※本記事は、エンジニアのためのWebマガジン「CodeIQ MAGAZINE」の記事をReadWrite Japanにご提供頂いたものです。

デジタルビジネスを牽引するテクノロジーとなる「モビリティ」「クラウド」「データとアナリティクス」「ソーシャル」。

第3回からはこれらの新たなテクノロジーがITビジネスをどう変えようとしているか、その現状と課題についてアバナード安間裕氏に語っていただきます。今回のテーマはクラウドについて!
by 馬場美由紀 (CodeIQ中の人)

クラウドは新しいITリソースモデル

私はIT業界に入って30年以上経ちますが、常にテクノロジーとビジネスの双方の視点でモノを考えてようとしてきました。これからの時代にはどんなテクノロジーが重要なのか、それによって人々の生活や社会はどう変わるのか、それをハッピーなものにするためにどのようなビジネスが求められているのか、ということをいつも考えてきました。

その流れでいえば、これからのデジタルビジネスを牽引するのは、「モビリティ」「クラウド」「データとアナリティクス」「ソーシャル」という4つのテクノロジーであることはほぼ間違いのないことだと思います。

それぞれのテクノロジーがITビジネスとエンジニアのスキルをどのように変えるのか、それを順番にお話ししていきたいと思います。まずは「クラウド」ですね。

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クラウド・コンピューティングの本質とは何か。ニコラス・G・カー氏が『クラウド化する世界』で指摘したように、それは蛇口をひねれば水が出てくる、スイッチを押せば電気が灯る、それと同じようにITもまた、使いたいときに使いたいだけ、簡単に得ることができる、そういう状態を可能にするものです。

みんなが使いたいと思うモノを一カ所に集め、使う分ちょっとずつ使って、使った分だけお金を払う。割り勘方式ですから、当然、一人あたりの値段は安くなります。

かつて、エジソンが電気を発明したとき、最初はすべての家庭に発電機を置こうとしたそうですが、それは無理なので発電所を作り、そこからディストリビューション方式で契約者に電気を流す方式にしたら、電気が爆発的に普及したという話があります。それとおなじことがITでも起こるわけです。

ITリソースの使われ方という視点からすれば、まさにオンデマンドでリソースを取得することができ、不要になったらそのリソースを解放することができ、そして使った分だけ支払えばいいという、新しいリソースモデルの誕生とも言えるでしょう。

基幹系システムをどうクラウドに乗せるかが技術者の腕の見せどころ

これを企業経営の視点で言い直せば、ITリソースを固定費ではなく変動費化できる、ということがきわめて重要なポイントになります。儲かっているときはガンガン使い、儲かっていないときはその使用を抑える。これはアウトソーシングをビジネスに活用する話とまったく同じことです。

かつては利益が出ているピークの時に合わせて、ITリソースをすべて設備として自前で抱えていたため、それが固定費となって経営を圧迫することがよくありました。これでは、経営をバネのような強靱な体質にすることは不可能です。

クラウドでよく言われる「ITコストの低減」ということは、実は経営的にはもっとも重要でポイントではない。「変動費化できること」がクラウドの最大の利点なのです。

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ところが、欧米と日本はクラウドの普及率がいまだに3倍近く違う。総務省のレポートによると、いわゆる情報系と言われているところのクラウド化は日米にそう差はないものの、基幹系になると日本ではほとんど使っていない。アメリカでは基幹系こそクラウド化している。一番クリティカルなデータこそ、クラウドに持っていくとも言われています。

こうした彼我の違いが生まれている。それは、私たち日本のIT業界が、顧客に対して、クラウドはコストが下がるということばかり言っていて、本質的な変動費化という価値を提案してこなかった。「基幹系だからこそ、クラウドに乗せるべきです」と言ってこなかったせいかもしれず、これは反省点ではあります。

技術者視点で言えば、「これからは基幹系システムをクラウドにどのような技術で乗せていくかということをちゃんと考える必要がある」と思います。

M2M、IoTと連動するクラウドの未来に、技術者生命を賭けるのもいい

変動費化に加え、クラウドのもつ本質的な価値がもう一つあります。オンプレミスのシステムにはとうていできないことが、クラウドだからこそできる、ということが増えているのです。

例えば、マイクロソフトのAzureは人工知能を標準装備します。もし、企業が自前のシステムの中に人工知能や機械学習の仕組みを入れようとしたら、大学の数学科の優秀な卒業生あたりを傭い、開発者や管理者としてそこに貼り付けなければならない。これは膨大なコストがかかります。

けれども、クラウドは割り勘貸しですから、どんなに高度な人工知能システムでも、割り勘で、使った分だけ支払えばよくなる。一般企業に取ってAIや機械学習がけっして遠い話ではなくなるのです。

Azureのシステムで私が見た例では、音声認識が非常によくできていました。日本語のデモは見ていませんが、似た事例で言えば、「とうしゅこうたい」という日本語の発音を認識するにあたって、もし政治の話の文脈だったら「党首交代」と認識するし、野球の話題だったら「投手交代」と認識してくれる。かつてのスパコン並みの能力をクラウドが持つようになってきているのです。

今後のクラウドは、マシン・トゥー・マシン(M2M)や、モノのインターネット(IoT)とも連動し、すべてのモノが相互に情報交換し、自動的に最適な制御を行う基盤になるでしょう。

もし、エンジニアのみなさんがこうした技術に興味があるのだったら、そこに突っ込んでいってもいいと私は思う。それぐらいクラウド・コンピューティングは、これからの技術者生命を賭ける価値がある技術だと思います。

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アバナード株式会社
代表取締役社長 安間 裕氏
団体系保険会社、外資系商社を経て、1998年にアクセンチュアに入社。その後外資系広告代理店を経て2001年に再度アクセンチュアに入社。アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズの設立に携わり、2002年8月に同社代表取締役社長に就任。2009年アクセンチュア執行役員アウトソーシング本部長、2010年執行役員ビジネスプロセス・アウトソーシング統括本部長を歴任。副社長としてフューチャーアーキテクトの経営に携わった後、2014年4月にアバナードに入社。1982年明治大学文学部文学科フランス文学専攻卒。1959年生まれ。

記事出典:CodeIQ MAGAZINE

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