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マイクロソフトがノキアを買収して以来進行中の悲喜劇的な状況において、新たに発表された「Nokia X」というAndroid搭載の戦略は、ノキアとマイクロソフトの両社にとって非常に多くの意味をなすかもしれない。

ノキアの携帯電話部門のプロダクト・マーケティングを担当するバイスプレジデント、ユッシ・ネヴァンリンナによると、ノキアとマイクロソフトの両社のゴールは、次なる10億人にクラウドを使ってもらうことらしい。一般的なウェブやスマートフォンの利用だけではなく、インターネット上のマイクロソフトのクラウドを使ってもらうことが目標だということだ。

そこで登場したのが、AndroidスマートフォンNokia Xだ。これがマイクロソフトが目指す、自社を真の「デバイスとサービス」の会社に変えるための試みの1つとなる。マイクロソフトにとってNokia Xはとにかくサービス重視なのだ。ノキアにとって、Nokia Xはより大きなマーケットに展開するための安価なAndroid携帯であるという点でアピールとなる。

「要するに、マイクロソフトは次なる10億人をクラウドに接続したいと考えているのです」ReadWrtiteとのインタビューでネヴァンリンナは語った。「我々は非常に広範囲のリーチを提供できるのです。我々はこれらの消費者にアクセスできます。我々こそが、マイクロソフトのクラウドとサービスに次なる10億人を接続する、ボリューム・プラットフォームなのです」

ノキアの幅広いポートフォリオ

サムスンや中国の無名メーカーにマーケットシェアは奪われているものの、ノキアは未だ新興市場における価値あるブランドだ。ノキアはデータ接続が可能な携帯端末を四つのレイヤーに分けて提供している。最もベーシックな最新機種Nokia220(データ接続は限られているがとりあえずFacebookやTwitterへの投稿は可能だ)に始まり、新しいNokia 230とAshaシリーズ、続いてNokia X、手頃な価格のLumia 520とフラグシップのLumiaデバイス1020と1520などだ。これらは、このスマートフォン時代にグローバルマーケットのどこでも十分に競争できる製品のラインアップとなっている。

Nokia Xが正式にリリースされる前、それはノキアのグローバル・ポートフォリオ中のAshaシリーズに替わるものだろうといわれていた。だがそうならず、価格帯的にAshaとローエンドのLumiaスマートフォンの間に位置されることとなった。つまり、ノキアはAndroidスマートフォンを持っているが、それは最もローエンドのWindows Phoneの下に位置しているのだ。

鶏と卵:ネットワーク効果

ノキアとそれを取り巻く問題の多くはWindows Phoneだ。まさにその性質によって、Windows Phoneはネットワーク効果の「鶏と卵」問題に悩まされている。開発者はマーケットシェアの少ないWindows Phoneのためにアプリを構築したがらず、消費者はアプリが少なすぎるのでWindows Phoneを買おうとしないのだ。

AndroidとAppleのiOSの両方は十分なマインドシェアとマーケットシェアを持っているため、どちらもノキアとマイクロソフトが直面しているこの問題とは無縁だ。

アプリ開発側のネットワーク効果を除去するため、ノキアは世界中のAndroidアプリ市場にそのAndroid携帯の扉を開いた。Yandex、中国のローカル・アプリ・ストア(現在中国で最も利用率が高いとされている)やGetJarなどは、ノキア・ユーザにあらゆる最新アプリへの即座のアクセスを提供してくれる。デバイス特有の通知を利用したりアプリ内課金を利用しない限り、ほとんどの開発者はノキア用Androidへアプリを展開するために追加作業の必要がない。

マイクロソフトの見解

ネヴァンリンナはNokia Xがどれぐらい前から開発されていたのかは明かさなかったが、マイクロソフトは買収を完了させてから、ノキアの製品ロードマップを完全に把握していると語っている。つまりある一定の条件下で、マイクロソフトはノキアがAndroidスマートフォンをリリースすることに問題がないことになる。ただし、ある程度まで。

しかし今週日曜日にバルセロナで開かれているMobile World Congressの会場で、マイクロソフトのオペレーティング・システムを担当するバイスプレジデント、ジョー・ベルフィオーレとOEMのバイスプレジデント、ニック・パーカーは、ノキアがAndroidスマートフォンを発売することついて一瞬返す言葉を詰まらせたよう(「この質問に一体どう答えればいいのだろうか?」といった具合だろうか)にも見えた。

最終的に返ってきたのはいつもの決まり文句だった。

「我々はノキアとは素晴らしい技術的な関係を持っています。もちろん独立した企業としても活動しています。彼らの行うことは、我々にとってエキサイティングなものもあれば、そうでないものもあります」とベルフィオーレは語った。

Business Insiderは、Androidを採用するというノキアの決定は「厄介」であるとマイクロソフトの情報筋が言っているとレポートしている

マイクロソフトは、最近「デバイスとサービス」の企業を目指しており、Nokia Xにより提供される「サービス」が、同社にとって最も重要なのだ。

ノキアとマイクロソフトに関する名目的な考え方は、Nokia Xをより性能の高いハイエンドWindows Phoneへの「入り口」のプロセスとするものだ。Nokia XのインターフェースはまるでWindows Phoneのタイル画面そっくりで、ホーム画面はアプリ用と「Fast Lane」と呼ばれる通知用の二部構成になっている。これはWindows Phoneを真似ることで慣れ親しんだユーザがいずれLumiaのようなハイエンドWindows Phoneに理論上アップグレードすることを促すためである。

一定期間ユーザーがSkype、OneDrive、HERE Maps、Nokia MixRadioなどのノキアとマイクロソフトのサービスに依存して、その後、ユーザがWindows Phoneの能力とハードウェア性能を十分に持ったLumiaデバイスにアップグレードするという構想だ。

果たしてうまくいくか?

マイクロソフトはNokia Xを認めている。コモディティーと化したAndroidハードウェアと、マイクロソフトのクラウドへと巧みに結び付けられたソフトウェアとのミックスによって、ノキアはそれが新興市場に入り込むことができると考えている。

これはマイクロソフトの社内ではあまり受け入れやすい考え方ではないかもしれない。同じくバルセロナのMobile World Congressでマイクロソフトは「ビジネスに開かれたWindows Phone」を発表した。これはWindows Phoneプラットフォームへのアップデートで、スマートフォン・メーカーが、Windows Phoneオペレーティング・システム上に携帯を構築するときに、自分達の望むハードウェアを基本的に自由に使用することを可能にするものだ。

つまりメーカーが、一般的なAndroidスマートフォンのハードウェアを理論上そのまま使って、代わりにWindows Phoneを搭載することが出来るようになるのだ。そのコンセプトは、メーカーが地球上のあらゆる市場に出荷することができる、安いWindows Phoneを構築することを可能にして、Windows Phoneの生態系に多様性を作成することだ。

そういった中、Nokia Xが発表された。今のところこの端末のAndroid搭載のライバル機種は恐らくMotorolaのMotoG、端末価格で200ドルを切るデバイスの中では最高のスペックと機能をもったAndroidスマートフォンだ。マイクロソフトの発表前までは、Windows Phones 8は実際Moto Gや同じようなAndroidデバイスのローエンド・ハードウェアを使用することができなかった。より多くのメーカーを取り込み、かつ低価格市場に注目するマイクロソフトの動きによって、Nokia Xの存在意義もやはり問われてしまうことだろう。

だがこれは、Nokia Xが簡単に消えてしまう運命であることを意味していない。Nokia Xは来週から出荷される実在する商品だ。だが果たして我々は後継のNokia X2をみることになるだろうか?マイクロソフトが多くのメーカーにWindows Phoneを広めていくことにこれほど努力を注いでいる中、ノキアとマイクロソフトが、どこまでAndroidに投資していけるのだろうか。それは今のところ不明だ。

今のところ、マイクロソフトはどんな手段を使っても、自社のサービスにより多くのユーザを取り込みたいことは間違いないようだ。たとえその手段がAndroidだったとしても、だ。

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