モノのインターネット:価値があるのは「モノ」ではなくてサービスだ
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モノのインターネットが具現化し、成長を続けている。しかし利益の源はインターネットでもモノでもない。莫大な利益が見込めるのは、こうした IoT(Internet Of Things:モノのインターネット)ネットワークからデータを引出すためのビジネス・サービスである。

残念ながら、ベンダー達がデバイスやセンサー・ネットワーク、各種サービス等を構築するにあたっての標準規格がまだ存在しないため、市場の成熟が遅れる恐れがある。

センサーの数だけ規格が存在する

InternetofThingsGartner 社によれば、モノのインターネットにまつわるデバイスの数は 2020 年までに260億個に達するという。さらにスマートフォンやタブレットも含めると、その数は 330 億にもなる。これらの小さなデバイスは巨大な富を生む。ガートナーの予測では、IoT テクノロジーの利用や販売で発生する利益も加味すると、IoT は世界経済に対し 1兆9000億ドル もの付加価値を生み出すだろうという。

問題は、モノのインターネットの成長には何が必要かという点だ。テクノロジー界では良くある答えだが、正解はおそらく標準規格だろう。今日のモノのインターネットにはあまりにも多くの規格が存在しており、標準など無いに等しい。

標準化の欠如に対する責任は、他者を蹴落として顧客を独占したがる貪欲なベンダーだけにあるわけではない。ARM のビル・カーティスが最近の MIT カンファレンスで指摘したように、「インターネットの標準は、IoT 向けのデバイスには複雑すぎるので、こうしたデバイスは独自のプロトコルを実行してデータ・サイロを作成する傾向がある」のだ。つまり、独自のプロトコルは目的ではなく手段(ビジネスサービスを提供するために、各センサーのネットワーク同士にデータのやり取りをさせる)なのである。

残念ながら、インターネットの複雑さという問題は全く改善されていない。軍や大学が共通の動機に基づいて開発を行っていた初期のインターネットとは異なり、現在では各企業が好き勝手に開発しているからだ。

これらの各企業を互いに協力させるための原動力となるものは存在しない。だが、状況が変わる可能性もある。

センサーではなく、サービスを

Gartner 社は、モノのインターネットのベンダー達は2020年までに3090億ドルの利益を得るが、その利益の大部分はサービスによるものだと予測している。

Bosch 等の企業はフリート管理のようなサービスを構築しており、こうしたサービスは今のところセンサーやサービスを制作する企業に依存している。しかしセンサーの制作は今では、サービスを提供するための手段でしかない。本当にお金を生み出すものはセンサーやデバイスではなく、サービス自体なのだ。

それ故、オライリーメディアのアンディ・オラムが発した標準規格への質問に対する答えは、おそらく非常にシンプルなものになるだろう。「成り行きを見守るしかない」。

一体どうすれば、日用的なオブジェクトに対して標準的な通信プロトコルを構築するよう各メーカーを説得することができるのだろう?独自のプロトコルを使い、オブジェクトから発生したデータをプライベートなサービスに留めているようなこうしたメーカー達に対し、どうすれば、データを貯め込むよりもシェアする方が得策であると納得させられるようなビジネスモデルを提供することができるだろうか?

そこにお金を生み出す可能性がある限り、標準規格は自然と現れるはずだ。AllSeen Alliance が誕生したときのように、ベンダーが主体となって規格を決めることになるだろう。例えば Bosch は既に自社のセンサーをベースとしたサービスを構築しているが、競合するセンサーメーカーにも対応している。同社が単なる機械の話ではなく、ビジネスモデルに関する対話に多大な時間を費やすのはこのためであり、同社は自身のことを「新たなビジネスモデルの開発コンサルタント」と呼んでいる

どんな企業でも、自社のセンサーだけに頼っているわけにはいかない。例えアップルほどの比類ない成功を収めた企業であっても、グーグルの Android のようなオープンなサービスベースの競合に道を譲る結果となったのだから。

モノのインターネットの市場はまだ初期段階だ。クレイトン・クリステンセンが提唱する市場発展パターンに従えば、当然のことながらセンサーとビジネスサービスの垂直統合がIoTを支配することになる。しかしこれがゴールではない。センサーが増殖してそれぞれが別の規格に従ってやり取りするようになれば、サービス・ベンダー達は異質なデータを吸収して通訳する必要に迫られるだろう。そうした流れが標準規格を生み出すのである。

ハードウェア企業がサービスから上手く利益を得られるかどうかは、彼らがいかに標準化に向けた努力を行えるかにかかっている。自身を純粋なハードウェア・メーカーだと認識しているような企業は消え去る運命にあるだろう。だが、「モノ」の範疇を超えて「インターネット」上に構築されたサービスに注力できるような企業であれば、その未来は非常に明るい。

画像提供:Madeleine Weiss

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