クアルコムの「Toq」スマートウォッチが見せるディスプレイの未来

クアルコムはスマートウォッチの手首争奪レースで勝利を勝ち取る会社には見えないかもしれない。というのもクアルコムは長く、ガジェット自身ではなくガジェット内部のパーツを作る会社として知られてきたからだ。例えば同社のSnapdragonコンピュータ・プロセッサーは2013年にリリースされたほとんど全ての主要スマートフォンに搭載されている。実はこれこそがクアルコムの武器であり、このスマートウォッチ「Qualcomm Toq(クアルコム トーク)」を生み出した研究開発駆動のアプローチ、注目に値するユニークなアプローチなのである。

Toqは350ドルのスマートウォッチであり、サイバーマンデー(※)にあたる12月2日に販売が開始される。通知、通話および様々なアプリケーションの実行を、多くのAndroidスマートフォンと連携して行うことが可能だ。また、Toqには常時オン状態となるディスプレイが使用されており、これには鮮明なイメージを低消費電力でスクリーンにもたらす技術が使用されている。これはスマートウォッチという、まだ初期段階のデバイス・カテゴリーおいてはかなり高度な技術のうちの1つである。

※感謝祭の次の月曜日を指し、年末セールと重なるためオンラインの店舗で売り上げが急増する日。各社はこの日に合わせて各種キャンペーンを展開する。

しかし、このスマートウォッチを使ってできることに関しては、デバイス内部の技術的な面白さに比べると少々物足りないかもしれない。

ディスプレイに利用されたMEMS技術

スマートフォンやタブレットは伝統的に、液晶(LCD)あるいは有機発光ダイオード(OLED)といったディスプレイ技術を使用してきた。これらのディスプレイは近年大きく進歩しており、以前の世代に比べて省電力で、非常にクリアで鮮明なスクリーンをデバイスにもたらしている。だがToqはこのスタンダードを利用しない。正確にはMEMS(マイクロ電気機械システム=Microeletromechanical Systems)をベースとした、Mirasolと呼ばれるクアルコム独自のディスプレイ技術を使っているのだ。このMirasolディスプレイはIMOD (Interferometric Modulation=干渉計測型変調方式ディスプレイ)と呼ばれ、より低い消費電力を実現する。

Toqでは、IMOD効果を生むためにMEMSを使用している。IMODはLCDSやOLEDSとは異なる方法で色を生成する。本質的に、MEMSはコートされた上部のガラスと反射する薄膜の底部という、2つの要素を持つディスプレイから構成されている。2つの層の間の空洞部分によって、ピクセルに適用される電荷のタイプに応じた色の生成が行われる。ここでは、反射光はLCDに比べて非常に小さな電力消費でそれ自身のイメージを生成している(LCDでは色がフィルタを通って作成されるため、色の生成のために連続的な動力源を持っていなければならない)。基本的にMEMSはピクセルの構造をしており、薄いフィルムで覆われた光学部品は画像化のために光を調整するのを助けている。

Mirasol ピクセルのコア
Mirasol ピクセルのコア

この結果がIMODディスプレイ技術である。LCDとOLEDのような他の放射型・非放射型のスクリーンが光を操作するのに比べ、こちらは光を変更(調整)して光に干渉するため、Interferometric Modulation(干渉計測型変調)と呼ばれている。

MEMSディスプレイの概念は10年間以上存在してきたが、2009年にQualcomm MEMS(チップメーカーの子会社)がIMODの利点を概説する白書をリリースしたときに現実的なものとなった。Qualcomm MEMS Technologiesは1996年にIridigm Display Corporationとしてスタートし、2004年に現在の社名に変更している。

Toqが目指すもの

クアルコムはToqが大ヒットとなり消費者に受け入れられることを望んでいるかもしれない。しかしそんなことはまず起こらないだろう。おそらくクアルコムもそれは分かっている。Toqはスマートウォッチであり、大衆のハートを捕らえるスマートウォッチというものはまだ登場していないからだ(Galaxy Gearもそこまでは至っていない)。

Toqはいわゆるプルーフ・オブ・コンセプト(実際の導入に向けた実機検証)のデバイスだ。高度なワイヤレス充電技術と最先端のBluetoothとWi-Fiを組み合わせた、IMODおよびMEMS技術を世に公開するためのデモンストレーションなのである。クアルコムは、同社がスマートフォンやタブレットあるいは今後有望なスマートウォッチにとって有益となる広範囲の技術を持っていることを、他のメーカーたちに披露したかったのだ。

クアルコムの価値命題とは、同社はモバイル・デバイスの中身を作成する会社であるということだ。Toqによって、同社はワイヤレスの充電からMEMSベースのIMODスクリーンに至るまで、その技術がどれだけ最高クラスであるかを示そうとしている。あなたが2013年中にスマートウォッチを購入しようと思っているなら、Toqは市場に出ている製品のなかで最上の選択肢の1つになるだろう。そうでなかったとしても、このデバイスは恐らく、デバイス内部の機能をよりパワフルにするというクアルコムの目的をこの先数十年間において促進する役目を果たすだろう。

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