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iPodの “Less is More” に学ぶ

2016.3.1 18:11 | Less but better: Why simple always sells by Jory Mackay PickCrew編集者(原文

優れたプロダクトは機能と実用性に加えて、簡単に使えることが求められる。脳医学や心理学においても、シンプルであることが受け入れられやすいという研究結果が出ている。iPodを良き例として、本質的な問題を簡単に解決する方法を考える。

デザインにおいて、建築家のLudwig Mies van der Rohe氏の“Less is More”は有名な言葉だ。どのようなプロダクトであれ、成功の鍵はユーザーが簡単に使えるかどうかだ。人はとても気まぐれで、多くの人がそれほど複雑ではなくても示された手順を最後まで実行できない。

プロダクト開発とはつまり、複雑性と機能性の両方を簡単に使えて美しくデザインされたボックスに詰め込むという、ほぼ不可能を可能にするようなことなのだ。プロダクトデザインでは、シンプルさでせめぎ合うことになる。

シンプルはなぜ複雑なのか?

いつからそのようなことになったのだろうか?テクノロジーが進化するにつれ、重要なものは機能と外観ではなかったのだろうか?誰にとっても身近な「書く」ためのツールの進化について考えてみよう。

羽根ペンとインクから始まり、タイプライターから強力なワープロまで、進化とは機能性と複雑性を足していくことだった。しかし、我々は転換点に達した。「More」は「Better」ではなくなったのだ。機能と実用性に加えて、簡単に使えることが求められるようになった。シンプルかつ美しく。

Albert Einstein
ものごとはできるかぎりシンプルにすべきだ。しかし、シンプルすぎてもいけない。 — Albert Einstein氏

ミニマルなライティングツールであるiA WriterやUlyssesを見てみよう。ほとんど余計なものがついていない。パワフルなワープロとして必要な機能はすべてついているが、デザインによって軽やかで簡単に感じられる。

数十億稼ぐインターネット会社を作るためには、人間の欲望、それも長い間存在する欲望を見つけることが必要だ。その欲望を特定し、現代のテクノロジーで昇華させるのだ。 — Twitterの創設者Ev Williams氏

物事を簡単に、シンプルにすること。しかし、シンプルの力を我々は知っているのに、なぜ実際に作ることがこれほど難しいのか。シンプルはなぜそんなに複雑なのだろうか?

引き算のデザイン

人間は決断するのに限られたメンタルリソースをもっている。

脳の情報を維持し処理する部分であるワーキングメモリは常に5~9個の考えしか処理できないと言われている。

working-memory

気が散ったりたくさんの選択肢を与えられると、良い決断ができない。間違った選択をしてしまったり、選択することさえできなくなってしまう。脳は簡単であることに集中する。複雑になるとできるだけ早く他のことに意識が移ってしまうのだ。

2012年の8月にGoogleが研究結果を発表したように、人間はWebサイトの美しさを1/50から1/20秒で判断するという。指でスナップするよりも短い時間だ。さらに、人間は外観が複雑なwebサイトより、シンプルな方のwebサイトをより美しいと感じるという。人間には使いにくいと感じる機能の数の範囲があり、これ以上増やしてはいけないという限界値があるのだ。

featuritis-curve

ユーザーが人生で培った常識を忘れてしまうのは簡単だ。

・どこにあるべきか
・どうやって動くべきか
・どうふるまうべきか
・何と呼ばれるべきか

これらはデザインにおけるプロトタイプの要素だ。

オンラインマガジンからファッションブログまで、どのようなタイプのサイトでも、それぞれのプロトタイプ的要素が存在する。ページに飛ぶための画面上部のナビゲーションバーや、ネット販売サイトの右上の購入ボタンなどを考えてほしい。よりプロトタイプに沿ったWebサイトであれば、脳が簡単に使いやすいと判断しやすい。心理学者はこれを「認識流暢」と呼び、物事をシンプルと認識するための大部分を担う。

Webサイトやプロダクトが期待通りに使えないとき、脳はそれを複雑すぎるかデザインがひどいかのどちらかと判断してしまう。これは文章、プロダクト、音楽にも当てはまる。事実、研究によると音楽では、ほとんど全て同じ音に聞こえるものが好まれることが分かった。1955年から2011年の音楽の研究では、楽器の複雑性が少ないジャンルの音楽が上位チャートにあがり、より売れたことがわかった*。さらに調査では複雑になるにつれてチャートが下がるのに対し、よりシンプルで公式的なジャンルの音楽がより売れて人気になることも分かった。

これはmere exposure effect(見たり聞いたりするほど好きになる)、もしくはbeauty-in-averageness effect(共通の要素をもつ刺激に興味をもつ)といった心理現象による部分もあるだろう。

いずれにしても、親しみやすくシンプルに感じられるものであるほど、楽しめて購入しやすいということがはっきりした。

iPodの3クリックルール

シンプルでパワフルなものを作ることのパワーを理解していたビジョナリーがいるとしたら、それはスティーブジョブスだろう。

シンプルは複雑よりも難しい。シンプルにするためには極限まで思考をクリアにしなければいけない。しかし、それができたら山をも動かすことができる。 — Steve Jobs氏

初代iPodを作るとき、ジョブズは3クリックルールを厳密に設定した。曲や機能にたどり着くのに、3クリックで辿りつかなければいけないのだ。

3クリックルール

ユーザーがすぐに使いやすいと思えるためには、デバイスは究極的にシンプルでなければならないと分かっていたのだ。つまり、見たこともないのに、使いやすいということだ。プロトタイプに沿ったアクションだからクリックホイールがシンプルに感じられただけでなく、インターフェイスの使い方がワーキングメモリにとって全く負担にならなかったのだ。

偉大なプロダクトのように、シンプルなブロックの組み立てのように、iPodはデザインと機能の融合が果たされたのだ。

次のプロダクトを作るとき、ユーザーが持っている期待について考えて欲しい。どうやってすぐに使いやすいと感じさせられるだろうか?何を取り除くことができるだろうか?簡単に使えるためには何が邪魔しているのだろうか?

本質的な問題をシンプルに解決する方法こそが、本当のイノベーションだ。

記事提供元|L'OREM
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