていない
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サンフランシスコ国際空港のターミナル2に、街の古い地図が展示されている。私はアンティーク地図マニアで自分の街を愛してもいる。という事もあって、デイビッド・ラムジーのコレクションの前を通るときは足を止めざるを得ない。機上の人となる前に、自分の住んでいる街のことを調べずにはいられないのだ。

地図が歴史の一部ではないとしたら私は不思議に思わざるをえない。

ここで言っているのは印刷された地図のことだけではない。確かに地図を眺めて行き先を確認するという昔ながらのナビゲーションは死に絶えつつあるが、ではアプリが地図に取って代わり、GPSアプリ「Waze」のためにRand McNally(アメリカの地図専門出版社)がお払い箱になるかというと、それもまた違うだろう。

もし子孫たちが地図を読めないようになったらどうなるだろう? 地図を読む事自体が郵便で手紙を出すレベルの古い風習になってしまったらどうだろうか?

チェックインで全ての手続きが完了する

Readwriteは最近二つのイベントを主催したのだが、そこで将来のナビゲーションについて色々と考えさせられた。一つ目のイベントは6月3日に行ったFoursquareのCEO デニス・クローリーへのインタビューで、彼の会社がオンラインチェックインという概念を超越し、ユーザーの位置情報を要求することなく街のおすすめ情報や友達探しといったロケーションサービスを提供する方法について話を聞いた。

さらにその週の後半、Readwriteはアメリカン航空とスタートアップ企業の支援団体、Wearable Worldの共催でハッカソンを行った。開発者、デザイナー、マーケターと共に取り組んだその時のお題は、旅行者が空港などの施設を経由して移動するための新しい手段に関するものだった。

ReadWrite、アメリカン航空、Wearable World共催のハッカソンで、コーダーとデザイナーにより新しい旅行アプリが開発された
ReadWrite、アメリカン航空、Wearable World共催のハッカソンで、コーダーとデザイナーにより新しい旅行アプリが開発された

開催者はセキュリティチェック、空港ラウンジおよび搭乗口を模したBluetoothビーコンを壁に配置し、開発者達はそれを利用して、旅行者を追跡するアプリを作った。それにより、空港ラウンジに入るときや飛行機に登場する際もチケットを提示することなく、システムが自動的に旅行者を認識し、予約の状況などの確認を行える。

そこでは地図をみる必要などない。スマホやスマートウォッチ、または周りのスクリーンがあなたを案内してくれるのだ。

Foursquareと同じように、アメリカン航空はチェックイン後の面倒もみてくれる。他の航空会社やホテルチェーンもこれに追随するだろう。もしホテルのドアが旅行者を認識して自動的に解錠してくれるとしたら、もはやカードキーは必要だろうか?

自動運転の車が現れたとしても、高度に自動化された案内に慣れてしまった人々はその事を気にもかけないのではないだろうか。Googleに運転をまかせる事と、Google Nowでどこの角を曲がったら良いか調べる事に大きな差はない。

コンピュータへの過度な依存

こうして未来予想図を楽しむのは簡単だ。心配な点は、何でも機械任せにすることによって、私達は何か大事なものを失ってしまうのではないかという事だ。子供の頃、地図をみてはその土地に思いを馳せたものだった。ワシントンから遠く離れた、地図上では小さな点に過ぎないサンフランシスコに魅せられ、ここで働き、愛情を育み、家庭を持った。

自分が生きてきた痕跡を残すという意味合いもある。私はFoursquareを日記代わりとして、一日の出来事を焼き付ける為に利用している。

どこに居ようが自分は自分だ
どこに居ようが自分は自分だ

地図上で自分の居場所を確かめ、目的地までの行き方を決めるのは人の根本的な営みであり、こういった時間のかかる作業は自分のアイデンティティーを周りに主張する活動ではないか。

私達の周りにあるセンサーやコンピュータはあなたの事を極めて限定的に、それこそクラウド上のデータベースのレコードとしてくらいにしか認識しない。コンピュータは時間を短縮してくれるだろうが、その代償として、自分たちがこの世界で生きているというアイデンティティをどれほど犠牲にしなければいけないのだろう。

どこに居ようがあなたはあなただと、賢人バカルー・バンザイは言った。しかしその「居場所」が無いとしたら?

※この記事はテクノロジー、イノベーション、デジタルメディアの未来について取り上げているReadWriteの発行元、Say Mediaオンライン記事Say Dailyにも掲載されました。

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