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グーグルの直面する「Androidのオープンソース問題」とは

2014.8.19 15:00 | Matt Asay | m.ito

グーグルのオープンソース戦略の落とし穴

これほど1つのツイートが真相を物語った、あるいは某ベンダーにとって破壊的な存在となったことも珍しいかもしれない。数年前、スティーブ・ジョブズがAndroidは実際にはオープンなプラットフォームではないと批判した際、グーグルのアンディ・ルービンはそれに対して「誰もがコードを入手して変更することができ、それを“オープン(公開)”できるAndroidこそ、真の意味でのオープンだ」とツイートした。

残念ながら、多くのOEMがこのルービンの言葉を真に受けてしまったようだ。

現在、グーグルのAndroidビジネスは大盛況だ。しかしAndroid自体のフラグメンテーション(分裂)によって、アプリ開発者のエコシステムはもちろん、グーグル自体のマネタイズまでもが最小化されていることは明らかだ。最新のABI Researchのデータによれば、残念ながらこの傾向は悪化し続けているようだ。

自由の代償

Androidが実際どのくらいオープンなプラットフォームなのかを巡る懸念が広がる中、アンディ・ルービンは以下のようなツイートでそのオープンさをアピールしている:

「オープンとはこういうことだ:"mkdir android ; cd android ; repo init -u git://android.git.kernel.org/platform/manifest.git ; repo sync ; make"」

グーグルのオープンソースの責任者もルービンの主張を支持し、私にAndroidの1000万行を超えるソースコードを誰もがオープンソース・ライセンスに基づいて無償で利用できることを強調している。

たしかにグーグルはAndroidの開発プロセスをコントロールしており、特別な第三者に対して選択的にそのコードを提供している。また一方でグーグルはAndroidのオープンソースをも根本から支えている(グーグルがその他多くのオープンソース・プロジェクトを支援していることは言うまでもない)。

しかしこれはやりすぎなのかもしれない。

Androidの圧倒的なシェアとアプリ開発者の収益の関係

オープンソースであることはグーグルのAndroidオペレーティング・システムに大きく貢献している。iOSはアップル専用であり、Windowsはマイクロソフトの提示する条件のもと有料で第三者に提供されている。このようなモバイルOSとは異なり、Androidは無償で誰もが利用できる(あるいは2011年にベンチャー・キャピタリストのビル・ガーリーが指摘したように、時には惜しみない助成金まで支払われてきた)。

その成果は凄まじいものだ。当初はモバイルにおける実績が全く無かったが、今ではAndroidはデバイスの出荷台数で圧倒的に競合をリードしている:

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「プラットフォームのデバイス累積販売(Credit: Mark Hibbens, Seeking Alpha)」

だが不思議なことに、Android向けアプリ開発者にはこれがそのまま収入に直結していないのだ。

長い間iOS開発者のほうがAndroid開発者より収益性が高いとされてきた。Androidの圧倒的な出荷台数がこの状況の打開に貢献してはいるものの、Androidの分裂がアプリ開発者がAndroidから効率的に収益を得ることを邪魔しているという現実に変わりはない。

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「Androidの分裂(Source: Google / I Download Blog)」

関連記事:iOS開発者のほうが儲かっているが、Androidの普及によってその差は縮まっている

邪魔というより妨害というべきかもしれない。VisionMobileによると、実際にはAndroid開発者の64%が1アプリ当たりの月間収入が500ドルという「アプリ貧困線」以下に位置している。

これはグーグルにとってもあまりよくないことかもしれない。

Androidの圧倒的なシェアをグーグルはどうマネタイズするのか

分裂はグーグルにも打撃を与えているようだ。開発者が感じているものとは異なる方法だが、痛いものは痛い。

グーグルはAndroidの分裂化について、AndroidのOEMが最新のAndroidバージョンに準拠しそれが認証されない限り、Google Mobile Services (GMS)あるいはGoogle Appsの提供を控えるという対応をとっている。同時にグーグルはGoogle Playと直接繋がる開発者向けAPIを用意し、OEMを避けてエンドユーザが最新のAndroidエクスペリエンスを体験できるような策も講じている。

これにはエンドユーザーが公式のAndroidを実行している必要がある。しかし多くのOEMはグーグルとそのAndroidエクスペリエンスの支配には納得してはいないようだ。

「くたばれ!」と言いたいぐらいだろう。

ABI Researchが明らかにしたように、カスタマイズ版のAndroidである「AOSP(Android Open Source Project)スマートフォン」は2014年の第一四半期から第二四半期にかけて連続して20%も成長している(同時期のマーケット全体の成長率は3%)。つまり、カスタマイズ版Androidはもはや世界のスマートフォン市場の20%ものシェアを占めており、マーケット全体よりもはるかに早く成長していることになる。

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「スマートフォンOSの世界市場シェア」

この成長速度は認証版(Open Handset Alliance、またはOHA)のAndroidマーケットよりも早いことになる。公式のAndroidは現在市場の65%のシェアを記録しているが、連続成長率は13%に留まっている。

これらが小さな範囲を持った弱小メーカーによる動きであれば大した問題ではない。しかしVisionMobileのデータを見る限り、Androidが最も成長している市場はアジアで、この地域は得に独自ソフトが普及しやすい傾向がある。

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「各国のアプリ開発者のための優先プラットフォーム」

ABI Researchのアナリスト、ニック・スペンサーはこれを次のように解説している:

AOSPの成長は中国やインドの端末メーカーに促されており、ローカルな市場からアジア圏外に広く普及しつつあります。中国やインドのベンダーがスマートフォンの出荷台数で初めて市場の過半数を占めるようになり、市場の51%のシェアを記録しています。これらメーカーの大半は低価格端末を主体としていますが、中でもXiaomiやGioneeは中層を狙った端末も発売しており、得にサムスンなどの企業と競合する場面が目立っています。

つまり、世界の三大市場の内すでに二つもの市場がAOSP/カスタマイズ版Android端末を売るメーカーによって支配されていることになる。しかも彼らは国内市場をはるかに越えて海外展開を行っており、グーグルによるAndroidのマネタイズに対抗する形となっている。

インターネットからの収益化

グーグルはこれまでのようにこれら全てのカスタマイズ版Androidから利益を出すことが可能なのだろうか?恐らく可能だ。Asymcoが説明するように、中国を除き同社はインターネット利用者一人当たり毎年6.30ドルの収入を得ている。したがって理論上、このようなカスタマイズ版Androidを含むその他のインターネット端末(iOS、Windowsを含むすべて)も最終的にはグーグルにとって収益をもたらすきっかけになる。それはそれらが人とグーグルのインターネットを繋ぐからだ。

しかしながら、実際には、これはそうではない。

Asymcoは、OEMによるカスタマイズ版Androidには多くの理由(例えばグーグルによる制約やマイクロソフトへのIPライセンス料などへの抵抗)があり、「最大の理由は柔軟性」だととさらに説明している。

価格やローカリゼーションで競争を強いられるベンダーは競合製品への対応を迅速に行う必要があり、「天の声」を待ってはいられません。こういった企業にどこかの業界団体に属する余裕はあまりないのが現実です。その結果、「よりオープンな」Androidが「それほどオープンでない」Androidを脅かし始めているのです。

この「よりオープンな」Androidには多くの場合「ユニークなUIやサービス」がつきもので、検索などの中国製非グーグルアプリも含まれる。つまり、カスタマイズ版Androidは一人当たり6.30ドルをグーグルに落とさない可能性だってあるのだ。

とは言え、グーグルがもっとAndroidをコントロールし、Androidの分裂を最小化して自社の収入を最大化したい気持ちは理解できる。ただAndroidがオープンだからこそ、以前は不可能と思われていたアップルのモバイルにおける堅固な一人勝ち状態を打開できたことも事実だ。アップルが支配する世界では、グーグルの収益性は限りなく低くなることは言うまでもないだろう。

言いかえれば、「オープンすぎるAndroid」は「閉鎖的すぎるAndroid」よりははるかにましなのだ。

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