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アップル、モバイル決済に旧技術を採用か?

2014.9.4 14:00 | Adriana Lee | ReadWriteJapan編集部

アップルはどうやって(また何故)NFCを利用するのか。

私はもうほとんど現金で買い物をしない。携帯アプリとクレジットカードがあれば十分だからだ。

アップルは多くの企業が見捨てた技術を使って、買い物をより効率的にしようとしていると報じられている。

WIREDの記事は、アップルが次世代iPhoneにNFCのワイアレスチップを搭載しモバイル決済機能を追加するだろうと報じている。The Financial Timesは、すでに部品を提供しているオランダのチップメーカーNXPとこの件でもアップルが手を組んだと伝えている。

もしこれが本当なら、iPhoneユーザーは店舗やバス、至る所でデバイスをタップして支払いやチェックイン、情報の送信ができるようになるだろう。

以前にもこれと似た、魅力的なコンセプトがあった。2007年のことだ。初めてNFCを売りにしたNokia 6131が販売されたのがその年だ。それ以降、LGやSamsung、Google Nexusといった他のデバイスもNFCを搭載した。しかしアップルは、NFCを採用しようとはしなかった。それがNFCの利用拡大を大きく阻害したと指摘する声は大きい。小売業者は、携帯電話が搭載する技術に関心はなかった。また消費者もカードを使って読み取らせるだけで十分なため、利用箇所が限定される最新の決済方法に関心がなかった。

問うべきは、アップルがこの技術を再び持ち出すかどうかではない。なぜ今なのかということだ。

NFCの栄枯盛衰

近距離無線通信のNFCは、キーカードや定期券、またその他のデバイスで使用されているRFIDの一種である。RFIDデバイスは、利用範囲が広がりセキュリティーの問題を抱えるようになった。一方でNFCは、物理的なタッチ方式を採用しデータ保護を強化することで、旧式からより良いものへとなった。

NFCは電源が無くても動くため、携帯電話のバッテリーが切れて昼食代をねだることもない(ほとんどのシステムは、ある一定額以上の支払いにはインターネットの接続が必須)。ハードウェアとソフトウェアを組み合わせれば、仮にデバイスがハッキングされた場合でも、携帯電話からクレジットカードの情報などの機密データを切り離すことさえできる。

NFCの機能が優れているため、アップルがiPhoneにNFCを搭載するという噂が何年も絶えなかった。しかし競合他社がAndroidやWindowsのデバイスに搭載しても、一向に実現されなかった。

消費者やイノベーターは、NFCは複雑すぎる、通信事業者によって扱いが違いすぎると敬遠した。SquareやPayPalは、NFCではなく消費者を確実に識別する別の方法を用いた。GoogleウォレットのNFC決済オプションは、リリース直後でさえほとんど利用されず、通信事業者の協力不足によってトドメをさされた格好だ。皮肉にもIsis(死者の書を連想させる)と名づけられた業界団体も、似たような問題を抱えていた。

Best Buyやセブンイレブンといった小売業者は、NFCを最初からは採用せず、バーコードスキャンのようなシンプルなモバイル決済テクノロジーに切り替えると伝えられた。結果、既存のレジと互換性があり消費者やレジ係に馴染みがあるとしてスターバックスカードやSquare、PayPalが採用された。

遅すぎる?あるいは時期相応?

しばらくアップルはNFCを静観していたが、関連特許の申請は行っている。そのうちの1つは、ごく最近、昨年の1月に発見されたものだ。

これにより、ティム・クック(アップルのCEO)と社員は、iPhone決済オプションとして、タップ・トゥー・ペイに取り組む準備ができたと言えるかもしれない。同社の最近の動向を考えると、このタイミングになった意味が伺える。同社は位置情報アプリのPassbookをリリースしている。iBeacons(店内の顧客追跡可能なBluetoothベース機能)やTouch ID(iPhone 5S搭載の指紋スキャン機能)がPassbookに感知されると、アプリが画面上にクーポンなどを表示するというものだ。

アップルはiTunesストアで使用される数百万のクレジットカードについても言及している。しかし、小売で独自のクレジットカード取引を行うことは、詐欺、紛争、支払い事故といったリスクを孕む他の小売業者の取引を行うよりもはるかに大変なことである。したがって独自のクレジットカードを作ることはないだろう。

現在、アップルは環境を整え、ユーザーの位置を感知するシステムを導入する準備ができている。それはユーザーの位置情報をもとに広告を送ることができ、購入する際にはユーザー認証もできるものだ。したがって今必要なのは、実際に取引を行う手段なのである。

NFCを使えば、iPhoneをNFC対応の端末にかざすだけで、支払い情報を送信できるようになりそうだ。

アップルはアップルストア(実店舗)でNFC決済を採用していないが、もちろんモバイルアプリを使えば、アクセサリーや他の商品を待ち時間なく直接購入できる。昔ながらの取引方法を捨て去れない、アプリ決済非対応の小売業者にとって、新しいモバイル決済の採用は、素晴らしい選択肢となりそうだ。

機を逃すな

モバイル決済が広く普及したのは疑いようがない。

だがほとんどが、「Mコマース」とよばれる、ノートパソコンの代わりに携帯電話やタブレットを使って従来のEコマースを利用する人々に限った話だ。PayPal関係者は、意図的に実店舗での決済とEコマースのデータを統合し、モバイル取引における巨額の数字を持ち出してくる。しかし実際は使用デバイスが変わったに過ぎない。

つまり実店舗での決済が終わった、というのは全くの見当違いだ。ほとんどの消費者はカード使用で十分というところだろう。PayPalやSquareは、自社のモバイルアプリではなく従来のカードの読み取りが便利だとして、それを重視した結果でもある。

携帯電話によるモバイル決済が最重要課題であり、アップルにとっては、苦手とする市場でもある。

アップルは中国への進出に関心を持っている。中国のスマートフォンユーザーはモバイル・ショッピングを頻繁に行う。中国の技術サイトのTechNodeによると、中国のモバイル決済が約1兆6千万ドルに達したことが、中国人民銀行から発表になったということだ。

確かにこの数字はオンライン購入、モバイルを使った店内決済、そして人から人へお金の流れをカバーしている。実際、目を見張るような数字ではあるが、NFCの潜在的市場とはまったく関連性はない。

他の報告では、NFC取引が中国では携帯電話による買物のごくわずかしか占めていないことを示されている。携帯電話をタッチして決済する機会そのものがあまりないからだ。アップルは市場を刺激し、販売側にはNFC導入の利点を説明することで、その状況を変えることができるだろう。

最終的には、NFCは決済以上の重要な役割を担うだろう。買物だけでなく、NFCはスマートフォンと連携する家や車、健康関連デバイスに便利な機能をもたらすだろう。そういった分野は既にアップルが取り組んでいる分野でもある。

アップルは埋もれた技術を、ホットな需要が高い製品に変えることに長けている。その専門のようなものだ。NFCを金のなる木にしようとしていることは読み取れる。詳細が明らかになるまでそう長くはかからないだろう。

トップ画像提供:Incase

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