Appleのスマートウオッチはフィットネス端末である可能性が浮上
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アップルが「iWatch」を発売するという噂は随分前から流れている。だが、もし今後アップルが何らかのウェアラブル・コンピュータを発売したとしても、それは「時計」というカテゴリーに当てはまるものではないかもしれない。

最近の報道によれば、アップルは長い間その存在が噂されてきた同社のウェアラブル端末を、本格的なヘルス&フィットネス指向の製品にしようとしているようだ。6日の朝、アップルのウェブサイトには「運動生理学者(User Studies Exercise Physiologist)」を募集する求人広告が掲載された。職務内容はフィットネス・トラッキングに関するユーザー調査の設計・テスト・実行で、具体的にはカロリー消費、新陳代謝率、心血管の状態その他の主要な生理的データの計測や分析を行うようだ。この求人広告はその後削除されたようだが、9to5Macのマーク・ガーマンはしっかりとスクリーンショットを抑えていた

生理学者やセンサー技術/ヘルスケアの専門家は、おそらく先週ガーマンが報じた「Healthbook」というアプリで必要となるのだろう。Healthbookはヘルス&フィットネス系のアプリで、iOS8に合わせてリリースされると言われている。アップルのiPhone5SにはM7モーション・コプロセッサが搭載されており、フィットネス・トラッキングに必要な性能は既に備わっている。Healthbookはこうしたハードウェアを活用するようなアプリになると推測される。

さらにニューヨークタイムズ紙によれば、アップルはFDA(米国食品医薬品局)との会談を行い、モバイルの医療アプリについて意見を交わしたようだ。もしもアップルがヘルスケアに関するアプリを開発しているのであれば、この行動にも説明が付く。連邦法では、消費者の健康に関する情報の収集・保管・共有について厳しく規制しているからだ。アップルのような企業にとって、ヘルスケア分野への進出は思い付きでできるような類のことではない。

どうやらアップルは今のところスマートウオッチについて、スマートフォンの機能を集約したものだとは考えていないのかもしれない。現在出回っているスマートウオッチは大抵「コミュニケーション」と「フィットネス」の二つのカテゴリーに分類できる。PebbleやサムスンのGalaxy Gear、クアルコムのTocなどはコミュニケーション寄りだし、FitBitやナイキのFuelBandはフィットネスに分類される。報道されている内容から判断する限り、アップルは後者のフィットネスに照準を定めているようだ。

米国のヘルスケア産業は、保険や医薬品、病院や医師への支払いも含めると2兆8000億ドルを超える巨大な産業となる。テクノロジストたちは長年の間、ヘルス&フィットネス市場の円熟状態は、低コストと情報中心のアプローチによって崩壊するだろうと考えてきた。しかしこれまでに行われた数々の試みは、連邦政府による規制や既得権益に凝り固まった官僚的な現職者たちに阻まれてことごとく失敗している。この業界に変化をもたらすのは容易ではないようだ。

アップルのウェアラブル端末が果たすべき課題

全ての機能を兼ね備えたスマートウオッチを実現するだけの技術はまだ存在しない。アップルといえども、スマートフォンとフィットネス・トラッカーを両方こなせる端末の開発は無理だろう。つまり、アップルはどちらかを優先させる必要がある。

アップルはなによりもまず、同社を世界で一番利益を生み出すコンピュータ・メーカーに育て上げたソフトウェア/ハードウェアに関する設計理念を守らなければならない。アップルの様式から考えると、曲線的なディスプレイを持ったデバイスというのも有りだろう。少なくとも、データを正確に収集し、シンプルかつ直感的な機能を提供できるだけのパワーを備えた端末でなくてはならない。最低でもBluetooth、GPS、M7モーション・コプロセッサに匹敵するチップ(おそらくARM Cortext系プロセッサ)、そして加速度センサーは搭載する必要がある。

バッテリーの寿命も重要だ。そしておそらく、ワイヤレス充電も必須となるだろう。

次にアップルが考慮しなければならないのは、スマートフォンやタブレットのiOSと同等の開発プラットフォームをデベロッパーに提供することだ。アップルがフィットネス端末を発売する際には、おそらく複数のローンチパートナーのアプリもリリースされるだろう。ここにナイキが入る可能性は高い(アップルCEOのティム・クックはナイキの社外取締役を務めている)。他にもApp Storeで一番人気のあるフィットネス・トラッカー・アプリ「RunKeeper」あたりが参加するかもしれない。iOSと同等の開発プラットフォームを構築してデベロッパーを呼び込むことができれば、長年にわたって製品の魅力を維持し続けることが可能となるだろう。

最後の課題は一番やっかいだ。米国の医療システムに割り込み、アップル製のフィットネス端末を健康モニタリング機器のデファクト・スタンダードとするのである。例えば心肺機能のモニタリングを行うために医者が患者にフィットネス端末を処方し、端末が計測した全てのデータは医者のコンピューターに直接送信される。このような構想でもなければ、アップルが直接FDAと会談する必要性はないだろう。

サムスンやソニーなどの企業とは異なり、アップルはウェアラブル端末への参入を急がなかった。同社は伝統と実用を重んじ、単なる消費者向けのフィットネス・トラッカーには留まらない何かをを開発しようとしているのではないだろうか。皆さんの健康を管理する、生活の伴侶となり得るような端末を。

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